北溟社 「現代短歌最前線 上・下」 感想の注意書きです。
渡らねば明日へは行けぬ暗緑のこの河深きかなしみの河
今回『現代短歌最前線』を読み返してみて、昔はよさが分からなかったけど今読むとすごいなって思ったのがこの人の作品です。『短歌タイムカプセル』の時もすごいなって思ったのですが、やっぱり200首読むと迫力ある!末尾の「寺山修司論」も骨太な文章で、すごいかっこいいです!さっきからすごいしか言ってねえ!
この歌は解説に「青春の決意を述べた歌」とあり、かなしみの河を超えて明日へ行くんだな、と思いました。前回の川野里子の感想でも「悲しみ」に触れましたが、やっぱり究極的には自分自身で「深きかなしみの河」を渡って行くしかないんだと思います。
ゆふぞらにみづおとありしそののちの永きしづけさ ゆふがほ咲く(ひらく)
この歌、俳句っぽいですね。なんか。「みづおと」「しづけさ」からの連想かな。解説には「世紀末修辞短歌の最後を担った歌人」と書かれており、特に「比喩表現」の豊かさに言及されています。
いつもからだのどこか濡れゐる梅雨の日々 締めても締めても蛇口がゆるむ
この歌なんて読んだ瞬間衝撃を受けたよ。「締めても締めても蛇口がゆるむ」んですよ。この表現…。なんだか恐ろしくさえ感じますね…。この人の歌をスルーしていたかつての自分が信じられん…。やっぱり大人になると感性も変わるもんだなと思いました。でも若い頃から鋭い感性を持ってる人もいるし、逆に大人になって昔は感じられていた痛みが感じられなくなったりとかもあるし、それぞれの人の人生のステージで感じ入る歌が違っていてもいいのかなって思うことにします(笑)。
さあ石を積んで見給へ 烏羽のまなこに濡れてゐる曼珠沙華 (yuifall)
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