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「一首鑑賞」-253

「一首鑑賞」の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

253.缶コーヒーのポイントシールを携帯に貼りながら君がしゃべり続ける

 (永井祐)

 

 砂子屋書房「一首鑑賞」コーナーで山下翔が紹介していました。

sunagoya.com

 この歌が収められた『日本の中でたのしく暮らす』は2012年刊行だそうなのですが、最初その部分がぱっと目に入り、「2012年かぁ、最近だなあ」と思っていたら、鑑賞文の最初の行に

 

『日本の中でたのしく暮らす』を読むとむかしの本だなあとおもう。

 

と書いてあってひいってなりました。むかし??

 

 うーん、というか、短歌でいうと、百人一首とかは「古代」で、戦前は「近代」で、そのあたりは「むかし」って感じするけど、50年代くらいからは「現代」になってて、2000年以降はかなり新しい部類だと思うのですが、この「むかしの本」というのはつまり、「当時の風俗」的なことですね。「アムラー」「ルーズソックス」「エアジョーダン」とか「魔法のiらんど」とかそういう「むかし」の感じです。「缶コーヒーのポイントシール」「携帯」がそんな感じ。

 

『日本の中でたのしく暮らす』を読むとむかしの本だなあとおもう。ことばが、書かれてあることが、そこにある雰囲気が空気がむかしだなあ、古いなあとおもう。それがかえって新鮮にうつる。時をこえて、普遍性へなびいていかないところに特徴がある。あのとき、あの場所で、あんなふうにいたわけではないわたしは、そのむかしのこと、古いことを懐かしむことができない。それでもきわめて精妙に〈あの頃〉が保存されているように感ずる。

 

 鑑賞文には、こんな風にあります。調べると、永井祐は1981年生まれ、山下翔は1990年生まれだそうです。年の差およそ10歳なので、若い頃通ってきた文化はひと世代分違う感じだろうか。当然2012年の歌集に収められた歌はそれ以前に作られたものなので、2000年代のリアルが詠われているのかな、って気がします(読んでなくてすみません)。「缶コーヒー」を飲んでいるところからして、高校生ではなさそうです。20代、という気がする。「時をこえて、普遍性へなびいていかない」とここでは書いており、最後に

 

インスタに写真をあげながら君がしゃべり続ける、みたいな場面を想像しながら。

 

ともあります。

「君」が友達か恋人か同性か異性か分かりませんが、誰かと一緒に喋っていて、相手が何気なく何かをしている、ということはわりと「普遍性」があり、それを「純喫茶で灰皿に喫いさしの煙草を押し付けながら」だと昭和な感じだし、「缶コーヒーのポイントシールを携帯に貼りながら」だと平成な感じで、「インスタに写真をあげながら」だと令和初期な感じになるのかもしれない。永井祐の当時の新しさは、そういう時代風俗みたいなものをそのまま切り取ったところだったのかもしれません。

 

 

15秒間だけきみが目を上げる倍速視聴の合間の会話 (yuifall)

 

 

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