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「短歌と俳句の五十番勝負」感想8.かわいい

「短歌と俳句の五十番勝負」 感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

山雀のかわいい舌よ春の宵 (堀本裕樹)

 

 この句の「かわいい」の身も蓋もなさが好きです。俳句に普段「かわいい」って言葉使うかなあ。すごい日常語だし普段多用するにも関わらず、詩や小説の地の文で出てきたら「かわいい」って何だよ、って思ってしまう言葉な気がする。概念が広すぎるからだろうか、主観的すぎるからだろうか。

 ちなみに「俳句 かわいい」でググると、アストラゼネカの『肺がんとともに生きる』というサイト内の初心者向けの俳句コーナーがヒットし、

www.haigan-tomoni.jp

 ここでは「かわいい」「きれい」などの主観的な言葉は使わないのがポイント、と書かれています。ですよねー。題を選んだのは装丁家の方で、敢えて詩歌に使いにくい主観的な言葉を選んだのだろうか、と考えました。

 

 この句は過去に実際に飼っていた山雀について詠んだものだそうで、エピソードを読むとたしかに「かわいい」鳥だったんだろうなあ、ってしみじみしました。でもこの句に関しては、添えられたエピソードなしでも、普通俳句に用いない「かわいい」という言葉のチョイスでこの鳥が作者にとってどういう存在だったのかが伝わるような気がします。

 

 穂村弘の短歌の方は「かわいい」という言葉を台詞内で用いることによってそこらへんの違和感をおぼえさせない作り方をしており、そこもうまいなーと思いました。

 

 

これからは消費する側 これまでは踏みにじられてきたかわいいを (yuifall)