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「短歌と俳句の五十番勝負」感想42.安普請

「短歌と俳句の五十番勝負」 感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

鎌風の抜け道のある安普請 (堀本裕樹)

 

 「安普請」という言葉から私がとっさに連想したのは「若さ」というか、もっと平たく言えば「貧乏学生」でした。穂村弘はそういう感じのテーマで歌を詠んでいて、エッセイに当時の2歳上の恋人について書いているのですが、

 

壜入りのマヨネーズ、グリーンアスパラ、ネクタイの結び方など、初めてのものやことをいろいろ教えられた。

 

という一文が一番ひっかかりました。

「グリーンアスパラ」??「ホワイトアスパラ」だったら分かるけど、「初めてのものを教えられた」という文脈で「グリーンアスパラ」は初めて目にしたような気がします。

 

 一方、堀本裕樹の俳句の方は、「若さ」とか「学生」「恋人」みたいなシチュエーションとは無関係で、全然自分の中にない発想だったので面白かったです。「鎌風」は冬の季語で、「かまいたち」のことだそうです。「風の抜け道」ではなくて「鎌風の抜け道」なのだから、その道の上にいたら切られたりしちゃうんですね。

 エッセイでは実際は「鎌風」ではなくて「蟻の行列」に苦しめられたエピソードが紹介されているのですが、「鎌風」という季語で異化することによって「妖怪の通り道」みたいな感じが出て、短い言葉でここまでイメージを作るのが俳句のすごさだなって思いました。辰巳泰子

 

かなしみのねばつく夜更けいつもいつも百鬼夜行に明け近く遭ふ

 

を連想しました。この歌で詠まれている家はもしかしたら安普請で、「百鬼夜行」の抜け道があったのかもしれない、って、今まで考えたことのない読み方が思い浮かびました。

 

 ところで「安普請」というお題を出したのは壇蜜だそうです。それだけでなんか意味深に感じますね。せっかくなので壇蜜さんリスペクトでちょっとセクシーな歌を目指してみましたが、まあ、結局「若さ」「恋人」みたいになっちゃいましたね…。

 

 

テラリウムに宇宙を詰めて飼うように呼吸を奪い合う安普請 (yuifall)