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現代短歌最前線-坂井修一 感想2

北溟社 「現代短歌最前線 上・下」 感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

坂井修一②

 

山上に耶蘇ありし日を忘れざれど死すべきものを恐れやまざり

 

 この短歌を読んで、 mortal という英単語が脳裏をよぎりました。

 この単語、初めて見たとき衝撃だったんですよね。「死すべき運命の」とか「致死の」という意味の単語なのですが、同時に「人間の」という意味もあります。例えばWeblio英和を引くと、 Mortals can't create a perfect society. で「人間は完璧な社会など作れない」という例文が出てきます。「死ぬ運命」=「人間」なんだ、そんな単語があるんだ、っていうのすごく驚いて、なのでこの歌の「死すべきもの」っていうのは「人間」ってことなのかな、って勝手に思っています。

 

命ふかき鶏卵をわれは打ちて捨つ無言なるものなべて許さず

 

 これも命に関する一首です。鶏卵って無言なのかしら。そしてなぜ許さないのか?生きたかったら自己主張しろ!ってこと?読みがちょっと難しいなぁ。自分でもどうしてこの歌が目に留まったのか分からないというか説明できないのですが、なんかぐっときました。こういう感想ってどうなんだ(笑)。誰かに解釈を教えてほしい深層心理かも。

 坂原八津の

 

いのちとはいえないたまご朝毎にいのちのように割られて落ちる

 

を思い出しました。鶏卵は「命ふかき」なのか「いのちとはいえない」のか?有精卵か無精卵かみたいな問題もありますけど、これは個人の感じ方の問題な気もします。

 

 そういえばシカゴの博物館かどこかで孵化直前の卵がたくさん展示してあってそこからひよこが産まれる様子を観察できるコーナーがあったような。。残念ながら孵化する瞬間は見られなかったのですが、ひよこはかわいかったです(笑)。

 そういうの見てると、いのちはどこからいのちなんだろう、って思いますよね。核酸を持たないプリオン蛋白は生物か?とか。そういえば森博嗣のなんかの小説で「おきあがりこぼしは生物か?」みたいな命題あった気がするなー。さっきから曖昧なことばっかり書いてて申し訳ない。

 

神託をまげゆくはひとのつねなれどことばは明日の血をさそふかな

 

 これはすごいAIを連想しました。なんというか、ちょっとSFの世界なんですけど、「タイムマシンで過去に戻って過去を変えることはできるのか」的なさ。それがAIの未来予測で、このままいくと未来はこうなる→だから今こう変える、みたいなことが現実に可能になってきていて、そうするとまたシミュレーション上の未来が変わるから→それなら今はこうする、みたいな無限フィードバックがかかって…っていう連想です。それ、「神託をまげて明日の血をさそふ」ってことにならないかな。

 でも「明日の血をさそふ」のは「ことば」なんですよね。いや、でも私は(現時点での)AIってやっぱり開発者(ひと)のバイアス、「ことば」を増幅すると思ってる。そして「明日の血をさそふ」んだって。

 

 

息ひとつ吐けばその分死は近し風鈴の舌まわるくるくる (yuifal)

 

 

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