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「一首鑑賞」-139

「一首鑑賞」の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

139.今週会った人たちはみんないい人で土曜の夜は紅茶を飲んだ

 (永井祐)

 

 砂子屋書房「一首鑑賞」で染野太朗が紹介していた歌です。

sunagoya.com

 上の句と下の句のつながりが分からない…。「いい人」からの連想で、「紅茶」は丁寧に葉っぱから淹れたイングリッシュティー(もちろんホット)なのかなって思ったのですが、作者の名前を見たらペットボトルの「午後の紅茶 おいしい無糖」かもしれないという気がしてきました。我ながらすごい偏見ですね。

 

「ヤギ ばか」で検索すると崖にいるヤギの画像がたくさん出てくる

 

なんていう歌も紹介されていて、おもわず「ヤギ ばか」でググってみましたが、「たくさん」ってほどは出てこなかったです。崖にいるヤギの画像好きなんだよなー♡

 

 永井祐の歌好きなんですが、だからと言って何かを語れるかと言えばそうでもなく…。もっとよく知りたいですね。山田航も「同年代の中でこれからの短歌界を背負っていく存在」的なことを言っていて、この鑑賞文でも「世界と対峙したときの自分自身の感覚に対してひらかれている」というふうに描写されていて、すぐれた歌人なんだろうと思います。歌集読みたいなって思う歌人の一人です。

 

結果的に、紅茶そのものではなく、この紅茶が主体にもたらしたものこそが、この歌の眼目になる。主体の体感がそこにある。読者として同じ紅茶を飲んだような気になる。主体の体感に、読者としての僕の体感が、無理なく同期するような感じがある。とてもふしぎな歌だと思う。歌が読者にひらかれている。

 

とあります。確かに感覚が独りよがりでないというか、「無理なく同期する」というのは分かる。それが心地よいこともあれば、自分が短歌に求めているものってそれだろうか?って思うこともある。これは本当に分からないんです。

 

 昔、10代の頃、学校の先生が、「今の若い子たちは、人を傷つける言葉をあまり使わないですね。〇〇さんってどういう人?と聞くと、「いい人」、と返ってきます」みたいなことを言っていて、それは肯定的な発言だったけどなぜか皮肉にも聞こえたことを覚えてる。いい人って何だよ?って。というかさ、人間を「いい人」か「悪い人」かに分けたら、あからさまな犯罪者とか以外はみんな「いい人」になっちゃうよね。「うーん、まあ、悪い人じゃないんだけど…」みたいなのも「悪い人」じゃないんだからさあ。

 この歌の「いい人たち」ってどんな人たちなんだろうか。なんか、友達とかじゃなくて「今週会った人たち」レベルの相手を「いい人」って描写するのは、本当にそう思っているというよりもそう思っていたいときかなって感じがします。心を見せられる相手じゃないけど、無難に付き合うことができた。話しやすくて、会話は穏やかだった。次会っても無難に話せるだろう。とりあえずよかった。って一人で思っている「土曜の夜」な気がします。

 うーんでも、これは私があまり新しい人と会う生活をしていないからかも。毎日同じ人としか会わないから、結果的に嫌な人に出会うこともなくて、だから「今週会った人はみんないい人でよかった」っていうことのありがたみが分かっていないのかもしれん。

 

 

二十億光年先から洪水のように決めつけられたさが来る (yuifall)

 

 

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