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「短歌と俳句の五十番勝負」感想14.ゆとり

「短歌と俳句の五十番勝負」 感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

秋扇のゆとりや時に海指して (堀本裕樹)

 

 「ゆとり」のお題は朝井リョウです。そういえば『何者』積読になってたのを思い出しました。絶対心が傷つく系小説だな、と思って読むタイミングを見計らっていますが、もうとっくにその年代じゃないしそんなセンシティブになることもないのかな…。確かに朝井リョウの作品には「ゆとり世代」のイメージがあり、裏切らないお題ですね。

 穂村弘はまさに「ゆとり世代」という言葉を使ってますが、堀本裕樹は基本的にお題の直球のイメージは避けてくる印象です。日本語としての正統派という感じ。エッセイでは、映画「グラン・ブルー」の主人公のモデルとなったジャック・マイヨールをイメージした作品であると示唆していますが、特にそのようなエピソードを知らなくても成立する句です。

 

「秋扇」だから当然「秋」ですが、近年の日本は十月ころまで日中はそれなりに暑いので、扇であおぐ光景に違和感がありませんね。「秋扇」という季語から連想される光景とは違うのかもしれませんが…。

 そんな秋に海沿いにいて、雰囲気としては暮らしているというよりもバカンスです。エッセイでは「別荘」とありますが、例えば温泉地とかでもよさそうです。とにかく、生活から離れてくつろぎに来ている場所。そこでゆったりとした時間を過ごしつつ、時に扇が海を指すような。

 

 エッセイの最後に

 

二〇〇一年十二月二十二日、イタリアのエルバ島の自宅でジャック・マイヨールは自殺した。遺骨はトスカーナ湾に散骨され、イルカの泳ぐ海へと還っていったのだった。

 

とあり、なんだか心がしいんとしてしまいました。

 

 

プログラミング英語道徳性教育週五のゆとりで詰め込みませう (yuifall)