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現代短歌最前線-辰巳康子 感想2

北溟社 「現代短歌最前線 上・下」 感想の注意書きです。

 

yuifall.hatenablog.com

辰巳康子②

 

かのひとは君に抱かれてゐん夜か万億兆京どこまで乾く

 

 この歌も昔から好きだったなー。岡野弘彦

 

わがおもふをとめこよひは遠くゐて人とあひ寝るさ夜ふけにけり

 

耐へがたくまなこ閉づれば白百合の白くづれゆくさまぞ眼にみゆ

 

と一緒に愛唱してました。「かのひとは君に抱かれてゐん夜か」まではわりと誰でも抱く感情かもしれないけど、その後の「万億兆京どこまで乾く」は絶対出てこない表現だよな、と、初めて読んだとき圧倒されたのを覚えています。

 ただ、よく考えると自分は「かのひとは君に抱かれてゐん夜か」って思ったこと、リアルには一度もないな。そういう生々しい片思いの経験ってないですね。だからこそこういう歌に憧れたんだろうな。

 

死して見せるほどの愛持たざるに夜の更けをナイフやテーブルといつしよに在る

 

 これもすごい。この人の歌、女の情念がすごいんですけど、それでも「死して見せるほどの愛持たざる」っていうバランスの取り方が絶妙なんですよね…。ここで阿部定系だとやっぱ感情移入しづらいもん…。テーブルにナイフがあるんだけど、殺したり死んだりはしないの。

 

かなしみのねばつく夜更けいつもいつも百鬼夜行に明け近く遭ふ

 

 これも夜更けシリーズです。確かにこの人、夜更けに百鬼夜行に逢ってそうだよね…。なんか、林あまりとちょっと通じるところがあるような感じするな…。「死にはしない、狂いもしない」っていう一定の冷静さがあるんだけど、どこか「夜桜お七」的な女の濃い情念が張り付いてる感じ。「かなしみのねばつく夜更け」って表現すごいわ…。

 

 

かのひとは君に抱かれてゐん夜かあなたはあおいそらのことばかり (yuifall)

寂寞を貪る夜更けがららんと凍れる無数の心臓落つる (yuifall)