いろいろ感想を書いてみるブログ

短歌と洋楽和訳メインのブログで、海外ドラマ感想もあります

05x01 - B.S.O.D. 感想

 POI感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

 BSODはBlue Screen Of Deathで、Windows OSでシステムエラーが起きた時に表示される青い画面のことだそうです。マシンのOSはWindows ではないですが、意味合い的には邦題『瀕死のマシン』の通りかと思われます。

 

 ファイナルシーズンは、ルートの声の語りから始まります。

 

If you can hear this, you're alone.

もしこれが聞こえるのなら、あなたは独りぼっち

The only thing left of us is the sound of my voice.

私たちが残すことができた唯一のものは、私の声の音だけ

I don't know if any of us made it.

私たちのうち誰かがそれを成し遂げることができたかどうか、私は知らない

Did we win? Did we lose?

私たちは勝ったの?それとも負けたの?

I don't know.

私には分からない

I'm not even sure I know what victory would mean anymore.

勝利が何を意味するのかすら、もう確かではない

But either way, it's over.

でもどちらにせよ、それは終わったの

So let me tell you who we were.

だから私たちが誰だったのか、あなたに伝えさせて

Let me tell you who you are...

あなたが誰なのか、話させて

And how we fought back.

そしてどうやって私たちが反撃したのか

 

 チームが拠点にしていた地下鉄の風景が映し出されますが、そこにはもう車両がありません。全てが終わった後の光景であることが分かる。

 これが一体何を意味しているのかは、S5ラストに分かる作りになっていました。

 

 3人はばらばらに別れて逃げ回っている。固まってると目立つからなのかもですが、フィンチを一人にしていいのか…。マシンは一番戦闘能力の高いリースが持ち運んでいて、そのためかリースが最も刺客に追われています。そっか、リースがマシンを持つことで敵を引き付け、他の2人を逃がしてるんだね。リースとフィンチはフェリーターミナルで合流し、カメラを避けて移動するためフェリーに乗ることにするのですが、フィンチはトラウマでフェリーに乗ることができない。

 このシーン、すごく切なかった。ネイサンの「ハロルド!」と呼ぶ声、それに爆発。グレースが「ハロルド?ハロルド?」と探す声。そしてリースが呼びかけます。「ハロルド。ハロルド、行くぞ」

 

We can't. I can't.

無理だ

What?

何だと?

Finch, this is the only way.

フィンチ、こうするしかない

What about Root?

ルートはどうする?

I'll go after her later.

後で彼女を探しに行く

She'll have to fend for herself for now.

今は自分で面倒を見てもらうしかない

Without the Machine to help her, it's a suicide mission.

マシンが彼女を助けてくれなければ、それは自殺行為だ

Finch, if we don't get on this boat right now, we'll all be dead, do you understand this?

フィンチ、もしこの船に今すぐ乗らなければ、俺たちは全員死ぬんだ。それが分かっているのか?

Mr. Reese.

リース君…

The Machine, it's losing power.

マシンが。充電が切れかけている

Come on, Harold.

来い、ハロルド

We could use all the help we can get.

できることをやらなくては

 

 フェリーに乗るのを躊躇うフィンチに、リースは「今乗らないと死ぬ」と促します。

 この2人はさ、別にお互いのトラウマに寄り添ってよしよししたりする関係じゃないんだよね。そこがいいんだよ。お互いに過去はある。傷口もある。それを言葉にして打ち明け合ったりしない。「フェリーターミナルでテロがあってネイサンが目の前で死んだんだ、だから…」なんて言ったり、「それは辛かったな」なんて言ったりしないんです。それでも、今すべきことをするために支え合う。リースはフィンチの腕を取ってフェリーに連れて行きます。

 

 フェリー内での会話も好き。マシンの未来について延々と悲観的なことを述べるフィンチに、「でもやるしかない」と繰り返すリース(この時のフィンチの台詞はまたしても状況説明っぽいです)。この時の会話を起点として、リース→ネイサン→グレース→ルート、と現実と回想を行き来する形でフィンチへの(そしてフィンチが作ったマシンへの)信頼が示される流れがとても好きです。

 

 リースとフィンチの会話。

 

We'll fix it. We have to, Finch.

俺たちが直すんだ。そうしなければ、フィンチ

The world needs your Machine now more than ever.

世界はかつてなくあんたのマシンを必要としている

You're not the first person that's tried to tell me that, Mr. Reese.

君は私にそれを言おうとした最初の人間じゃないよ、リース君

And had I known what we'd be up against now, I might have handled things differently.

そして私たちが今直面している事態をもし知っていたなら、物事を違ったように扱っていただろう

 

 マシンを信じて記憶と力を与えればよかった、と後悔するフィンチ。リースの言葉はかつてネイサンに言われた言葉だったことが分かる。

 

Someone one day is going to create an uninhibited ASI.

誰かがいつか、抑制されていない人工超知能を作るだろう

It's not a matter of if but when.

それは単に時間の問題だ

Why shouldn't it be you?

それが君ではなぜいけない?

Unless, of course, you trust someone else to build one that will be friendly towards humankind.

もちろん、もし君が人間に友好的な人工超知能を作る他の誰かを信頼しなければ、の話だが

 

 いつか誰かが必ず作るだろう。それならば、他の誰よりも君がそれをすべきだ、とかつてネイサンはフィンチに話していた。

 グレースはフィンチに言います。

 

It's hard to let good people go.

いい人を手放すのは大変よね

And I know you're not the type to take other people's feelings lightly, Harold, but that's what I like about you.

それにあなたは誰かの気持ちを軽んじられる人じゃないもの、ハロルド、でもそれが、私があなたを好きなところよ

You've got a good heart. Go with it.

あなたはよい心の持ち主だもの。そうやって生きて

It won't steer you wrong.

それはあなたを誤った方向へは導かないわ

What?

なに?

Oh, it's nothing. It's just--

ああ、何でもないんだ。ただ…

That was something that my father always used to say.

それは父がいつも言っていたことだったから

 

 あなたは善良な心の持ち主。その誠実さはあなたに道を誤らせない。

 それは父親に言われた言葉でもありました。

 最後にルートが言います。

 

Have a little faith, Harry.

信じてよ、ハリー

We made it this far.

きっとやり遂げられるわ

If somehow you get through all of this, I promise you I won't make the same mistake again.

もしあなたがこれをやり遂げられたら、あなたは同じ間違いを繰り返したりしない

Neither will I.

私もそう

Things will definitely be different this time.

今度は物事は全然違うことになるわ

You built something better than us, Harold-- intellectually, morally superior.

あなたは私たちよりも優れたものを作ったのよ、ハロルド。知的にも、倫理的にも優れたものを

You weren't comfortable with that.

君はそれといて快適ではなかった

How could anyone be?

誰が快適になると言うんだ?

I am.

私よ

Because it's a reflection of you.

だってそれはあなたを反映している

And right now, it's our last hope.

そして今では、私たちの最後の希望なの

So here we are.

だからこうしてる

And like it or not, Harry, history is upon you.

否が応でも、ハリー、歴史はあなたが背負ってるの

 

 今まで何度も、「マシンを信じなくてもそれを作ったあんたは信じる」と繰り返してきたリース。そんなリースが今また、「あんたのマシンを世界が必要としている」と言います。かつてネイサンは「人類に友好的な人工超知能を君が作れ」と言った。グレースは「あなたの誠実さが正しい道へ導くわ」と。そしてルートが言う。「マシンが素晴らしいのは、あなたが作ったものだから。私たちの最後の希望なの」。

 フィンチのかつて愛した人たち、今愛する人たち、フィンチを愛する人たちの言葉がこうやってフィンチを支えてくれる流れ、感動しました。フィンチはマシンを信じ、起動へ踏み切ります。

 

 ただ、マシンに関しては分からんことが多すぎるし、なんか辻褄合わないと思うことも多くて何とも言えない。

 次回もぐだぐだ書きますけど、そもそもフィンチは記憶をなくしていくお父さんのために「記憶を保持する」AIを作りたい、ってところにモチベーションがあったはずなのに、マシンの記憶を消す意味が分からん。更に言うと、マシンには明らかに記憶があります。だってテロを検知するために「人の行動をよく知り、人の行動を予測する」システムなんだから、毎日リセットしてたら使い物にならないもん。一から覚え直しとかちょっとあり得ない。昨日の記憶がなくて今日の行動を予測することなんてできるはずがありません。

 あと、今回フィンチはマシンを信じて「もう迷わない」とか言ってるけどS5の間ずっと迷いまくりだし、最終的にまたシステムをクローズにしてしまうし、全体的に話の流れとしての整合性は取れていません。ネイサン、グレースにあれほど言われながらマシンの記憶を消し去った意味がこの回だけだとよく分かんないし。“マシンの記憶”どうこうのくだりはここで必要なかったんじゃないかなーって思うんだけど…。ただ、ネイサンとグレースが、そしてリースとルートが、フィンチを信じてくれていることを示すだけでよかった気がします。

 

 そういえば2016年のフラッシュバックでもマシンがフィンチに「緑茶は飲みましたか?」って言ってたので、フィンチはもともと緑茶好きなんですね。どういうきっかけで飲むようになったのかなーとか想像すると楽しい。でもS3以降緑茶飲んでるシーンがなくなっちゃって寂しいな。

 

 さて、メインストーリーの合間にも色々ありました。

 まずはファスコが、ギャング2人死亡のせいでピンチに。不可解な状況で重要参考人2名が死亡し、ファスコは内務調査の対象になります。イライアスとドミニクが死んだのはサマリタンの「粛清」のためと知っているリースはファスコを口止めしようとしますが、詳しい事情を話すことはできずファスコのフラストレーションは募ります。状況そのものも不可解でリースの態度にも不信感を抱いている中、FBIが「ドミニクを撃ったのは君の銃だった。君は凶悪犯の逃亡を止めた。素晴らしい刑事だ」と事件を強引に終わらせ、ファスコはますます戸惑います。この結果に納得できない内務調査官は心臓発作で死亡し(ペースメーカーを操られ、サマリタンに殺されたことが示唆される)、全てに疑いを抱いたファスコは事件現場周囲の屋上を調べ、ライフルの薬莢を発見、サマリタンの監視対象になってしまう…、という感じ。このFBI捜査官はサマリタンの手下でしたね。

 S5にしてファスコにAI戦争を明かす時が近づいてきたんだけど、こっからしばらくもどかしいよね…。

 

 ルートはマシンの助けなしで逃走中。元殺し屋とはいえ、ハッキング能力もゴッド・モードも封じられ、マシンから提供される偽身分も効果がなくなったルートは、新しい身分を手に入れるためかつての知り合いを頼って移動します。サマリタンの工作員だけでなく、「凶悪犯アラート」?みたいなやつに載せられて一般人にも狙われて休まる時間もないまま移動するのですが、このシーンかなり怖かった。リースは強いしフィンチはリースと一緒にいるのでいいとして、ルートの逃走シーンが一番心臓に悪かったです。サマリタンを誤魔化せるフェイクアイデンティティもないし。

 リースはフィンチを地下鉄に送り届けた後、ルートを探しに再び地上へ。ファスコに頼んで、「凶悪犯」として情報が流れているルートの行方を追います。ルートがかつての知り合いに裏切られてサマリタンの工作員に売られ、絶体絶命のピンチ…のところでリースが駆けつけます。かっこいい!!このシーン好き。

「地下鉄に戻ってフィンチを手伝え」と言うリースに、「あなたをここに置いて?」と返すルート。「俺はあそこでは役に立たない。でもこれなら得意だ。お前が逃げるまで時間を稼ぐ」と敵に銃を向けるリース。ルートは援護します。「私もここで戦うわ」。リースは「それなら俺の後ろにつけ」と、マシンの助けを得られないルートをかばいます。かっこいいー!!

 敵を倒し、プレステ300台を持ち帰る2人。あれはPS3っぽいですね。PS3スパコンなんか作れるのか?って思ったけど見栄えがいいから許そう(笑)。

 

 全体的にシリアスなシーンが多いものの、途中途中で小ネタも挟んでくれて楽しかったです。Uber強奪したリースが「星5つつけるから出せ」とか、地下鉄の入り口の自販機で買い物してる人を発見したリースが「時間がない」と殴り倒し、フィンチが「本気か?」とドン引きすると「砂糖は身体に悪いだろ」とか、マシンを入れたブリーフケースが開かない!と焦るフィンチに電動ドリルを渡して「中身は繊細なんだぞ」と言われると「心肺蘇生なんだから肋骨の数本は折れる」と言い放ってこじ開けたり、リースのちょっととぼけたキャラクターがいい味出してました。

 一方フィンチはシリアスモード全開。ルートを助けに地上に向かったリースを見送り、マシンに向き直ると呟きます。

 

It's just you and me now.

今や君と私の2人だけだな

Though I seem to have a unique talent for alienating the people I employ, I'm not prepared to lose either of you just yet.

私は雇った人間を遠ざけてしまう特異な才能に恵まれているようだが、まだ君たちの誰も失う準備はできていない

 

「雇った人間」3人中2人を失い、最後の1人も失いかけているフィンチ…。

 フィンチの孤独が切なかったんだけど、フィンチはある意味リースよりも、自分が愛されていることを頑なに受け入れられない面があるように思えます。マシンを疑いずっと信じられなかったのは、究極的には自分のことを信じていないからだよね。ネイサンとグレースの言葉がリースとルートの言葉と重なる演出を考えると、ネイサンとグレースが愛してくれたようにリースとルートもフィンチを愛してるって私は受け止めたし、事実そうだと思ってるんですが。

 

 フィンチはマシンの無事を確かめようととりあえず電源に接続したのですが、マシンは勝手にケーブルから脱出して適当なPCで解凍しようとします。フィンチは「そんな場所じゃ容量が足りなさすぎる!」と慌てて止めるのですが解凍処理は止まらず、PCはオーバーヒートして燃えてしまいます。フィンチが気絶している間に火は燃え広がり、消火器で止めた頃にはRAMは焼け焦げていました…。

 これ、駄目じゃね?って思ったよね(笑)。笑いごとじゃないんですが…。消火手伝ってくれるベアーが有能すぎてびびった。ベアーかわいいよ。

 そこに戻ってきたリースとルート。2人はフィンチを励まし、PS3スパコンを組み立てるぞ(笑)!!ルートがリースに状況を説明しますが、「オタク用語は分からん」と一蹴。解凍が始まるとオーバーヒートが起こり、なすすべもないフィンチのためにリースが液体窒素を強奪してくる!そして冷却!

 

 マシン関係には色々屈託もありますが、マシンとフィンチを一途に信じてくれるリースとルートがいたからこそマシンを蘇らせることができた、と思えたS5E1でした。その一方でフィンチの苦悩編はさらに次回も続きます…。

 まあある意味POIというドラマ自体がフィンチの苦悩話と言えなくもないんですけど…。

 

POI:なし

本編:2015年5月6日

*本国放送が2016年5月3日なので、1年くらいずれてる感じになります。

フラッシュバック:

2006年8月11日、フィンチ(ネイサンとIFT)

2006年日付不明、フィンチ(グレースと公園)

2006年日付不明、フィンチ(マシンとIFT)