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「短歌と俳句の五十番勝負」感想31.部長

「短歌と俳句の五十番勝負」 感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

胡瓜など蒔きしと部長話し出す (堀本裕樹)

 

 「部長」という言葉で提出された作品が、堀本裕樹と穂村弘で全然違っていて面白かったです。堀本裕樹の俳句の方は牧歌的な感じで、穂村弘の短歌の部長はちょっとヤバい人です。この違い、二人の発想の違いもあるのかもしれませんが、やっぱり「季語」縛りもあるのかな、って感じました。題の「部長」を入れて、季語を落さず十七字で、ってなると、ヤバい人よりは風流な人になるのかなあ、と。

 

 エッセイでは本人の正社員時代のエピソードが語られますが、この「部長」は実在の人ではないようです。

 

 この句は、種を蒔いて胡瓜を育てる家庭菜園好きの部長なんかいたら、きっといい上司だろうなと思いつつできた。

 

と書いてあります。ちなみに私、お野菜をみんなに配ってくれる部長の下で働いたことが実際にありますが、本当にいい上司でしたのでこの句には非常に共感したし好感が持てました。

 一方で穂村弘も自分の正社員時代のエピソードを書いていますが、このヤバい部長は隣の部署の実在の人だと書いています。しかし、穂村弘のエッセイ、どこまで真実なのかは分かりませんね…。それも含めて面白いんですけど。

 

 この題は長嶋有という作家が出しています。名前見たことあるなーと思ってググったら、『猛スピードで母は』の人でした。本読んだことないのですが…。ちなみに俳人でもあるそうで、2020年の笹井宏之賞の選考委員もつとめたとか。笹井宏之賞、確かに毎年選考委員の中に歌人じゃない人入ってるような…?って思ってました。面白い試みですよね。

 

 

頷いた部長の素顔を知らぬまま3年間の礼を告げたり (yuifall)