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現代短歌最前線-小島ゆかり 感想3

北溟社 「現代短歌最前線 上・下」 感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

小島ゆかり

 

虻一つつとひるがほの花に入り出て来るまでを耳こそばゆし

 

 この人のこういう情景描写の歌に心惹かれます。自分の耳に虻が出入りしているみたいなこそばゆさを感じるってことですよね。ただ虻が花に出たり入ったりするのを見ているだけなのに、自分の耳に虫が出入りしているようなごそごそした臨場感があります。

 

柿の朱は不思議なる色あをぞらに冷たく卓にあたたかく見ゆ

 

 これも衝撃系の歌ですね…。柿を見てとっさにこんなことが思い浮かぶなんて…。そして深く納得する。柿の木を下から仰ぎ見るとき、冷たい秋の空、さびしい、つめたい朱、って思うのに、食卓に並ぶと団欒のあたたかさみたいな感じする、確かに。「不思議なる色」って素朴な書き方してるのもいいです。下の句で圧倒的な修辞が来るから、上の句の素直な表現が効いてるんですね。

 

子供とは球体ならんストローを吸ふときしんと寄り目となりぬ

 

 この歌かわいい♡どの歌も情景が鮮やかに浮かびます。ストローを吸ってるほっぺも膨らんでるのかも。手もむちむちしてて、目がまんまるで寄り目で。でも、柿の歌と同様、分かる!って思いながらも自分の中にはない言葉、ない発想だなって思います。

 赤ちゃんとか子供って、むちっとしててまるまるとしてるなって思うときと、骨格が細くて薄くてなんてきゃしゃなんだろうって思うときがあります。そして、男性が女性を守りたいって思うのもこういう豊満で柔らかいのに小さくて華奢なところなのかなーとか想像するけど、やっぱり女性は「球体」じゃないなー。子供ならではだな。

 ストローでジュースかなにかを飲みながらそのストローを一生懸命見ている「寄り目」が愛おしいですよね。大人じゃこうはいかないですもん(笑)。

 

 

「むしさされはれた」ときみが指し示す尺骨茎状突起愛しも (yuifall)

 

 

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