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現代短歌最前線-川野里子 感想1

北溟社 「現代短歌最前線 上・下」 感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

川野里子

 

ものおもふひとひらの湖をたたへたる蔵王は千年なにもせぬなり

 

 この人は山形県カルフォルニア州などを移り住んだようで、それぞれの土地を詠んだ歌が心に残りました。

 蔵王の湖は、「お釜」だよね。私も見に行ったことあります。エメラルドグリーンの湖だったな。「蔵王は千年なにもせぬなり」って、この言葉の選び方すごいな、ああ、本当だな、って圧倒されました。なんというか、この言葉から放たれる、「千年なにもしない」のにそこにある自然の圧倒的なイメージに打ちのめされるような気がしました。多分そこにある時間は「千年」を超えるんだと思うんですけど、「人の歴史の営みを超えて」というイメージが「千年」に詰まっているように感じられます。

 

北国の人の心の柔順を怒れども怒れどもふかき真綿のごとし

 

 大分出身の方のようで、九州出身の女性には東北の人は手ごたえがなく感じたのかな。どうしてこんなに自己主張せず唯々諾々なの、って。そしてそれを言ってもまた曖昧に流される感じだったのかも。この「怒れども」の主語はこの人本人なのかなぁ。どうして「北国の人の心の柔順」に対して怒ったんだろうか。

 なんとなくですけど、「北国」という単語から、「ふかき真綿」は雪のようなものとしてイメージされました。「真綿」の温かいイメージに反して、もしかしたら柔らかくても冷たいのかもしれない、と。だから「柔順」であってもその心には入れないように感じられたのかもしれません。

 

国境のフェンスの抜け穴越しに見え迫りきて赤きメキシコの土

 

 アメリカについても、末尾のエッセイに、移民としての暮らし、他の移民の方との交流が綴られていて、そこに暮らしている「異国人」としてのリアルが迫ってきます。国境って常に苦しいリアルがありますよね…。韓国と北朝鮮といい、インドとパキスタンといい、シンガポールとマレーシアといい…。

 

 

夏とそれ以外を隔てし国境よ壁で区切らば蝶も死ぬと言ふ (yuifall)

ウィーンの匂ひ立たせる首筋よすみれの花をきみは食みしか (yuifall)

 

 

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