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「短歌と俳句の五十番勝負」感想 1.椅子

「短歌と俳句の五十番勝負」 感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

新涼ややさしく触れぬ椅子の脚 (堀本裕樹)

 

 最初のお題を出したのが穂村弘だったので、俳句から引用することにしました。この本の煽り文句に「異化した短歌と古風な俳句」とあるように、作風が違いすぎて「短歌と俳句の勝負」って言われてもピンと来ないのですが、確かに俳句はどれもきっちりとまとめ上げられた端正な雰囲気です。

 とはいえ、じっくり読んでみると「椅子の脚」なの?って軽い違和感があります。椅子の脚、触りますかね?本人による解説では、

 

 穂村さんから「椅子」の兼題をいただいたその日の真夜中、「椅子の脚」という言葉が急に閃いて頭から離れなくなった。

(中略)

 こんな流れのときは僕の場合、固執しすぎて失敗するか、不思議な集中力が働いて上手くいくかのどちらかである。それで、数時間集中して何句か作ったなかから残したのが、この一句なのだが果たしてどうだろう。

 

とありました。上手いかどうかっていうのはちょっと私には判断できませんが、「新涼」の涼し気な感じ、「椅子の脚」の(たぶん)ひんやりとした手触り、ダイニングにしゃがんで椅子の脚に触れるときに風が抜けていくような雰囲気のやさしさとちょっとフェチっぽい感じが想像できて好きです。

 今思いついたのですが、これ、いい天気の秋だからベランダとか庭にアウトドア用の椅子を出していて、それを片付ける時に脚に触れている状況と考えるとごく自然ですね。まあ、自然じゃない方が詩っぽいのかもしれませんが。

 

 私は俳句はあまり作らないのですが、あるきっかけで「作ってみよう!」ってチャレンジしたことがあって、でも一句作るのにものすごく悩んだしすごく難しかったです。「入れたいなー」って思う言葉があって、その言葉のイメージに重なる季語を入れて、それで作品にしようってした時に、むしろ最初に「入れたい」と思った言葉が邪魔になる瞬間があるというか…。この言葉ない方がいいんじゃ?違う言葉の方がいいんじゃ?みたいに色々悩んで結局原形がなくなったり、完成形がどこだか分からなくなったり、まあ私は短歌だって別にうまくはないけど、俳句はますます難しくて途方に暮れました。うまいうまくない以前にそもそも形にならん。

 今回、「ある言葉に固執すると失敗することもあるし集中できて上手くいくこともある」という解説を読んで、プロの人はもっともっと修羅場をくぐってきたんだろうなあって考えました。

 

 それにしても「椅子」って、

 

かたはらにおく幻の椅子一つあくがれて待つ夜もなし今は (大西民子)

 

が有名すぎて、短歌詠みにくい言葉なんじゃないか?と思ったのですが穂村弘があえてこのお題にした理由を知りたいですね。

 

 

学校の怪談忘れちゃったけどまぶたに車椅子の青今も (yuifall)