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「一首鑑賞」-151

「一首鑑賞」の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

151.僕たちのドレッシングは決まってた窓の向こうに夏の陸橋

 (穂村弘

 

砂子屋書房「一首鑑賞」で永井祐が取り上げていました。

sunagoya.com

 これは歌を読んだ時に、なんとなく穂村弘の歌だろうと感じて、当たっていたのでちょっと嬉しかったです。もちろん穂村弘っぽい歌っていっぱいあるからまぐれというかたまたま本人だったというだけかもしれませんが。

 ただ、おそらく自分の中にはうっすらとした根拠があって、穂村弘のエッセイの中にファミレスのシーンがあったような気がするんですよね。。もうタイトルもどのエッセイ集だったかも思い出せないしググってもそれっぽい記事にヒットしないので困ってしまうのですが、時々思い出すんです。デニーズか何かのことを、おじいちゃんになった主人公が「昔こんなに素晴らしい場所があって」ってまるで桃源郷みたいに話すエッセイ。詩だったかな。多分そのイメージが、「ドレッシング」「陸橋」に重なってます。

 

 自分の中ではこの歌でかなり具体的に思い浮かぶ光景があって、でもそれはある特定の場所ではなく、複数の記憶のミックスです。ドレッシングも決まってなかったし窓から陸橋なんて見えなかったし主に夜の記憶なんですが、なぜかまざまざと想起させられる。短歌ってすごいなと思いました。穂村弘の短歌がすごいのかな。

 

 永井祐は、鑑賞文に「ファミレスではないだろう」と書いています。

 

「ドレッシング」はいろいろ喚起する気がします。

オリジナルのがあったり、手作りドレッシング数種類から選べるお店を想像する。

個人経営のそんなに大きくないところか・・、少なくともファミレスっぽい雰囲気はない。

けっこうベタに赤いチェックのテーブルクロスとかかかってる。

言わないけど縁語的にサラダの色合いも浮かんでくる。

 

 これはほんとに分かるの。散々ファミレスがどうって書いといて何ですが、ファミレスじゃないんだろうなとも思う。いつも同じ店の同じ席に座って同じドレッシングのサラダを食べる「僕たち」。なじみの2人って感じ。このままずっと…ってなんとなく思っている男性と、いつまでも大人にならない恋人に焦れていく女性の姿すら思い浮かぶようです。「決まってた」って過去形が、「終わった恋」を連想させるんだと思う。陸橋に登って、疑いもなく同じ行き先をなぞっていたけど、実は道は枝分かれしていることに気付いた、とか、そんな感じです。これは永井祐の読み方とは全然違うんですが、色んな読み方ができる歌が好きです。

 

 

きみなんか言うほど好きじゃなかったよ フルーツタルトも好きじゃなかった (yuifall)

 

 

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