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現代短歌最前線-千葉聡 感想2

北溟社 「現代短歌最前線 上・下」 感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

千葉聡②

 

エアコンを<一時間後に切る>にして抱き合う 漫画の続きのように

 

漫画家の卵のままで冷やされてゆく 選評は丁寧語ばかり

 

 この辺は漫画家を目指している「君」と小説家目指してる「僕」の挫折ストーリーですね。

 基本的に登場人物は中退してたり挫折してたり死んだり行方不明だったり病気だったり離婚してたり、要は社会的弱者の立場です。捨て鉢の青春ですね。まあ起業して大成功してモテモテでバブリーみたいな歌詠われてもちょっとぽかーんって感じなのですが(進研ゼミかねずみ講かよ)、でも、まだそういうことに夢見られてた時代なのかなーって気もしないでもない。『桜前線開架宣言』のborn after 1970短歌なんか見てると、もっとリアルに暗いもん(笑)。挫折する夢もねえや、みたいな。

 編著者の山田航の

 

たぶん親の収入超せない僕たちがペットボトルを補充してゆく

 

の身も蓋もなさすごいもんな…。高校中退で夢を追って貧乏とかじゃなくて、大卒で普通に就職したくてもペットボトル補充くらいしか仕事がない、っていう。

 

真夜中の屋上に風「さみしさ」の「さ」と「さ」の距離のままの僕たち

 

 この歌大好きです…。「さみしさ」の「さ」と「さ」の距離ってすごいいい表現…。こういうこと思いつくのってすごいなぁ。ときめきます。うまく言えないんですけど、文字が文字のままで意味になってるというか…。千葉聡の短歌からは言葉を愛する気持ちがめっちゃ伝わってきます。

 

 

人間が描けてないって好きだよね、自分以外を生きないのにさ (yuifall)

背表紙の取れたロミオとジュリエット きみの声だけ聴き分けられる (yuifall)

 

 

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