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「短歌と俳句の五十番勝負」感想23.塗る

「短歌と俳句の五十番勝負」 感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

夕焼に塗り込められてゆくこころ (堀本裕樹)

 

 これは堀口大學の詩「夕ぐれの時はよい時」のオマージュのようです。

 堀本裕樹の俳句に添えられたエッセイを読んでいると非常に多くの文学作品が登場するし、あとこの人の作品もですけど俳句を読んでいると普段全く目にも耳にもしないような日本語がばんばん出てきて、俳人は本当に文学に詳しいんだなあ、と思います。やっぱり十七音という研ぎ澄まされた短さなので、短い言葉でばしっと決めるための語彙を増やす必要があるんでしょうね。この本だけでも、「新涼」「いとど」「料峭」「青き踏む」「秋扇」「角落つ」「亀鳴く」「客塵」「瓜番」「鎌風」「青時雨」など、普段触れることのない日本語を目にすることができてお得でした。俳句、いいですね。

 

 エッセイでは、高校の時に隠れて詩集を読んでいたエピソードが書かれています。確かに、高校生(特に男の子)が詩集を読む、というのはなかなか表ざたにはしづらいことなのかも。私も物心ついた頃には詩歌が好きだったし、実はそういう人は少なくないんだろうと思うのですが、今、どうなんでしょうね。SNSとかで繋がったりできちゃうのかな。ただ、詩とか短歌は、誰かの解釈を読んで意味を理解するのも楽しいけど、意味も分からず一人でじっくり味わうのもいいなって思いますけど。

 

 堀本裕樹にとってはその詩は堀口大學の「夕ぐれの時はよい時」で、私が何度も何度も繰り返し味わって読んだ詩は中原中也の<盲目の秋 Ⅰ>です。他にもたくさん好きな詩歌があり、今でも新しくたくさんの作品を好きになりますが、十代の頃に美しい言葉に触れる経験が少しでもあってよかったと今でも思っています。

 

 

耳に塗る安息香酸デナトニウム 言葉だけでも伝わる、たぶん (yuifall)