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「短歌と俳句の五十番勝負」感想12.謀叛

「短歌と俳句の五十番勝負」 感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

炎天の校区飛び出す謀叛かな (堀本裕樹)

 

 「謀叛」は北村薫のお題です。穂村弘の短歌も面白かったのですが、この句が好きだったので。句だけでも意味はよく分かりますが、エピソードも好きでした。

 

 小学校の頃、校外区なるものがあった。和歌山の田舎の学校に通っていた僕らには、校外区には子どもだけで行ってはいけないという厳しい御触れが先生から出ていたのだ。

(中略)

 昼間の炎天の力は衰え、遠くの入道雲が夕日に輝いていた。まるで入道雲を目指すように自転車を全力で漕いだ。小さな謀叛を達成した満足感が僕らを心地よく充たしていた。

 今では先生の注意もとっくに時効となり、校区も県境も遥かに飛び越して東京で暮らしている。

 思えば遠くへ来たもんだ、なあ。

 

 これ読んで、岡本かの子

 

ゆるされてやや寂しきはしのび逢ふ深きあはれを失ひしこと

 

を思い出してしまいました。自由になったからこそ失ったものもあるんですよね。規則があるからこそそれを破る快感もあるわけです。「校区外へ行く」、という「謀叛」もかわいらしいし、少年のドキドキ感が詰まっていて、「炎天」も「夏の冒険」って感じでとてもよかったです。

 

 私も子供の頃「校区外」へ行ったなあ、って思い出した。本屋さんも併設した大きい文房具屋さんに女の子たち何人かで行きました。男の子もいたかなあ。何を買ったか(買わなかったか)覚えてないけど、立ち読みした漫画とかかっていた音楽のこと今も覚えてます。

 

 多分、今、もっと色々厳しいんじゃないかなあ。駄菓子屋さんとかもなくなって、小学生の買い食いみたいなのもあんまり見ないし、校区外へ子どもだけで行くと問題視されるっていうのは今の方が厳しいようなイメージがあります。もちろん都会で電車通学とかだと「校外区」どころではないでしょうが、なんにせよ子供が子供だけで行って楽しい場所がどんどん少なくなっているような気がする。

 ちょっとした「謀叛」もなくて大人になるなんてつまんないよなあ、って思ってしまうのは、ゆるかった時代の回顧主義なのかな。まあ、当然、安全が最優先なので、「謀叛」OK!とは言えないですけど…。

 

 

鼻水と涙とくしゃみが止まらない白血球の謀叛でしょうか (yuifall)