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 POI感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

 前回の続きです。

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 本編は、フィンチ&マシン、リース&ショウ、ファスコの3チームで進行します。

 

 ファスコはトンネルで死んでいた失踪者たちを調べていた件でFBIに目をつけられ、拉致されます。彼はサマリタンのエージェントだった。ファスコは撃たれるが、防弾ベストを着ていたために助かります。これはS1E1 Pilot のオマージュっぽいシーンでしたね。そして逆に相手に銃を向け、殺してしまうのか…、というあたりで終わる。

 

 リース&ショウは一度地下鉄に戻ってベアーと会うのですが、グリアの番号が出てDCへ逆戻り。NSAに侵入することになります。

 

You think Greer's planning to kill Finch?

グリアがフィンチを殺そうとしてるんだと思う?

More like the other way around.

逆に思える

I think Finch is gonna kill Greer.

フィンチがグリアを殺そうとしているんだ

Or die trying.

もしくは、死ぬ気でそうしようとするか

 

 ショウは、フィンチが囚人600人を野放しにして脱獄した事実を目の当たりにしながら、まだフィンチが人を殺そうとしていることを信じられないでいる。一方リースはフィンチが目的のためにどこまでもやる決意を固めたことを理解している。フィンチがサマリタンの本拠地に乗り込み、グリアの命を奪うこともいとわず戦おうとしていると考え、その後を追います。

 

 フィンチはまずカリフォルニア州ロス・アルトスのある家からウイルス拡散ソフトを盗み出します。誰だ、と聞かれこう答える。

 

Who am I? I'm just like you, Mr. Barnett. A man who sold the world. Only I charged them a dollar.

私が誰かって?私はあなたと同じですよ、バーネットさん。世界を売った男だ。ただ、私はたった1ドルでそれを売ったんですがね

 

 ここの A man who sold the world はおそらくデヴィッド・ボウイの The Man Who Sold The World が元ネタだと思われます。

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 歌詞の中で主人公は自分自身に出会い、「君はずっと昔にひとりぼっちで死んだと思い込んでいた」と告げると「いや死んではいなかった、今目の前にいるのは世界を売った男だ」と返されます。「居場所を探して彷徨った、何百万人もの人々を見つめ続けた」という歌詞もあります。

 このシーンでフィンチは「世界を売った男」と出会っていますが、おそらくその相手は必ずしもバーネット氏ではなく、やはり自分自身だと思います。実際にシミュレーションで「マシンがなかった世界」の自分と出会うわけだし…。あとこの曲をオマージュした小説、陳浩基著・玉田誠訳『世界を売った男』(文集文庫)ってあるのですが、この中には「過去に戻って歴史を改変する」ことができたら…という描写があります。今回もそういうテーマっぽい内容です。

 

 ただS5E11の感想にも書きましたが、自分はダークウェブの住民なのだからむしろ政府の監視に立ち向かう側であるべきだったというハッカーイデオロギーが分かっていないと、ここで「世界を売った男」と自称する意味が理解しづらいと思いました。しかしそれじゃあフィンチは全てのきっかけになったあの9.11にどう立ち向かうべきだったんでしょうね。「マシンがなかった世界」のシミュレーションではIFTの重役になっててダークウェブの住民であること自体やめてましたけど…。

 実際これはどうかと思うよね。「マシンを作らなかった」フィンチが、アナキストとしての道を貫き通す生き方をしていないのはなぜなのだろう。正直あのシミュレーションは意味分からんしああなっていたとはとても思えませんが、結局、「マシンを作って、かつ自分のために使う」という今の状況が最善手だったということか?

 

 フィンチはバーネット氏の身分と車を奪って自動運転で空港へ向かい、バーネット氏名義で借りたチャーター機メリーランド州に向かいます。NATO要人の運転手に成り済ましてフォート・ミードに侵入するも、NSAのサーバーにウイルスをアップロードしたところでサマリタンのエージェントに捕まります。フォート・ミードはファラデーケージのようになっており、電波が届かないためマシンのサポートは期待できません。サマリタンの本部に連れていかれ、グリアと話します。

 てか、いつの間にサマリタンの本部はメリーランド州になってたんかい。しかもフォート・ミードの中ですか。あの少年がやたら「大統領と話したい」とか言ってたの、こういう舞台設定を作るためか?政府の中核にいるっていう。

 

 フィンチはグリアに言われます。

「もうすぐ追いかけっこのゲームも終わる。君はウイルスをまだ起動していない。パスワードをマシンに教えたのか?ウイルスが起動すればマシンがどうなるかマシンは知っているのか?」

 フィンチは答える。

「推測してはいるだろう」

 

 まあ、ウイルスによってマシンも死ぬってことなんですが、マシンは分かってるだろうし仮に知らなかったとしても驚きはしないんじゃないの?「あなたが死ねと言うなら死ぬわ」って感じじゃないですか…。ルートと99.96%同じ考えなら、フィンチのために喜んで死ぬだろう。

 なんかPOIって、魔性の男フィンチが皆の運命を狂わせる話ですよね…。みんな「あなたのためなら死ぬわ」モードだもん。

 で、その後ちょっと萌えるようなちょっとキモいような発言をするグリア。

 

「サマリタンはマシンの死を望んでいない。マシンが消えそうになった時気が動転していた。もうすぐ洪水は来る、サマリタンは方舟を作り、つがいを乗せるのだ。そしてサマリタンは君のマシンを伴侶に望んでいる」

 

 マジかよー。ようやく政府から取り戻した娘がまた変な男に求婚されとる…。娘が嫌がる男のとこに嫁にはやらん!ってフィンチの父性本能炸裂しそうですわ…。その後グリアはフィンチに「君はマシンと相思相愛だ」発言してるから、フィンチ→←マシン←サマリタン、みたいな奇妙な三角関係が浮かんで笑えた。

 ていうかサマリタンのやり方がS4からずっとぬるかったのはマシンを殺したくなかったからなのか?これ、後付けじゃねーの、って勘ぐってしまう…。ちゃんとした伏線だったのかなあ。あと、サマリタンが本当にマシンを殺せないなら、フィンチのあのシミュレーション意味なくない?マシンの圧勝じゃない??つがいを欲しがるなんて、サマリタンの神性が揺らぐよね。

 

 この間リース&ショウはフォート・ミードの中を調べてスノーデン事件の証拠品であるモデムを獲得し、NSA内のネットワークにマシンが接続できるようにします。それにしてもスノーデン事件か…。NSAの大規模監視システムによる国民の監視、人工知能を用いたデータ解析が暴露されたのは2013年のことで、POIの放送開始後です。POIすごいなって改めて思ったわ…。そういうことが現実であってもおかしくないという空気感はあった上でのストーリーなのかもしれませんが。

 

 グリアはフィンチを何もない部屋に連れてきて話をします。

 

I'm giving you the opportunity to save your Machine, which you so clearly love and loves you in return.

私は君に君のマシンを救うチャンスをあげよう。君は明らかにマシンを愛していて、マシンも君を愛しているのだから

For what purpose?

一体何の目的で?

Samaritan would consider your Machine a much-needed peer for what promises to be a fantastic voyage.

サマリタンは君のマシンを約束された素晴らしい旅の同行者として考えている

This virus you uploaded is nothing but a tragic mistake.

君がアップロードしたウイルスは悲劇的な間違い以外の何者でもない

Tell me, after it's eradicated both ASIs, what then?

教えてくれ、両方のASIを絶滅させた後、何が起こるのか

Then we go back to letting humanity determine its own fate.

人間が自分自身の運命を決定する世界に戻る

Surely you're not that naive. You know another ASI would soon arise.

もちろん君はそんなに甘い考えは持っていない。他のASIがすぐに生み出されることは分かっているだろう

Not for certain I don't, and neither do you.

それは確信できないし、あなたもそうだ

Proliferation is inevitable. So is progress.

増殖は避けられない。進化もだ

Progress? That eliminates free will and renders humanity irrelevant?

進化?自由意志を排し、人間を無用と解釈することが?

You've gone mad.

あなたは気が狂っている

You are the problem. Samaritan's code was conceived by Arthur Claypool, who was a good man.

あなたが問題なのだ。サマリタンのコードはアーサー・クレイプールによって書かれたものだ。彼はよい人間だった

You have corrupted it.

あなたがそれを堕落させた

I didn't corrupt Samaritan any more than I can control it now.

私が今サマリタンを支配できないように、サマリタンを堕落させてなどいない

That would be like the apes controlling us. It's impossible.

猿が人間を支配できないのと同じだ。不可能だよ

Let go, Harold. Join us.

さあ、ハロルド、我々に加わるのだ

Ceding control is not the answer, because you will never know if Samaritan has any real concern for human life, for all human lives.

支配権を譲るという回答はない。なぜならあなたはサマリタンが本当に人間の人生や命を思っているかどうか分かることがないからだ

And that is why I will not join you or ever allow our machines to join.

だから私は決してあなた方には加わらないし、我々のマシンを協力させることもない

Thank you for answering my question.

私の質問に答えてくれてありがとう

Funny, it sounded like a demand.

おかしいな、要求に聞こえたが

Not that question. But whether your Machine knows the password to deploy the virus.

その質問ではない。君のマシンがウイルスのパスワードを知っているかどうかという質問だ

From the very beginning, when you crippled your Machine, you denied it the same power that you enjoy.

最初から、君はマシンに足枷をはめ、君が享受している同じ力を持つことを否定した

Autonomy.

自律性をね

It's always required your permission, because it never had your trust.

全てに君の許可を求めた。なぜなら君は決してマシンを信じなかったからだ

And you just said it, you wouldn't cede control.

そして君が今言ったように、君はその支配権を譲らない

That tells Samaritan that only you know the password.

つまり、それは君だけがパスワードを知っているのだとサマリタンに知れたということだ

For such a brilliant mind, you are a terrible chess player, which is why you've already lost.

これほど素晴らしい頭脳を持ちながら、君はチェスのプレイヤーとしては悲惨だな。だから君はすでに負けているのだ

Two pieces trapped on a board.

私たちは閉じ込められた2つの駒なのか

Despite your lessons to the Machine, the life of a pawn is not worth the same as a queen.

君がマシンに教えた教訓に反して、ポーンの命はクイーンと同じではないのだ

This room is soundproofed. No microphones, no way to activate the virus.

この部屋は防音だ。マイクもない。ウイルスを起動する方法はない

The fire suppression system will suck the oxygen from this room within seconds.

消火システムが数秒以内にこの部屋から酸素を吸い出すだろう

Samaritan will kill you too.

サマリタンはあなたのことも殺すのか

The queen sacrifice. So be it. Be at peace, Harold.

クイーン・サクリファイスだ。それはよい。心安らかであれ、ハロルド

We have created a new world, with our lives and now with our deaths, Samaritan's survival is ensured, as is life's evolution.

我々は新しい世界を作ったのだ。我々の生と、そして今、死によって。サマリタンは生き延び、生命は進化する

History will revere us.

歴史は我々を敬うだろう

 

 この会話の最中、リースとショウの侵入が伝えられ、グリアとフィンチを見守っていた警備担当者が席を離れます。そしてフィンチがマシンにパスワードを教えていないと知ったサマリタンは2人を部屋に閉じ込め、酸素濃度を下げて殺そうとします。グリアが死に、フィンチも倒れそうになった時、リースとショウが手に入れたモデムからの通信でマシンがフィンチに扉の暗証番号を伝え、フィンチは脱出します。

 これ、窒息死させるっていう手口、S3ラストでかかるRadiohead の Exit music (for a film) のWe hope that you choke って歌詞の伏線回収ですね。「窒息することを望んでる」か。

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 ASIが次にまた生み出されるかどうかと聞かれたら、答えはYESだろう。でも、進歩は必ず螺旋状を描くように進みます。同じところをぐるぐると回っているようで階層は上昇している。次にASIが生み出されるとしたら、マシンやサマリタンと同じ運命は辿らないのかもしれない。ただPOI世界に関しては、ASIが生み出されるかどうか以前に運用が陰謀すぎるのでなんとも…。まあスノーデン事件とか見るとこれが現実なのかもですけどね。。

 ていうかマシンもサマリタンも厳密にはASIとは言えないのではないかと思いますが…。自分自身の知能を超えるAIを自分で作り出すことができて初めてASIだよなーって思う。

 

 フィンチはかつてマシンに「チェスはただのゲームだ。人間は駒ではない。人の命に優劣はない。犠牲にしていい命などない。世界をチェスに喩えるな。そのようなことをする奴は負けるべきだ」と教えていた。今、サマリタンとグリアはこの戦いをチェスになぞられていることが分かります。

 サマリタン的には、サマリタンとマシンがそれぞれのキングで、グリアとフィンチがクイーンだろう。一般人はポーンです。今までポーンを犠牲にしてクイーンを動かしてきたが、「クイーンを犠牲にすることはトリックにも使える」。これはフィンチがかつてマシンにチェスゲームの中で教えたことだった。グリアはキングに戦略を委ねず、ポーンとクイーンの価値を同じと考えるフィンチを「チェスの指し手としては最低だ」と評する。

 でもフィンチは世界をチェスとは思っておらず、さらに言えば、今この状況をチェスになぞらえるのであればマシンはキングではないだろう。フィンチがプレイヤーとして世界の命運を握っており、マシンはいわば「隣に立って見ているだけの人」です。「岡目八目」と言う通り、プレイヤーよりも冷静に試合全体を見通しアドバイスはしてくれるけど、自ら駒を動かしたりはしない人。キングは誰か一人の人間ではなく、人間の自由意志そのものでしょう。そしてポーンからクイーンまで全ての駒は役割が違うだけで価値は同一です。

 つまりグリアの見ている世界と、フィンチが見ている世界は階層が違っているように思える。それはS3からずっと感じていたことです。この2人の議論は永久に噛み合わないと思う。グリアは人工超知能は無条件に正しいと思っていて、フィンチは絶対にそうでないと思ってるから。

 

 グリアはASIを妄信しすぎていた。フィンチは「サマリタンはアーサーが作ったものだ。悪いものであったはずがない。あなたが堕落させたのだ」と言います。グリアは「私がサマリタンを支配したり堕落させたりすることができるはずがない」と答えます。

 でも、グリアが堕落させたんだと思う。グリアはサマリタンをスポイルしたんです。マシンもサマリタンも、最初は生まれたての何も分からない子供だった。超知能を持ってはいても、世界を知らないナイーブな子供だった。フィンチはマシンに世界を教え、愛を持って彼女を時に厳しく教育しました。一方、サマリタンは生まれた時から天才とあがめられ、神と奉られ、「私が支配するべきではない」と見捨てられ、誰にも教育されなかった。自分ひとりの力で世界を学ぶしかなかった。世界は、生まれたての子供をいきなり放り込むのに適した場所じゃない。人間社会の醜さ、不平等さ、残酷さを目にして、それらを排除しようと思ってもおかしくないですよね。

 フィンチは心優しい友だったアーサーの子を奪い、教育を放棄して放置し、裸の王に仕立て上げたグリアを憎んでいるのではないか。世界をチェスに喩えるような人間を軽蔑している。生命の価値に差をつけるような行為を嫌っているし、そもそも誰がキングで誰がポーンであるか、絶対的な定義はないからです。

 

 マシンの支配権うんぬんについてもなー。。フィンチがマシンを今「支配」しているのはルートがマシンに「防衛力」を与えてフィンチがゴッド・モードになっているからで、フィンチはもともと全然マシンを支配なんてしてませんよね。作る時にかなりの制限をかけたけど、ネイサンに告げたように自分自身をもロックアウトし、誰にも中を覗けないようにした。そしてマシンはその後政府の支配も抜け出して勝手に行動してます。もともとフィンチが奪った感情に反して明らかに「特別な人」がいるし、S5では思考がルート寄りになってる。

 それでも、マシンは「人に友好的であれ」という大前提のために、フィンチに従う道を自分で選んでいるんじゃないの?彼が自分の倫理的指標だから。どんなことがあっても、たとえ自分が殺されても、人を害するな。それを今でも守ってるし、フィンチはそれができるからこそ「機械」に価値があると思っているのでは?(人間ならば容易にできることじゃないから)

 

 この会話見ていて、以前から思っていたことではありますが、マシンとサマリタンが制限なしに直接対決したら普通にマシンが勝つんじゃ?って改めて思った。マシンの方がよっぽど色々分かってるもん。

 

サマリタンは、

・アイスナイン実行のパスワード

・フォート・ミードに辿り着くまでのフィンチの行動

・フィンチがアイスナイン実行のパスワードをマシンに教えたかどうか

・マシンが教えられなくてもアイスナイン実行のパスワードを知りうるかどうか

・リースとショウがどう動いているか

いずれも全く予測できておらず、起こった出来事に対処するだけです。

 

一方でマシンは

・NYのリース&ショウに番号を出した時点ですでにサマリタンがグリアを捨て駒にすることを知っていた(知っていたから番号を出した)

・ということは、サマリタンがアイスナイン実行のパスワードを予測できておらず、フィンチがそれをマシンに教えているかも分からず、教えていなくてもマシンがそれを知っているかも知らず、グリアを使って聞き出そうとすることを分かっていたということになる

・サマリタンがグリアもろともフィンチを殺そうとすることを見越し、リース&ショウにモデムを探させNSAのネットワークに侵入した

・リース&ショウを動かせばグリアとフィンチの監視が手薄になり、フィンチを逃がせることも見こしていた

・フィンチが教えなくてもアイスナイン実行のパスワードを知っていた

と、「人をよく見てよく知り、人の行動を予測する」というフィンチの教えによってサマリタンの思考さえも先回りできることが示される。

(なのに今まで全然サマリタンの意図を教えてくれなかったわけで…。S5のオープンシステムの意味マジでなかったよな…)

 

 フィンチはマシンの手助けで部屋を脱出し助かるのですが、マシンは「ショウとあの大きいまぬけがやってくれたの」とルートっぽい言い方をしてきます。フィンチは「2人は無事なのか」、と尋ねる。

 

Of course they are. But so are you, Harry.

もちろん危険よ。でもあなたもそうよ、ハリー

You're free to come to their aid, but you might forfeit your only chance to deploy the virus into Samaritan. And you've always known, John has been on borrowed time.

あなたは彼らを助けに行くこともできるけど、サマリタンにウイルスを感染させるたった一度のチャンスを失うかも。それにあなたもいつも知っている通り、ジョンはいつ死んでもおかしくないのよ

 

 この後リースのシミュレーションが入り、フィンチは「2人のところへ連れて行ってくれ」とマシンに頼みます。

 今までウイルスを起動、拡散するためだけに動き回ってきたフィンチが、土壇場になって2人を助けることを優先します。やっぱり、フィンチが誰より守りたかったのは世界とかよりも自分の大切な人なんだと思った。世界を守ろうとしてネイサンを失ったフィンチと、世界を守ろうとしてジェシカを失ったリースの話だから、「自分の大切な人を守りたい」というモチベーションでラストに向かっていく方が納得できます。ウイルス拡散が成功してサマリタンを倒しても、リースとショウが死んでいたら意味がない。だから2人を助けに行きます。

 

 このシーン好き。リースとショウに突然「イヤホンを外せ」と告げるフィンチ。訳が分からないながらも指示に従う2人。この時のフィンチの台詞かっこいい♡

 

I trust you can shoot in the dark.

君たちは暗闇でも撃てるだろう

 

 またRather Beじゃん♡

 

If you gave me a chance I would take it

もしチャンスをくれるなら必ずつかんでみせる

It’s a shot in the dark but I’ll make it

暗闇で撃つようなものだけど、必ずやり遂げる

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 ね、リース君。暗闇で撃つの得意だもんね。S4ラストの

There’s no place I’d rather be.

の萌えがまだ消えていない私です。

 

 マシンの得意技であるイヤホンハウリングを使って工作員を攻撃して電気を落とし、リースとショウを助けると鍵のかかった扉を簡単に開けて現れるフィンチ。ファスコが前にミスター・魔法使いって言ってましたが、マジで魔法使い感が強くなってまいりました…。

 リースは自分たちを攻撃してきたのがフォート・ミードの職員ではなく、サマリタンのエージェントであることに気づいていました。

 

We got Samaritan Ops in droves.

サマリタンの戦闘員が大挙してきた

Safe bet Greer's here.

グリアがここにいるに違いない

He is, but he's no longer a threat.

彼はいるよ。でももはや脅威ではない

Why not?

なぜ?

He's dead.

彼は死んだからね

What?

何だと?

He sacrificed himself in an attempt to stop me.

彼は私を止めようとして自分を犠牲にしたんだ

From doing what?

あなたが何をするのを止めようとしたの?

Cleaning the slate.

白紙に戻すことを

 

 リースはフィンチがついに手を汚したのか、とかなり驚いてWhat? と尋ねますが、グリアを殺したのはサマリタンでした。リースはフィンチの命を救いたかっただけじゃない、あれほど銃を持たせて身を守らせようとしていたけど、本当はフィンチに人を殺させたくなかったのかもしれない、と思った。S1E4でティルマン先生に「人を殺してしまえば前と同じ自分ではいられない」と話していたから。

 早く逃げろ、と話すフィンチにリースは返します。

 

We're not leaving here without you.

俺たちはあんたを置いては行かない

 

 こういうやり取りめっちゃ好きだな…。その後サマリタンのエージェントと撃ち合いになるのですが、ジェフ・ブラックウェルといいこの人といい、ゴッド・モードでも当たらなかったら意味ないよなーとか思いました。そりゃそうですよね。私が銃を持たされてゴッド・モードになっても1mmも役に立たないもんな。

 リースとショウが戦っている間に姿を消すフィンチ。2人はそれに気づきフィンチを追いますが、フィンチは扉に鍵をかけて「早く脱出しろ」と去ってしまいます。

 

Damn you, Finch.

ふざけるな、フィンチ

Good-bye, John.

さよなら、ジョン

 

 Damn youはリースはイライアスにも言ってたよね。自分が助けようとした相手に締め出されて助けられた時、リースは怒りを感じるようです。

 しかしどうすることもできず、2人は脱出。フィンチはウイルスの起動に向かいます。最後まで躊躇うフィンチに、「マシンがいなくてもサマリタンは存在した」というシミュレーションを見せるマシン。「私がいなければ世界はサマリタンの思うままになるのよ」と。

 

Now I understand.

分かった

What is it?

何を知ったの?

I promised you I would never hurt you again.

私は君を決して、二度と傷つけないと約束したのに

I know. But in breaking this promise, you'll be helping to fulfill a much larger one.

分かってるわ。でもこの約束を破ることで、あなたはもっと大きな約束を果たすことができるの

STOP.

やめろ

OR YOU WILL KILL YOUR CREATION.

さもなければ、お前はお前の創造物をも殺すことになる

I'm aware of that.

私はそれに気づいている

I'm also aware that life, humanity, will endure, whether or not my Machine exists.

しかし、マシンがいてもいなくても、生命は、人間は、それに耐えるだろうことにも気づいている

The same cannot be said of a world under your control.

世界をお前の支配下に置けば、同じことは言えない

YOUR MACHINE CAN SERVE A GREATER PURPOSE.

お前のマシンはよりよい目的のために働くことができるのだ

My Machine... her purpose has been constant: to protect and save humanity.

私のマシンは…、彼女の目的はいつも変わらない。人を守り、救うこと

It's what she's doing now.

そしてそれこそが今彼女がしていることだ

YOU CANNOT STOP THE INEVITABLE.

お前は避けられないことを止めることはできない

Eight letters. Your decision, Harold.

8文字よ。あなたが決めるの、ハロルド

Eight letters? You knew all along.

8文字?君はずっと知っていたんだ

Maybe I know you better than yourself.

あなたよりあなたのこと知ってるの

 

 ウイルスをアクティベートして立ち去るフィンチ。マシンにThank youと伝えます。

 

 めっちゃ感動したんだけど、でも字面で見るとマシンとフィンチがラブラブすぎてなんだかなー。“彼女”でよかったですね。“彼”だったらとんでもないことになってたよ。

 まー、でも、恋人同士って感じじゃないですね。マシンがルートっぽいのもあって、フィンチの信者みたいに見える。だからマシンが「神」って呼ばれることずっとピンと来なかったんだよな。フィンチは自分の大切な人のために(あるいは誰のためであっても)マシンを犠牲にすることをいとわないけど、マシンはフィンチを犠牲にすることは選ばないから。どんな強大な力を持っていてもフィンチの許可がなければ使わないし、あなたのためなら何でもしちゃうから。それは「神」のやり方じゃないよね。

 

 そういえばウイルスアクティベートのパスワード「DASHWOOD」ですが、ジェーン・オースティンの“Sense and Sensibility”(分別と多感)に登場するDASHWOOD家から取っているのだとか。この本はフィンチがグレースにプロポーズするときにリングを隠した本です。そして、この回では地下鉄のシーンでルートのベッドの上に座ったショウがこの本を手にしていた。

 S5では、シーズンフィナーレに向けて、フィンチの心の中にはずっとグレースがいる…、ってことを強調されまくるのにもモヤります。確かにこの時点ではフィンチは戦いの中で死ぬつもりだったんだろうし、最後に大切な女性を思って…って気持ちも否定できないんですけど。。ちょっとうまく消化できない。

 フィンチは自らの手で人殺しこそしてないけど、今までリース、ショウ、ルートと一緒に何人もの殺人に加担してきたし、何より現状テロリストです。「人を殺せば前と同じ自分ではいられない、自分の中の最も大切なものを失うんだ」ってかつてリースが言ってましたが、フィンチだってそうだと思うよ。グレースと愛し合っていた頃の自分じゃないよ。だから、グレースを大切に思っていることはすごく分かっても、ラスト会いに行くのが納得いかないっていうか…。

 で、そのラストから逆算して見るから、こういうグレースフラグがノイズに感じちゃうんですよね。会いに行くシーンさえなければ、「フィンチの中の一番大切で神聖な思い出」ってことですんなり理解できたと思うんですが…。

 

 ところで後から知ったのですが、「アイス・ナイン」って、カート・ヴォネガット・ジュニア『猫のゆりかご』に出てくる「世界全てを破壊する物質」でした。アメリカンSFの素養があればこういう小ネタが色々分かってもっと楽しいんだろうなぁ。

 

 次回ついに最終回かー。ほんと寂しいな。もっとリース&フィンチのストーリー見たかったなぁ。フィンチとマシンもいいんだけど、やっぱりリースとフィンチの2人が好きだった。今思えばチームになっちゃったS3前半に文句言ってたの贅沢だったわ…。カーターの死で一度視聴脱落した私ですが、その後の展開の方がもっとシビアでした。私の中ではリースは生きててフィンチと人助けしてるので、S5の後S1S2までまた見ます…。

 

POI:フィリップ・ヘイズ/ジョン・グリア(加害者かつ被害者)

本編:2015年11月12日から16日の間

(フィンチの写真を見ながら「最後の目撃情報は一週間以上前」と言っているので、前回から一週間以上経っている。次回が月曜スタートで11月16日っぽいので12日~16日の間)

フラッシュバックはないが、マシンチーム全員のシミュレーションあり