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「短歌と俳句の五十番勝負」感想9.挿入

「短歌と俳句の五十番勝負」 感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

ちくわの穴にチーズ挿入したものを教卓に置き みんなで待った (穂村弘

 

 この歌のエピソードはマジでしょうもないんですが、要は「小学生の時、給食に出てきたチーズを同じく給食に出てきたちくわに挿入して教卓に置いておいた子がいて、それを見た若い女の担任の先生が泣きながら帰ってしまった」という内容です。エッセイの最後に、

 

その「チーズ入りちくわ」が、大人になったらおつまみとして普通に出てくるから、あれっ、と思った。それどころか、胡瓜、カニカマ、ソーセージなども挿入されている。ぜんぜん誰も泣いたりしない。

 

と書かれていて、正直何と思えばいいか分からなかったよ…。

 

 そりゃあおつまみとして出てくるチーズ入りちくわを見て泣く人はいないでしょうが、小学生が給食に出てきたチーズをわざわざちくわに挿入してまで教卓に置いておいてその反応をうかがわれたら、人によってはショックだろうなぁと。これ、中学生だったら先生も泣いて帰ったりしなかったと思うんですよね。「バッカだなあ」で済む話だし。首謀者に片付けさせて教卓を拭けば終わりでしょう。高校生だったら幼稚すぎて相手にもしたくないですけど。小学生だったからショックだったんでしょうね。

 しかし、短歌ではそういう背景が読み取れないので、この歌からだと悪戯をしたのがどのくらいの年代の子なのか、先生がどういう反応をしたのかは想像に委ねられることになります。

 うーん、これ、短歌だけで読んだらどういう感想になるのかなあ。この本の口コミ読んでると「自作の解説など野暮きわまりない」という意見もあって、確かにこの歌に関しては背景を説明されない方が想像が広がっていいのかもしれないと思いました。基本的には添えられたエピソードやエッセイ、面白いなって思うんですけどね。

 

 ちなみにこの題の提供は写真家の荒木経惟で「いかにも」なお題なのですが、堀本裕樹の俳句の方は性的イメージゼロの爽やかな句に仕上がっております。こちらを引用しようか迷ったのですが、「自作解説はありかなしか」ということを考えたので短歌を引用しました。

 それにしても「挿入」って題出されるとそういう「挿入」からはなるべく遠ざかりたいと思うのが心情ですが、穂村弘はある意味真っ向勝負ですね。

 

 

女神なんかなれないけれど挿入はできるわ、ここにそのsequence(配列)を (yuifall)