「短歌と俳句の五十番勝負」 感想の注意書きです。
文字に唾垂らしてこするなんとなくこれでも消えるような気がして (穂村弘)
これは歌そのものは「男子やりそう笑」みたいな感じなんですけど、解説が面白かったです。書き間違えたノートの文字をきちんと消しゴムで消さずに唾を垂らして擦ったために紙がぼろぼろになってしまい、それを分かっているのに何度も同じことをしてしまう、と書いた上で、
行為自体よりも、その背後にある曖昧な希望的観測にどうしようもなさを感じる。心から思い知るということができない。そういう人間の人生には、ぼろぼろの滲んだ跡が点々と残ってゆくことになる。
と続けています。
文字に唾を垂らしてこすっただけでここまで人生を考察してしまうのか。穂村弘はエッセイストとして抜群に面白いですよね。ですがこの短歌ではこの絶望感までは読み取ることはできませんね…。歌としてうまくいっているのかそうでないのかはよく分かりません。
でも、誰でも多分「あれ、今思うと意味分かんないけどなんでやったんだろう」みたいなことはあるはずで、「文字に唾垂らしてこする」レベルのしょうもないことをピックアップしてこられること自体が非凡なのかなあって気もしてます。
苦かった唾、キャメルだと思ってた、エスゾピクロンなんかじゃなくて (yuifall)