いろいろ感想を書いてみるブログ

短歌と洋楽和訳メインのブログで、海外ドラマ感想もあります

現代短歌最前線

現代短歌最前線-林和清 感想4

北溟社 「現代短歌最前線 上・下」 感想の注意書きです。 yuifall.hatenablog.com 林和清④ あらかじめ選んでおいた記憶としてプールの底で涙をながした BEDofROSES(安楽な生活)そのまま死ねるならこんなに恋することもなかった 嫌だ、その冷えた指 止せ、…

現代短歌最前線-林和清 感想3

北溟社 「現代短歌最前線 上・下」 感想の注意書きです。 yuifall.hatenablog.com 林和清③ かつてなにかを愛したといふ記憶だけエヴィアンは暗い石の味する この歌は説明するというよりもすっと入り込んでくる感じです。ヨーロッパのどこかで、日陰にずっと…

現代短歌最前線-林和清 感想2

北溟社 「現代短歌最前線 上・下」 感想の注意書きです。 yuifall.hatenablog.com 林和清② 「エリーゼのために」などなにもできはしない指さすたびに椿がおちる 「よみがへる王女のためのパバーヌ」が聞こえる森の苔の祭に クラシックシリーズです。「エリー…

現代短歌最前線-林和清 感想

北溟社 「現代短歌最前線 上・下」 感想の注意書きです。 yuifall.hatenablog.com 林和清 (京都で講義「大伴家持Ⅰ」。) 虫喰みて恍たる人の食感のよみがへりくる夢のまほろば (極月某日「源氏物語」講義最終回―宇治十帖―。心のうちのすさまじきかな。) …

現代短歌最前線-千葉聡 感想4

北溟社 「現代短歌最前線 上・下」 感想の注意書きです。 yuifall.hatenablog.com 千葉聡④ 僕たちはあきらめすぎない 地下鉄は地上に出てまた地下に潜った この歌は不思議ですね。なんか地上の方が希望っぽい感じするのに、地下に潜って「あきらめすぎない」…

現代短歌最前線-千葉聡 感想3

北溟社 「現代短歌最前線 上・下」 感想の注意書きです。 yuifall.hatenablog.com 千葉聡③ 笑わない メロンの上に寝そべっただるいハムにはなりたくないんだ これは同窓会の歌シリーズの1首です。しかしこんなやな感じの雰囲気の同窓会になぜ行くんだ(笑)?…

現代短歌最前線-千葉聡 感想2

北溟社 「現代短歌最前線 上・下」 感想の注意書きです。 yuifall.hatenablog.com 千葉聡② エアコンを<一時間後に切る>にして抱き合う 漫画の続きのように 漫画家の卵のままで冷やされてゆく 選評は丁寧語ばかり この辺は漫画家を目指している「君」と小説家…

現代短歌最前線-千葉聡 感想1

北溟社 「現代短歌最前線 上・下」 感想の注意書きです。 yuifall.hatenablog.com 千葉聡 レイアップもできない僕を見てリョウは虹の所有者みたいに笑う 差し入れのジュースは友のほっぺたにひゅるりと当ててから渡すのだ 「セバスチャンと呼んであげよう」…

現代短歌最前線-谷岡亜紀 感想4

北溟社 「現代短歌最前線 上・下」 感想の注意書きです。 yuifall.hatenablog.com 谷岡亜紀④ 文明がひとつ滅びる物語しつつおまえの翅脱がせゆく この人のセクシーな感じの歌、どれもかっこいい♡「おまえ」とか言っちゃってさぁ。「文明がひとつ滅びる物語」…

現代短歌最前線-谷岡亜紀 感想3

北溟社 「現代短歌最前線 上・下」 感想の注意書きです。 yuifall.hatenablog.com 谷岡亜紀③ 女いて朱夏まばゆくて一握の銀貨をくれと言えば頷く この歌ちょっと意味が分からないのですがなんか好きです。最初は「女」っていうから売春婦的な存在を想像した…

現代短歌最前線-谷岡亜紀 感想2

北溟社 「現代短歌最前線 上・下」 感想の注意書きです。 yuifall.hatenablog.com 谷岡亜紀② 九頭の龍もつれ合う半島は満月の珠空に抱きて 広島の原爆の日を日本人(ヤップンヤン)われは罵声とともに追われつ インドから香港にやってきました。20年くらい前…

現代短歌最前線-谷岡亜紀 感想1

北溟社 「現代短歌最前線 上・下」 感想の注意書きです。 yuifall.hatenablog.com 谷岡亜紀 弓なりに地図に苦しむ列島を祖国と言いて羞しかりしか この人の歌は、歌集『アジア・バザール』に収録されている、日本とアジアを詠んだものに心惹かれます。日本か…

現代短歌最前線-辰巳泰子 感想4

北溟社 「現代短歌最前線 上・下」 感想の注意書きです。 yuifall.hatenablog.com 辰巳泰子④ 午後。唇といふうすき粘膜にてやはく他人の顔とつながる この歌はリズム感が不思議で好きだなと思いました。キスを、ちょっと不思議な言い方で表現してるの。「う…

現代短歌最前線-辰巳泰子 感想3

北溟社 「現代短歌最前線 上・下」 感想の注意書きです。 yuifall.hatenablog.com 辰巳泰子③ 一枚の木綿のシャツの畳みかたを違へるごとく愛しあひをり 交はらぬ声と声ゆゑ風いたく吹き抜けてゆくときの恍惚 多分恋ってこういうことなのかなと思いながら読み…

現代短歌最前線-辰巳泰子 感想2

北溟社 「現代短歌最前線 上・下」 感想の注意書きです。 yuifall.hatenablog.com 辰巳泰子② かのひとは君に抱かれてゐん夜か万億兆京どこまで乾く この歌も昔から好きだったなー。岡野弘彦の わがおもふをとめこよひは遠くゐて人とあひ寝るさ夜ふけにけり …

現代短歌最前線-辰巳泰子 感想1

北溟社 「現代短歌最前線 上・下」 感想の注意書きです。 yuifall.hatenablog.com 辰巳泰子 わたしのことどのくらい好き海より好き 問ふ日々もあり幼かりしか ついに下巻に来てしまいました。この本愛読してた頃、一二を争うくらい好きだったのがこの歌です…

現代短歌最前線-坂井修一 感想5

北溟社 「現代短歌最前線 上・下」 感想の注意書きです。 yuifall.hatenablog.com 坂井修一⑤ 学問について、「それが何の役に立つのか」という問いを嫌悪する一方で、特に実学に関してはやはり何かの役には立たなくてはいけない、手段でなくてはいけない、と…

現代短歌最前線-坂井修一 感想4

北溟社 「現代短歌最前線 上・下」 感想の注意書きです。 yuifall.hatenablog.com 坂井修一④ みづからを流出させてあそばする液体ヘリウムが羨(とも)しくてならぬ 半球(ヘミスフィア) 子の脳葉をほつほつと照らしそめけむ<ことば>の星は ブラックホールお…

現代短歌最前線-坂井修一 感想3

北溟社 「現代短歌最前線 上・下」 感想の注意書きです。 yuifall.hatenablog.com 坂井修一③ 科学者も科学も人をほろぼさぬ十九世紀をわが嘲笑す この読みは私にはかなり難解なんですが、最初は何で十九世紀なんだろう?って思ってたんですよ。科学が人を滅…

現代短歌最前線-坂井修一 感想2

北溟社 「現代短歌最前線 上・下」 感想の注意書きです。 yuifall.hatenablog.com 坂井修一② 山上に耶蘇ありし日を忘れざれど死すべきものを恐れやまざり この短歌を読んで、 mortal という英単語が脳裏をよぎりました。 この単語、初めて見たとき衝撃だった…

現代短歌最前線-坂井修一 感想1

北溟社 「現代短歌最前線 上・下」 感想の注意書きです。 yuifall.hatenablog.com 坂井修一 あわだちて物質主義(マテリアリズム)の淵にゐしたましひのこといかに記さむ この本(『現代短歌最前線』)はずっと前から読んでいて、でもその頃はこの人の歌とい…

現代短歌最前線-小島ゆかり 感想5

北溟社 「現代短歌最前線 上・下」 感想の注意書きです。 yuifall.hatenablog.com 小島ゆかり⑤ この人は末尾のコーナーで随筆という形で自分について語るのではなく、寺山修司論を書いているのですが、それがとても面白かったです。面白いというか、興味深い…

現代短歌最前線-小島ゆかり 感想4

北溟社 「現代短歌最前線 上・下」 感想の注意書きです。 yuifall.hatenablog.com 小島ゆかり④ 二重瞼にあくがれわれを責めやまぬ娘らよ眼は見るためにある そして娘がもうちょっと大人になるとこうなると(笑)。顔写真載ってるんですけど綺麗な方ですけどね…

現代短歌最前線-小島ゆかり 感想3

北溟社 「現代短歌最前線 上・下」 感想の注意書きです。 yuifall.hatenablog.com 小島ゆかり③ 虻一つつとひるがほの花に入り出て来るまでを耳こそばゆし この人のこういう情景描写の歌に心惹かれます。自分の耳に虻が出入りしているみたいなこそばゆさを感…

現代短歌最前線-小島ゆかり 感想2

北溟社 「現代短歌最前線 上・下」 感想の注意書きです。 yuifall.hatenablog.com 小島ゆかり② われながら女の情の恐ろしく夜のうなじに木枯らしを巻く これとか、どうですか、もう。この人の歌も語彙力奪う系ですね…。すごいしか言うことないですね…。同じ…

現代短歌最前線-小島ゆかり 感想1

北溟社 「現代短歌最前線 上・下」 感想の注意書きです。 yuifall.hatenablog.com 小島ゆかり 渡らねば明日へは行けぬ暗緑のこの河深きかなしみの河 今回『現代短歌最前線』を読み返してみて、昔はよさが分からなかったけど今読むとすごいなって思ったのがこ…

現代短歌最前線-川野里子 感想4

北溟社 「現代短歌最前線 上・下」 感想の注意書きです。 yuifall.hatenablog.com 川野里子④ 夜の町に三人の影を重ねゆくわれよりわれらの寂しきことある 家族の歌の中には、こんな寂しい歌もあります。この「三人」は自分と夫と子供なのかなと思いながら読…

現代短歌最前線-川野里子 感想3

北溟社 「現代短歌最前線 上・下」 感想の注意書きです。 yuifall.hatenablog.com 川野里子③ 背のびしてセロリ見てゐる幼子の発芽のやうなひたむきに逢ふ おもしろき男なりけり妻と仕事といづれと問ふに苦しみをりぬ 他に記憶に残ったのは家族を歌う歌です。…

現代短歌最前線-川野里子 感想2

北溟社 「現代短歌最前線 上・下」 感想の注意書きです。 yuifall.hatenablog.com 川野里子② 哀しみと愛しみはひとつ 遠く夜の古木ま白き桜花を噴きぬ わたくしは太古てぶらで生きてゐたはなみづき力あふれて咲きぬ 異国にいるからこそ焦がれる日本があるん…

現代短歌最前線-川野里子 感想1

北溟社 「現代短歌最前線 上・下」 感想の注意書きです。 yuifall.hatenablog.com 川野里子 ものおもふひとひらの湖をたたへたる蔵王は千年なにもせぬなり この人は山形県、カルフォルニア州などを移り住んだようで、それぞれの土地を詠んだ歌が心に残りまし…