いろいろ感想を書いてみるブログ

短歌と洋楽和訳メインのブログで、海外ドラマ感想もあります

03x21 - Beta 感想

 POI感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

 この回は、見るたび泣くわ。グレースを思うフィンチと、フィンチを思うリースが切なすぎて…。そしてショウがいつの間にかフィンチのことめっちゃ好きじゃん…。

 ストーリーの切なさと自分の萌えがせめぎ合ってよく分かんなかったです。グレースとフィンチの愛の切なさと映像の美しさに涙してんのに、リース&ショウからのフィンチへの愛に萌え滾っているという…。

 

 ハロルド・フィンチで検索かけてサマリタンがフィンチを探し出せないのになぜネイサンとグレースとは紐づけられるのかよく分かりませんが…。ハロルド・フィンチって名乗ってんの、マシンチームの間でだけじゃないか?なんでグレースが特定されたんだろうなー。この辺よく分からん。ハロルド・レンとかハロルド・クレインとか割と長く使ってそうなフェイクアイデンティティーが特定されたっぽいんですけど、普通にそっちの関係者とかいるんじゃ?秘書とかウィル(ネイサン息子)とか。

 

 ハロルド・マーティンの埋葬シーンではマーティンさんが自称1958年生まれであることが分かりました。グレースは1969年ってことは11歳年下なのか。てことは、グレースとリースって同年代なんだ…。そうなのか…。

 お葬式にはグレースたった一人しかいません。ほんと、フィンチはグレースにこんな思いをさせていいのか…、って何度も思うよ…。

「たった一人でもいい、彼がどんなに素敵な人だったのか思い出を分かち合える人がいたら…」

 グレースの言葉が悲しすぎた。こんな素敵な人をこんな目に合わせるなんて…。

 正直、フィンチはグレースに対してあまりにも自分勝手すぎるし、それがいつも引っかかる。マシンの指示で近づいてマシンのために遠ざけて、何も話さないままこんなことにまで巻き込んで外国に追いやって(まあイタリア行きは本人の希望でもあったのでしょうが)、最初から最後まで“都合のいい女”すぎるわ。

 フィンチがグレースと幸せになる(?)結末に不満なのは、多分それが一番大きいです。イタリアでグレースが他の素敵な男性と出会ってたってよかったとか思っちゃうよ。私はフィンチ推しですけど一人の女性としてはグレースへの態度に腹立ってる部分もあるし、客観的に、あんなに色々やらかしておいてしれっと幸せになってていいわけ??って思いもあるし、フィンチはリースと一緒に一生償い生活してればいいと思うわ(笑)。フィンチよりむしろグレースに幸せになってほしいし、彼女を幸せにする役目はフィンチなのかなぁ、って思っちゃう。まあ、別に男性とじゃなくても仕事や友人、イタリアでの生活に彼女が幸せを感じていてほしいと思う。

 

 ところでここでは「フェリー爆破」って言ってますね。S1E22ではリースに「事故だったの」と言ってましたが、世間的にもあれはテロと認識されていると考えていいようです。

 

 冒頭からリース&ショウがフィンチについて語る。

 

Okay, first, my leg is fine.

OK、まず、私の足は平気

And second, what's with the tips on field work?

それに、フィールドワークについてアドバイスってどういうこと?

Who died and made you Finch?

誰が死んで、誰があんたをフィンチにしたわけ?

Ah... it's the role I gotta play until the real one comes back.

ああ…、これは俺が演じている役割だ、本物が戻ってくるまで

And when is that? It's been over a week.

それっていつになるの?もう1週間以上

No... call, no-- no text.

電話もなし、メールもなし

Not even a smoke signal.

気配すらなし

Finch will reach out to us when he's good and ready.

フィンチは準備ができたら姿を現すだろう

Until then--

それまでは…

 

 前回のエピソードから1週間以上経っているっぽいですね。前回のラストでサマリタンのベータ版が稼働してた風だったけど、あれはマコートのあれこれから1週間後だったのか。

 元工作員2人がかりでも、NY中を監視できるマシンとサマリタンにも探し出せないフィンチ。すごすぎん?

 

 リースとショウはルートと合流し、サマリタンの目を避けて移動します。移動中に公衆電話が鳴り出し、取ろうとするリースにルートが「そんなものに構っている場合じゃない」と。リースは「マシンはカメラを避けて逃げろと言いながらなぜ番号を送ってくる?それにフィンチなら、命を救えと言うはずだ」とルートに構わず電話を取ります。「番号じゃ遅い、名前を言え」と迫るリース。ルートがマシンから名前を聞き出しますが、「なんてこと」と立ち止まります。出たのはグレースの名前でした。

 

 そこから3人はファスコも巻き込んで必死でグレースを保護するのですが、結果的にデシマに奪われてしまいます。そして3人もサマリタンに追われる身に。

 

Never thought I'd love the sight of New Jersey.

ニュージャージーの景色が好きになるなんて思わなかった

You sure we're safe here?

ここは安全なんでしょ?

From everything but the coffee.

コーヒー以外はね

And, yes, we're off the radar as long as we're outside the five boroughs.

そう、5つの行政区の外にいる限りはレーダーから逃れられる

Samaritan can't see this far... yet.

サマリタンはこの距離は見えない…まだね

We have to go back and find Grace.

戻ってグレースを探さなくては

If Decima's throwing everything they have at us, then she's their way to get to Finch.

もしデシマが俺たちに持ちうる全てを投げつけるつもりなら、彼女はフィンチを手に入れる手段だろう

Still the faithful watchdog, huh?

まだ忠実な番犬なのね

Even after Harold left you.

ハロルドに捨てられたのに

Are you gonna help us or not?

お前は俺たちを助けたいのかどうなんだ?

 

 コーヒーマズすぎて吐き出すショウ笑った。リースは相変わらずフィンチのことで頭が一杯です。ルートと3人でカメラを避けながらデシマのアジトを探りに行くことになります。

 

 グリアに尋問を受けるグレースは、ただのイラストレーター(画家?)であるはずの自分がなぜ拉致拘束されるのか分かりません。グリアもグレースとフィンチの関わりが分からない。でも、グレースの経歴を調べ上げていて、平凡なエンジニアと思われていた彼女の死んだ元婚約者こそがハロルド・フィンチであることを突き止めます。

 あなたの愛したハロルド・マーティンの全ては嘘だったと告げるグリア。グレースは初めて怒ります。

 

Here's all you need to know about me, old man.

これが私についてあなたが知る必要のあること全てよ、おじいちゃん

My dad was an alcoholic.

私の父はアルコール依存症だった

Nearly tore the family to pieces.

家族はバラバラに引き裂かれる寸前だった

The thing about growing up that way-- you get good at spotting lies.

そんな風に育ったら、嘘には敏感になる

So good that you start expecting them from everyone.

誰もが嘘をつくだろうって思うようになるの

So how do I know what Harold told me was true?

そんな私が、どうしてハロルドが言ったことを信じたのだと思う?

Because when he came along, against every instinct, I gave him my trust.

彼と出会った時、今までのことは全て忘れて、私は彼の全てを信じた

Somehow I knew... he would never break it.

なぜか分かったの…、彼は決して裏切らないと

And if you doubt that even for a second, you're the one who's lying to himself.

もしたった1秒でもそれを疑うなら、あなたは自分自身に嘘をついているのよ

You truly loved him, didn't you?

あなたは彼を本当に愛していたんだね

I would have done anything to save him.

彼を救うためならなんでもした

And Harold would have done anything for me.

ハロルドも、私のためにどんなことでもしてくれた

I have no doubt.

疑いはしない

Answer me one question.

一つ答えて

Why are you so interested in Harold?

どうしてあなたはハロルドにそんなに興味を持つの?

He's dead.

彼は死んだのよ

 

 グリアが「素敵な夫婦だ」と手渡した両親の写真。でも実は、父はアルコール依存症で家庭は崩壊寸前だった。外から見る見た目だけでは分からないこともある。グレースは「あなたは何も分かっていない」と言います。

 フィンチは実はグレースに本当のことは何も打ち明けていなかった。でも、本当のことって何なんだろう。フィンチは心からグレースを愛してた。それだけは本当だった。グレースはそれだけでよかったんですよね。それさえ本当なら、あとはなんでもよかった。矢井田瞳の Nothing の歌詞思い出すよ…。

 

そう 夢なのか 本当なのかなんてどうでもいいの

愛してたから あなたが全部正しかった

 

 愛してたから、嘘なんてない。あなたの言うことは全部正しかった。

 

 なんかこういうの、ストーリー上都合よすぎない?ってずっと思ってたんですけど、アーナルデュル・インドリダソンの『湖の男』にも失踪した恋人を30年待ち続けてる女性が出てくるんですよね。しかもその相手の男性は素性がはっきりしなくて、彼女に教えてたのも偽名で、失踪の理由もよく分からない。警察には「最初から偽名だし、もともと別に家庭があったか他に女が出来て逃げたんだろ」ってまともに捜査もしてもらえてなくて。最後に真相が分かるんですが、この女性とグレースを重ね合わせて読んでしまってめちゃくちゃ辛かったです。まあフィンチの場合は死亡退場したのでちょっと意味合いが違いますが、どれほど客観的事実が嘘であっても、私の前で見せてくれたあなたは全て真実だったって信じながら待ち続ける気持ちが切なくて…。

 前も書いたけど、グレースはマシンがフィンチのために選んだ理想の女神だった。フィンチを嘘も含めて全部受け入れて愛してくれる人。でも、フィンチはそんな人に守られていていい人間じゃなかったんだよね。それもマシンのせいで。すごいパラドックスだけど、マシンがフィンチをグレースと出会わせて、そして引き裂いた。マシンは一体何のためにフィンチと彼女を出会わせたのだろう、といつも思います。2人とも深く傷ついて引き裂かれることになるのを予想できなかったとは言わせないよほんと。

 あれかな、「一度も愛さないよりは愛して失った方がいい」ってやつか?それにしても残酷すぎんか。フィンチはともかく、グレースがかわいそうすぎる。結局マシンはあれほど拒絶されてもフィンチのことだけをずっと一番愛してたんだろうと思います。他の誰を傷つけても、他の誰が死んでも、フィンチだけを守りたかったんだと。

 

 グリアは「疑いはしない」と言います。グレースのためならフィンチが何でもすることを知ったから。彼女のために全てを捨てて来るだろうと分かります。サマリタンはフィンチの急所を突きました。そしてフィンチとグレースを交換しろと迫ります。

 

I'll be very happy to return her to you... in exchange for Harold Finch.

彼女を喜んで君たちに返そう…、ハロルド・フィンチと引き換えに

What makes you think we'd agree to that?

そんなことには応じられない

Your agreement is irrelevant.

君の同意は問題ではない

Get the message to Mr. Finch.

フィンチ氏にメッセージを伝えろ

I expect he'll cooperate.

彼の協力を期待するよ

For Ms. Hendricks' sake, don't be late.

ヘンドリクスさんのためにも、遅れない方がいい

 

 ショウは「ハロルドは渡せない」と言います。「探すことさえできないのに」

 そこで電話が鳴り、ルートから「グレースの家の前の監視カメラの映像が消えた」と連絡が来ます。急いで向かう2人。

 

Finch.

フィンチ

How did you take out the camera?

どうやってカメラを消したの?

I still have a few tricks left.

まだそのくらいのことはできる

I'd hoped maybe it wasn't too late, that I could warn her.

遅すぎないことを期待して彼女に警告に来たのだが

They want me, don't they?

彼らの狙いは私だ、そうだろう

We're not giving you to Decima, Harold.

あなたをデシマには渡さないよ、ハロルド

We just got you back.

やっとあなたが戻ってきた

The three of us will come up with some kind of way.

3人なら何か方法が見つかるよ

No, any change of plans would put Grace at risk, and I can't allow that.

駄目だ。少しでも計画を変更すればグレースが危険だ。そんなことはできない

I'll trade myself for her.

私は彼女との交換に応じる

The two of you will stay with me and make sure that Decima holds up their end of the deal. Understood?

君たち2人は私と一緒に来て、デシマが約束を守るか確かめてほしい。分かったか?

Whatever you want, Finch. We'll be there.

あんたが望むなら何でも、フィンチ。俺たちは従う

Thank you.

ありがとう

There's one more thing.

もう一つ

I'd like you to avoid violence if at all possible.

もし可能であれば暴力は避けてもらいたいが

But... if they harm Grace in any way... kill them all.

だが…、もし彼らがいかなる方法であってもグレースを傷つけたら、全員殺せ

 

 グレースの家の前にぽつんと座り込むフィンチがかわいそうで…。でもその後起きることはリースとショウにとってあまりにも辛すぎました。ようやく姿を現したフィンチは、グレースとの交換に応じてデシマに身柄を渡すと言います。渡せないと言うショウに、フィンチが望むなら従うと言うリース。そしてフィンチは、「グレースを傷つけたら全員を殺せ」と言います。2人の目を見ないまま。リースは思わず、驚いたような顔でフィンチを見ます。今まで人の命を救うことにこだわり続け、自分の命が危険にさらされても他人の命、他人の番号を救うことを優先させてきたフィンチ。でも、彼にとって自分の命よりも、自分の信念よりも何よりも大切なのはグレースだった。

 

 POIでフィンチが自分の信念を曲げたと思った瞬間が3度あって、一度はS3E10でルートを檻から出してリースを助けた時、二度目はここでグレースを傷つけたら全員殺せと言った時、最後はルートを殺され、サマリタンに勝つためにマシンを意のままに操ることを決めた時です。どれも、自分にとって大切な人を助けたい瞬間だった。フィンチは自分のこういう利己的な部分を知っていたと思う。でも仕方ないよね。誰にだって、他のあらゆる人を犠牲にしても守りたい大切な人はいるだろう。それは、人間である以上仕方ない。彼はそのエゴに対して自覚的だったからこそ、マシンには固くそれを禁じたんだと思った。

 マシンの力を自分のために使えば、ネイサンやグレースを守ることなんて簡単にできたはずだったのに。フィンチはそれをすることはできなかった。でもリースとショウに、「全員を殺せ」と迫ります。

 これはなー。。言われたリースとショウの気持ち思うと苦しいよ。フィンチにそんなことを命令されるなんて。「あんたが望むなら何でも」そうリースは言った。フィンチが望むなら彼自身を差し出すし、グレースを傷つけた全員を殺す。それはリースの意思ではないはず。でも自分の意思よりもフィンチの意思に従うんですね。どうしてだろう。分からない。どうしてここまでフィンチが大切なんだろう。分からないんですが、分かるんだよな。これがPOIのすごいとこだと思うんだけど、リース、ショウ、ルートの気持ちが分かるんです。何があってもフィンチに従って彼を守りたいって思っちゃうの。そのあたりが苦しいほどに伝わってきて切なかった。

 そういえばマシンも言ってたな。「あなたが望むなら何だってする」って。

 

This is the best plan you three could come up with?

これがあんたたち3人が思いついた最高の計画なのか?

We had no choice, Lionel.

あたしたちに選択肢なんてないよ、ライオネル

Well, I don't like it. We're too exposed.

気に入らないな。見え過ぎてるし

And there are cameras everywhere, which is why we do nothing.

どこにでもカメラはあるよ、だからあたしたちは何もできない

No one fires a shot unless we have to.

あたしたちが撃たない限り向こうも撃ってこない

Don't do this, Harold.

行かないでくれ、ハロルド

We'll think of something.

何か考えよう

We've faced worse.

もっと悪い状況に直面したこともあっただろう

Worse?

これよりも悪いことが?

Have we? I don't think so.

あった?そうは思わない

From the day the machine went online, part of me knew that I would never be able to sever myself from it... and that anyone I ever cared about was in danger.

マシンがオンラインになったその日から、私はどこかで、マシンから自分自身を切り離すことは決してできないだろうということが分かっていた…そして私の大切な人が危険に巻き込まれることも

It was foolish to imagine otherwise.

そうでないと想像するのは愚かなことだった

I tried to guard myself, stay hidden, from the government, the authorities, people looking.

私は自分自身を守ろうとし、政府や当局や私を探す人々から隠れようとした

Here we still are.

そしてまだ私たちはここにいる

This moment was inevitable.

この瞬間は避けられなかった

This moment was always looking for me.

この瞬間はずっと私を待っていたのだ

I have to accept it.

私はこれを受け入れなくてはならない

It's for Grace when she's safe.

これは彼女が安全になったらグレースに渡してくれ

There was no other way.

他に道はなかった

Keep yourself alive, Harold.

生きていてくれ、ハロルド

I'll be coming for you.

俺はあんたのために行くから

Remember what I said.

私の言ったことを覚えていてほしい

She's all that matters.

大切なのは彼女だけだ

 

 フィンチはマシンを作った人。だからマシンの引き起こしたことの責任を取らなくてはならない。マシンのために、愛する人であるグレースを危険にさらしたくない。だから行かなくてはならない。それは分かる。でも、置いて行かれるリースとショウ、ファスコの気持ちはどうなるんだよ…。

 

 このシーン、周囲の雪景色に真っ直ぐな道、そこで交換される2人、全てが切なかったです。誰もフィンチに行ってほしくない。行かせたくない。「あんたが望むなら何でも従う」と言っていたリースが、「行かないでくれ」と懇願します。「もっと悪いことも一緒に乗り超えて来ただろう」と。2人とも死ぬ寸前だったタイミングは何度もあったし、お互いに命を預け合ってきた。でもフィンチにとっては、グレースの命を盾にされた今以上に最悪の事態などなかった。

 フィンチは残酷だよ。自分の命よりグレースが大切と思うのはいいけど、それをリースにまで。「大切なのは彼女だけだと思え」と言うなんて。リースにとってはそんなはずはない。フィンチを何より大切に思っていることを知っているはずなのに。それに、ずっと預け合ってきたお互いの命より(自分の命だけじゃなく、リースの命よりも)グレースが大切と言うのはあまりにも残酷で、見ていて辛かった。

 

 もちろん単純にグレース>リースっていう比較しているわけじゃないのは分かってるんです。今回は、ネイサンが死んだ時と同じように、まさにマシンそのものが原因で自分に因果が巡ってきている。また大切な人がマシンのために、自分自身のために、奪われようとしている。フィンチにとってはあのフェリー爆破以来の悪夢でしょう。

 でもリースには初めからその運命を背負わせたじゃないですか。「いずれ2人とも死ぬ」と最初に伝えて。そして2人で死線をくぐり抜けてきた。今、「行かないでほしい」と言ったリースにフィンチは答えない。完璧に、つけ入る隙もなく拒絶します。マシンが引き起こした運命は自分が背負わなくてはならない。あの時ネイサンが言った、「共に報いを受けよう」の「報い」がまだフィンチには重くのしかかっている。それは一人で背負わなくてはならない。

 

 それはそうなんだけど、あの時拾ったリースには、フィンチしかないんだよ。この後のシーンでリースはルートに言います。

 

We lost Finch, which means we lost everything.

俺たちはフィンチを失った。それが意味するのは、俺たちは全てを失ったということだ

 

 リースにはフィンチが全てだった。仕事を貰い、生きがいを貰い、友情と守るべき相手を貰い、人生を貰い、フィンチがいるところが「家」だった。自分がリースを拾って、運命を背負わせ、戻るべき「家」を与えたのに、グレースのためにその彼を含めて全てを捨てるのか。

 

 うーん、でも、じゃあどうすればよかったのかって思っても、フィンチがグレースを見捨てるなんてことはあり得ないし、また別の方向から考えると、もし交換相手が別の人間だったとしても、仮に全く無関係の人間だったとしても同じことは起きたんだろうとは思うんですよね。フィンチは単に愛に殉じたわけじゃなく、マシンの業を背負いに行ったのだから。そしてもし仮にそれがリースとの交換だったとしたら、その方がリースにとってはより残酷だったと思う。もし自分と交換でフィンチがデシマに奪われたのだったら。

 

 リースは最後に「生きていてくれ、ハロルド。必ず救いに行くから」と告げます(どうでもいいけど、WeじゃなくてIって主語使ったとこにめっちゃ萌えたわ。ごめんなさい)。フィンチは答えない。「彼女を頼む」と、それだけです。リースとショウが追ってくることを知っていただろうに。どこまでも探すだろうと分かっていただろうに。本当にひどいと思うけど、他に言えることもなかったのかもしれない。

 だけど、ここで一言「分かった、信じるよ」と言えなかったのは何故だろう。自分は助かる価値もないと思っていたのだろうか。これほど必死なリースになぜ一言も応えてくれなかったんだろう。

 

 グレースはデシマに目隠しをされていました。フィンチのことには気づきません。切ない目でグレースをずっと見つめているフィンチ。ずっと、近づくことさえかなわなかった愛しい人。交換の途中でよろけたグレースを咄嗟に抱き留めます。「ありがとう」、そう言ったグレースに声をかけることもできない。振り返り、彼女の姿を目で追います。グレースを支えて保護したリースは何度もフィンチを振り向きますが、フィンチはずっとグレースだけを見つめている。リースもショウもずっとフィンチを見ているのに、フィンチはグレースがファスコの車で去っていくまで、ずっと彼女だけを見つめていた。

 誰よりもグレースを守りたいフィンチと、誰よりもフィンチを守りたいリース&ショウのすれ違いが切なくて、映像の美しさと相まって胸が掴まれるように苦しくなります。

 

 フィンチに手渡されたフェイクアイデンティティーで、ファスコとリースはグレースをイタリアに逃がします。

 

It's a good time to start over.

新しく始めるにはいい時だ

Please don't look back.

振り向かないでください

Did you know him?

あなたは彼を知っていたの?

Harold?

ハロルドを?

Is he what this was all about?

これには彼が関わっているの?

All I know for sure is... you loved him.

確かなことは…、あなたは彼を愛した

And he loved you back.

そして彼もまたあなたを愛した、それだけです

 

 フィンチは、経歴も人生も全部嘘に塗れてたけど、気持ちだけは嘘はなかった。グレースへの愛も、それからリースへの思いも。

 この時過去形でフィンチの思いを伝えたリースの気持ちを考えると辛いです。本当はフィンチは現在進行形でグレースを愛してる。そのためにフィンチは、チームの“全て”であるフィンチは奪われた。でもそれを伝えることもできない。グレースは何も知らないまま、純真無垢な、フィンチの愛した女神のままでイタリアに行くことになります。

(このシーン、吹替ではリースがグレースに「君は~~」ってタメ口で喋ってるんですけど、ちょっと違和感ある…。ボスの恋人を「君」呼ばわりしてタメ口きくか??)

 ちなみにここでグレースに与えられた偽名のEllsworthですが、アメリカのメイン州エルズワースにStanwood Wildlife Sanctuary、別名Birdsacre Sanctuaryという野鳥保護区があることが由来だそうです。鳥のサンクチュアリね。フィンチが唯一安らげる場所、という意味っぽい。

 

 フィンチがチームから奪われたのは辛いのですが、グレースが死ななくてよかったよね…。そしたらもうフィンチは立ち直れないでしょ。サマリタンとの戦いどころじゃないでしょ。でもなー、リースはジェシカもカーターも失ってること考えるとなー。リースはフィンチと関わることで全てを与えられ、そして全てを奪われることになるわけで。フィンチとリースの関係性の不均衡さがとてもやりきれないのですがそこが萌えポイントでもあり、とても自分に葛藤しますね…。

 この回、その葛藤をまた痛感させられました。フィンチが自分勝手で残酷なことしても、でも好きなんだもん…。嘘まみれなのに信じちゃうんだもん…。リース君(それにグレースも)、気持ち分かるよ。

 

 それにしても、POIはリースとフィンチの2人が中核にいて、リースは比較的分かりやすいキャラクター設定だし多分リースを好きになれない人はPOI自体を見てないと思うんですけど(だから見てる人はみんなリースが好きだと思うんですが)、フィンチを愛せるかどうかでドラマ全体の印象が全然違うんじゃないかなと思います。私はフィンチがめちゃくちゃ好きなんで、みんながフィンチのために何でもする展開になる後半にかなり感情移入するんですが、フィンチが好きじゃないと「何なん??」ってなるだろなーって思うわ。

 キャラクターもいいけど、マイケル・エマーソンさんの演技が説得力あって素晴らしいんですよね。この人のために死ぬ!みたいな、いにしえの忠誠心が湧き上がってくる感じがとても分かる…。

 

 最後、ルートがサマリタンのサーバーを7台奪ったところで終わります。S4に繋がるフラグですね!

 

POI:グレース・ヘンドリクス(被害者)

本編:2014年4月頭頃

フラッシュバック:2010年、グレース(ハロルド・マーティンのお葬式)