「短歌と俳句の五十番勝負」 感想の注意書きです。
初音てふ贈り物かな誕生日 (堀本裕樹)
短歌と俳句を両方作る人にはどんな景色が見えているのかな、って考えるのはこういう句に出会った時です。私は「誕生日」という題で特定の誕生日のことは全然考えなかったし、穂村弘の歌もあまり特定の人の誕生日、特定の日にち、という感じはしません。ですが、俳句はやはり季節との繋がりが濃厚だからか、誕生日が「いつであるか」を強く意識させられる気がします。
エッセイにはこうあります。
人に誕生日を訊かれたとき、八月十二日ですと答えると、「夏生まれですね」と返ってくることが多い。
たしかにまだ暑い盛りであり、蝉の声もしきりである。しかし俳句をはじめて二十四節気に敏感になると、八月十二日はすでに立秋を数日過ぎていることに気づかされる。
さらにその日が中上健次の命日であることにも触れ、
秋蝉の尿きらきらと健次の忌
という句にまつわる
中上健次のご息女である紀さんがこの句に眼を留めてくださったとき、「父は、秋に亡くなったんですね……」とひと言漏らされたのがとても印象的だった。紀さんも感覚的に夏に亡くなったという思いがあったのだろう。
というエピソードを紹介しています。句とはあまり関連のないエピソードなのですが、心に残りました。ちなみに2022年の立秋は8月7日でした。
(*『短歌と俳句の五十番勝負』の記事は2022年に書いたやつでした)
この句の「誕生日」は本人の誕生日ではなさそうです。「初音」は春にウグイスが初めて鳴くことで、春の季語です。特定の誰かの誕生日というよりも、「春が始まる」という喜びを表した句なのかもしれません。
アニメキャラにもあるってさ誕生日血液型と性的指向 (yuifall)