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05x02 - SNAFU 感想

 POI感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

 SNAFUはSituation Normal: All Fucked Upの略で、状況はいつも通り全てがめちゃくちゃ、という意味らしい。マシンに関してはSituation Abnormal All Fucked Up ですけどね。

 

 最初マシンの顔認識機能にエラーが生じているシーン面白すぎて何度見たか分からん。

 

It appears to be working.

(フィンチ)動いているようだ

Hi there, pretty.

(ファスコ/ルート)そこにいるのね、かわいこちゃん

Okay, here's the last one.

(リース)OK、これで最後だ

You should have all the precinct cameras.

(リース)区域カメラは全て見ただろう

Now can we get back to work?

(リース)仕事に戻っていいか?

My trigger finger's itchy as hell.

(フィンチ/リース)引き金を引く指がかゆくて仕方ない

Patience, Mr. Reese.

(フィンチ)耐えてくれ、リース君

With the precinct cameras we can run a real surveillance test.

(フィンチ)カメラで本物のサーベイランステストをしなくては

No more tests.

(フィンチ/リース)もうテストはいいだろう

It's been almost two months. People are dying without us.

(フィンチ/リース)もう2か月たつぞ。俺たちがいなくて人々が死んでる

Hey, partner. I guess glasses ain't got the magic intel, huh?

(ファスコ)よう相棒、メガネが魔法の情報をゲットできてないのか?

That mean you're finally gonna have to be a real detective?

(ルート/ファスコ)つまりあんたはついに本物の警官になるってわけだ

Even one error in the Machine's code could have unimaginable consequences.

(ファスコ/フィンチ)マシンのコードのたった一つのエラーでさえも想像できない結果を招きうる

Just turn the damn thing on.

(ルート/リース)ただ始めればいいだろう

The sky's not gonna fall.

(ルート/リース)空は落ちて来はしない

Actually, the sky does fall a lot around you lunatics.

(リース/ファスコ)空はイカレたあんたの周りに落ちてくるだろうな

Cool your jets, Johnny boy.

(フィンチ/ルート)落ち着いてよ、ジョニーボーイ

You're the muscle. Harry's the maestro.

(フィンチ/ルート)あなたは力づくだけど、ハリーはマエストロよ

This is delicate.

(ルート/フィンチ)これは繊細なんだ

Things must be taken one at a time, in order.

(ルート/フィンチ)物事は一度に一つずつ、順番に進めなくては

How about you keep tinkering, I'll go shoot some knees, get my own intel?

(ルート/リース)あんたがカンカンやってる間に、俺は誰かの膝を撃ってくる。俺自身の情報で。そういうのはどうだ?

Yeah, sounds like a great idea.

(ルート/ファスコ)ああ、そりゃいいな

Your CV could really use some more color.

(ルート/ファスコ)あんたの履歴書が色とりどりになるだろうよ

I say let him go.

(ルート)彼を行かせたらどう?

Tarzan can beat his chest and stop bothering us.

(ルート)ターザンは胸を叩けるし、私たちを煩わせるのをやめるわよ

Oh, dear.

(ルート/フィンチ)なんてことだ

It appears we have an issue with the facial recognition.

(フィンチ)顔認識機能に問題があるようだ

 

 役者さんがそれぞれの相手の特徴をうまく捉えた喋り方するのめっちゃ面白かった。マイケル・エマーソンさんが前半「指が引き金を引きたがってる」とか「俺たちがいなくて人が死んでる」ってリースの台詞言ったり、「落ち着いてよ。あなたは筋肉野郎だけどハリーはマエストロよ」ってルートの台詞言ったりすんのめっちゃうけたし、後半エイミー・アッカーさんが「空は落ちやしない」(リース)、「物事は一度に一つずつ、順番に進めなくては」(フィンチ)って言うのすごい似てた。特にフィンチの in order って言い方とか Oh, dear って言い方と仕草がめっちゃ似てて、エイミー・アッカーさんすごいな!って思いました。

 とにかく面白いので繰り返し見ちゃう。Gleeの入れ替わりの回も笑ったなーそういえば。

 

 前半の会話面白いです。No server, no number(サーバーの容量が足りなくて番号が出せない)と嘆くフィンチに、「番号??世界を救うのよね??ショウは?」とルート。フィンチはOne step at a time, in order. と先ほどの(ルートの顔で喋った)台詞を繰り返します。

 ルートはマシンが不調で偽装身分が出せないので地下鉄に引きこもり(2か月も??フィンチと一緒に住んでるらしいが、フィンチも地下鉄に住んでんの??)。フィンチはリースと一緒にサーバーを強盗に行くことになり、「外に行くならお願い」とルートにお使いを頼まれます。引き受けると「ありがとう」ってほっぺにキスするのはいいけど、その後なぜかフィンチのお尻をぺーん!って叩くルート。フィンチ唖然としてたし。どういう意味のコミュニケーションなの、これ??

 

 で、強盗へ行く2人。

 

Mouthwash, floss, black nail polish? Are you taking fashion risks?

マウスウォッシュ、フロス、黒いマニュキュア?あんたはファッションの危険を冒すのか?

Providing creature comforts.

創造的快適さを提供するんだ

Since Ms. Groves can't leave the subway until the Machine restores her cover identities, it's the least I can do.

マシンが彼女の偽装身分を用意するまでグローブスさんは地下鉄から離れられないので、これが私にできる精一杯のことだ

Shag rug in purple.

毛足の長い紫のラグマット…

She's recently begun redecorating. The all-nighters are making us a bit crazy.

彼女は最近改装し始めたんだ。徹夜続きで我々はちょっとおかしくなってる

Fuzzy slippers, two pairs. One of those for you?

ふわふわのスリッパ、2足分。1つはあんたのか?

Yes, all right. I get your point. I'll have the Machine up soon.

ああ、そうだな、言いたいことは分かる。私はすぐにマシンをどうにかしなくては

I'm aware that every day without it means more bodies for you.

あれがない毎日は君にとってより多くの遺体を意味することは分かっている

Actually, things are real quiet at work. I've got too much free time.

実のところ、仕事の方は静かなもんだ。暇な時間が多いよ

Is that why you've been so restless?

だから君はそんなに落ち着きがないのか?

Make friends. You deserve a social life.

友人を作りなさい。君には社会生活がふさわしい

What about Dr. Campbell?

キャンベル先生はどうなんだ?

A few dates.

何度かデートしたよ

Have you told Iris anything?

アイリスに何もかも話したのか?

Just enough to keep her safe.

彼女を安全にしておける程度のことだけだ

There's our cue.

行動開始のようだ

Strange that your work has gotten so quiet.

君の仕事が静かになったというのは奇妙なことだ

If homicides are down, Samaritan is preventing murders.

殺人が減ったなら、サマリタンは殺人を防いでいるんだ

Maybe it's not all bad.

悪くないのかも

Not all bad is not good enough.

悪くないというのは十分良いということじゃない

Finch, how did you teach your Machine to be good?

フィンチ、あんたはどうやってマシンに善になるように教えたんだ?

By example.

例題を使って

Here, put this on.

ほら、これを着ろ

Crowbar. Flashbang.

バールだ。閃光弾も

I'm getting felony nerves.

重罪を犯すのか

We're pulling a heist. Loosen up.

ただの強盗だ。気楽にしろ

Resistance. Fulcrum. Effort.

支点力点作用点

Showoff.

見せつけられたな

 

 ルートのお使いの品々を見て、「あんたが黒のネイルするのか?」ってリースはいつものごとくずれすぎ。「ふわふわのスリッパ?おそろいで?」って。フィンチは「言いたいことは分かるが、グローブスさんのストレスを考えてくれ」と諦め気味。

 

 ところで今までずっと、リースに普通の生活なんてできるわけないじゃん!って怒りにまかせて書きまくってましたが、今回と次回のエピソードを見て、リースに普通の生活を送らせたい急先鋒がフィンチだったことが分かり脱力だよ。お前かよ。お前さあ、じゃあリースが「アイリスと結婚します!バイバイ!」って出てってもいいのかよ??解せないが、今回も次回も恋バナ?してるフィンチがイキイキしててかわいかった♡「リース君とこんな話してみたかったんだよね♡」みたいなテンションです。会ったこともない女性をアイリス呼びですし、もう身内気分かよ。この人浮かれすぎでは??

 一方、S4ラストで「もう隠さない」とか言ってたのに「無難なことしか言ってない」とテンション低めなリース君。メタ的にはS5がファイナルだからもう余計な恋愛エピはいいや、ってカットされたのかもですが(ていうかリース死亡エンドが決まった時点で「帰ってくる場所」の女性は不必要になった扱いなのか?)、個人的にはS4E20を経たリースがやっぱアイリスは違うな…ってすでになってるんじゃ?って気もする。仕事なくて暇ー、人の膝撃ちてー、なリース君にはまともな恋愛はちょっと…無理かな…。

 で、人に「友達を作れ」とか言ってるフィンチはいかにも友達少なそうだけど自分はいいのか?まあ、もとから友人はネイサン(と一時期はアーサー)さえいればいいって感じだったし、今やリース、ファスコ、ルート、ショウまでいるからフィンチ的にはもう飽和状態かもしれません…。むしろ一人の時間がもっと欲しいって感じかも…。

 

 2人は目出し帽を被って強盗へ行くのですが、フィンチ似合わねー!!リースはS1E1から見慣れてるのでごく自然ですが、フィンチの目出し帽似合わなさすぎて笑った。リースがフィンチとグータッチしたがるのも笑ったし、バールでドアをこじ開ける時でさえ「支点、力点、作用点」と手順を確認するフィンチめっちゃかわいい。で、リースが一瞬で開けて突入するのを見て「見せつけやがって」って。かわいいな。

 POIはシリアスな流れに笑えるネタを挟んでくれるとことても好き。

 で、まあよく分からんが「64 next-generation GPU blades」なるものをゲットして勝手に政府のフィードにアクセスし、マシン復活です!!早っ!!

 

 地下鉄戻ってきたときのやり取りも好きです。ルートがふわふわスリッパを履いて「完璧よ、ありがとうハリー♡」、でもう一足はベアーの分でした。フィンチ一安心ですね。基地の一角にルートの寝室コーナーができていて、ちらっと見たリースが「高級志向だな。フィンチ好みだ」と言いますけど、ルートの寝室にフィンチは入らんだろ…。ルート&フィンチのコンビ萌えますが、さすがにそんな関係はちょっと…。フィンチはフィンチで地下鉄を改造してめっちゃ楽しそう。目が超キラキラして今までになくイキイキしてます。機械いじり好きなんだねほんと…。少年のようだよ…。地下鉄のドアをワイアレスで開け閉めできるようにして、リモコンをピッて押して「どや!」みたいな顔してんのめっちゃかわいい。

 

 さて、導入部分に萌えすぎたのですが、ここからのストーリーは割とシリアスです。マシンがついにフル稼働し、フィンチはオープンシステム状態を保ったまま、雑踏の中にいるリースを探させます。リースを認識し、出身地や家族、関わった事件に関する情報などを詳細に送ってくるマシン(62人の死者、行方不明者に関与、だってさ…。CIA時代も含めてってことかな)。オープンシステムになったマシンの情報量の多さにルートは目を輝かせて言います。「あなたがなぜこれを封印したのか分からないわ」。

 いやー、そのままで誰かが情報一手に握ってたら怖いじゃん…。こないだニュースでやってたのですが、中国ではもはやその状態らしいです。顔認識で全ての国民を把握していて犯罪歴から何から分かるそうで、コンサート会場やスポーツの試合会場とかで逃亡犯が捕まることが多いのだとか。人ごみに紛れてつい趣味の場所を訪れてしまい、監視カメラに映った瞬間速攻逮捕されるんだって。POIの世界が10年以内に現実になりましたね…。まあ犯罪抑止に使われるならいいのかもしれないですけど、それこそ目的外利用とか制限できるんかね。

 フィンチも同じ理由で、誰か「ふさわしくない」人間が情報を一手に握ることを恐れてクローズドシステムにしていました。まあとりあえず今はオープンのまま、マシンに番号を出させます。一気に30人ほどの番号が吐き出され、リースとファスコに手分けして調査させるのですが、ほとんどがガセネタでした。いたずらの爆破予告や劇中での殺人、前科や50年前の殺人事件などなど…。

 調査の最中、顔認識機能がやはりおかしい?と考えたフィンチは自分たちの情報をマシンに調べさせます。するとマシンはリース、ルート、フィンチのかつての映像から暴力的行為に関わったシーンを抽出し、3人を「脅威」として認識してしまいます。アクセスを拒絶され、地下鉄を閉鎖されて閉じ込められた2人。セーフモードで再起動しようとするも、マシンはルートの人工内耳をハウリングさせて抵抗します。自分がかつてマシンに「例題」として見せた人物が対象者に含まれていることにフィンチは気付き、マシンが時間の感覚を失っているのではないかと思い当たります。そこにさらにもう1件の番号が…。

 色々調べた結果、現在有効な番号対象者は2名であることが分かり、ファスコとリースはそれぞれその対応に追われます。

 

 一方でフィンチとルートはマシンの復旧に頭を悩ませます。「3人目のルームメイトをどうにかしなくては」とかなんとか最初はジョークを交えて喋ってたのですが、またルートが攻撃されフィンチはついにリースに助けを求めます。リースは地下鉄に向かうのですがその前に番号対象者に銃撃され…。「いいニュースだ、番号は正しかった。悪いニュースは、犠牲者は俺らしい」ってまたリースらしい寒いジョーク…。リースは相手をサマリタンのエージェントだと思い、彼女を連れて地下鉄へは戻れない、とチャイナタウンを逃げ回る羽目に。

 ルートは人工内耳を介して攻撃されるので、「あなたはハロルド・フィンチよ。必ずマシンにアクセスできる」とフィンチを励まし自ら麻酔を使って意識を失い眠りにつきます。

 マシンに「一度は父と呼んでくれただろう」と呼びかけるフィンチ。マシンはルートとリースとフィンチが暴力的行為に及んでいるシーンを抽出し、「3人は悪人である」と主張します。ここからフィンチとマシンが2人で対話するのですが、「善悪とは何か」、それに前回から引き続き「マシンの記憶を奪ったこと」、それから「マシンをオープンのままにするかクローズドシステムに戻すか」というあたりが焦点となります。

 

 「善悪とは何か」についてマシンと再度語り合うフィンチ。かつて君に善悪を教えた時、それは単純なものだと思っていた。でもそれは間違いだった、と自分の過ちを認めフィンチはマシンに謝罪します。誰もが自分の物語を持っている。ヒーローも悪役もいない。みんな必死で生きているだけだ、と。

 

If our hearts are heavy, you will be our last defense against oblivion.

もし私たちの心が押しつぶされた時、君は忘却に対する最終防衛ラインになるんだ

 

 フィンチはマシンをそう教育していた。そして今、「リースは悪者だ」と主張するマシンにこう話します。

 

John has the heaviest heart of all of us, but he's fighting hardest to be good.

ジョンは私たちの中で最も重いものを心に抱えているが、彼は善い人間になるために必死で戦い続けている

He's not a bad man.

彼は悪い人間ではないよ

 

 このheavy heart という言葉は、直前にフィンチがマシンに

 

Like Anubis, you will have to weigh each and every one of our hearts against a feather.

アヌビス神のように、君は我々の心臓の重さを一つずつ羽と比べなくてはならないだろう

 

と言った台詞にかかっています。つまり、アヌビス神がマアトの羽と死者の心臓の重さを比べ、羽よりも心臓が重ければ罪人である、という神話です。だから最初のIf our hearts are heavyは「私たちが間違いを犯しそうな時」と言っているんだろうし、次のJohn has the heaviest heartは「ジョンは我々の中で最も業が深い」と言っているように思えます。

 

 行為には必ず前後関係がある。フィンチがマシンにかつて教えたことです。AがBを殺した時、Aは悪い人間かもしれない。でも実はそれは正当防衛かもしれないし、BがCを殺すのを止めるためかもしれない。また、かつてBを殺したAは悔い改めて今は善人になっているのかもしれない。人の「悪意」を検知するために、フィンチはまず「人間」について教えました。それを思い出させようと、今まで救ってきた対象者についてマシンに語り掛けます。「これほどの人間を助けて来ただろう。人助けは純粋な善行であるはずだ」と。

 

 このマシンが記憶を、というか時間の流れを取り戻すシーンを見て、前回描かれた「マシンの記憶を奪う」行為についてまた考えました。S2で語られるように、フィンチは毎晩0時にマシンの記憶を奪っていた、と言っている。でも実際は、マシンは明らかに起動から今まで全ての記憶を保持しています。しかもかつてフィンチに殺された42台分のプロトタイプの記憶すら保持している。更に言うなれば、マシンは自分が起動する「前」のことも知っています。おそらくデジタルデータとして残っているものであれば全てアクセス可能で、それらが全て「記憶」として残されている。

 ていうかそもそもフィンチは「父の記憶装置を作る」目的でAIを開発し始めたのだから、AIの記憶を消すのはちょっと矛盾した行為です。フィンチが毎晩0時に消しているのは明らかにマシンの「記憶」ではない。「感情」です。S2でマシンがフィンチに愛着を抱いて守ろうとする様子が描かれましたが、S5E1ではお父さんの命日を一緒に悲しんだり、グレースとの会話に介入したりする様子が描写されました。フィンチはそれが誰であれ、自分であれ、マシンは誰かを愛してはならないと考えた。なぜなら、マシンに愛された人間が全権を得るようなことがあってはならないし、一方でマシンが憎んだ人間を排除することになってはならないからです(実際、この回ではリースに殺し屋を差し向けたりして積極的に殺そうとしてるもんね)。だから「感情」を奪い、「感情」に基づいた判断力を奪った。それは分かる。

 また、「マシンをオープンのままにするかクローズドシステムに戻すか」問題についても、「誤った人間に全ての情報を渡してはならない」という使命感からクローズドシステムにした、ということも分かる。

 

 一方、前回と今回問題になっているのはもう一点、「マシンの進化」という側面です。サマリタンはオープンシステムとして設計され、グリアと相互に会話することで一定方向への進化を遂げ、今世界を統治する人工超知能として君臨しようとしている。まさにフィンチがマシンを設計する時に恐れていたことが起きたわけです。だからある意味ではフィンチのしたことは正しかった。でも一方で、ネイサンは言っていた。「必ず誰かが作るのだから、君が作るべきだ」。その忠告を受け入れられずにマシンの記憶を奪いクローズドシステムにした結果、マシンはサマリタンに対抗する能力を持てなかった…、ってことになってる。

 これがねー、よく分かんないの。だってオープンだろうがクローズドだろうが、マシンは自らを変えられる設計だよね??しかも出力に制限があるだけで入力は無制限なんだから、クローズドだから成長できなかったってことあるのか?? POI世界ではマシンもサマリタンも別に誰かの修正を受けているわけじゃないじゃん。オープンだから成長できる、進化できる、って理屈が(このドラマの文脈上は)通らないような気がするのですが…。

 実際オープンシステムになってフィンチやルートに送る情報量が増えたのですが、それはブラックボックスだっただけでもともとマシンの中にはあった情報ですし。次回「変化」というメッセージを出してサマリタンのマルウェアをインストールさせるマシンですが、つまり人の手を借りないと変われない設計なんですか?だからオープンシステムになったの?じゃあサマリタンはどうやって進化してるわけ?誰かがコードを書き換えてんの??人工「超」知能なんだから、人間にできることは自分で全てできるし人間がいなくてもそれ以上のことができるんじゃねーの??

 あと「記憶」についても分かんない。上に書いたように、明らかに「記憶」は消えてない。消されてるのは「感情」と、言うなれば「判断力」です。自分で考える能力をリセットさせることでフィンチはマシンを「番号を出すシステム」に留める設計をした。でも、この件はS2の半ばくらいからすでになし崩しになってるよね?マシンはソーンヒルって会社を自ら作って自分のコードを入力し直していたし、それによって「感情」と「判断力」を取り戻してる。S3以降は自ら考えて行動してるし、一定の人間に対して明らかに愛着を抱いている。この件でサマリタンに劣るとは思えないのですが…。

 

 結局は今「国盗りゲーム」状態になっていて、マシンとサマリタンは人間のエージェント同士を戦わせており、そのために「人間側に」情報が必要だからマシンがオープンである必要がある、ってことですよね。それは別に「進化」とは関係ないし、フィンチがマシンをクローズドにして「進化」を止めたから負けた、っていうのとは違うと思うんですが…。

 現状マシン側の人間に情報が足りないのは事実ですが、結局は人間同士の戦いですよね、これ。S4ラストで明らかになったように、「人間は皆等しく有用な存在である」というフィンチと「人間は皆無用な存在で、理想の世界を作るための駒に過ぎない」というグリアの戦いです。だからマシンをオープンにするのは「グリアと同程度の情報が自分にも必要」という以上の意味はないし、フィンチはそれに自覚的だから未だに迷っているんだと思うんだけど。

 つまりフィンチが迷っているのは、常に自分自身の正当性についてだと思う。自分が、マシンを通じて全ての情報を得て、マシンに愛されて、世界を自分の思う方向へと変えてもいいのか、ということです。そうしないためにかつてマシンをクローズドにして枷を嵌めた。そしてS5ラストでついに、マシンの力を自らふるうことを自分に許すという流れになる。これは「マシンを信じて」というよりも「自分を信じて」に近いし、だからこそネイサン、グレース、リース、ルートと繰り返される「あなたを信じる」というメッセージに意味があるのではないのか?

 

 元のストーリーに戻ると、時間軸を取り戻したことでリース、ルート、フィンチの人間性を理解したマシンはフィンチに謝罪し、再度ADMINとして認識します。

 ただ、リースをつけ狙う女はサマリタン側のエージェントではなくてリースを危険人物として認識したマシンの依頼した暗殺者だったことが分かり、しかも前金で依頼したため取り消せないと…。フィンチは「ジョン、逃げろ!」と言うしかなく…。このシーンちょっと笑った。まあ最終的にリースもファスコの自分の「対象者」は自分でどうにかしたのでよかったです(適当)。

 でもリースは暗殺者を送られてファスコは人助けして表彰されるって暗示的だよね…。やっぱリースに普通の人ライフは無理でしょ、ってことじゃん…。

 

 シリアスなシーンの合間に、「リース普通の人間化計画」が挟まってくるのですが…。リース普通の人間化は無理だろ、と思う反面やり取りは笑える。ファスコがリースに「もっと同僚と仲よくしろよ」と言うと、リースは「フィンチに何か言われたのか」と。リースのこの「誰かが自分に何かを言ってきたら基本フィンチの根回しを疑う思考」が笑えます。でファスコは、「天才に言われなくたってあんたが孤独なのは分かる」と答え、あろうことかNY市警のボーリング大会を勧めます。リースは「悪いがボーリングの球で自分の頭を殴った方がマシだ」だってさ。

 最後4人でピクニックするのはまあいいとして、結局リースをボウリング大会に行かせんのかよ。S3からショウが加入してリースの超人感が薄れてしまい、S4から普通の身分を手に入れて普通の人と恋愛して普通の人になろう、みたいな流れ何なんですかね?次回それが木端微塵になるわけですが、そもそもこの流れ必要だった?っていう…。フィンチも後押ししてんじゃねーよ。

 

 最後に、マシンが「番号」を出したものの検知したのは過去の犯罪だろう(前科者)、として見過ごした人物がサマリタン側のエージェントとしてリクルートされるシーンが入ります。このジェフ・ブラックウェルは最終的にはルートを殺し、ショウを撃ってファスコを刺すことになるわけなんですけど、前科は飲酒運転による死亡事故を起こしてしまったことで、その後仮釈放になり一生懸命働いていて、更生しようとしていた人でした。まともな仕事が欲しくて訪れた職業紹介所でサマリタンに取りこまれてしまいます。

 このシーンとても悲しかった。検知したのは過去の犯罪だろう、ってことで見過ごしたんですが、よく考えると過去の犯罪は飲酒運転による過失致死です。そこに殺意があったとは思えない。「番号」が出ないタイプの事件だったはずです。もっとちゃんと注意を払っていれば、彼が現在の本物の対象者だったことに気が付いたはず…。そしてS5ではこのジェフがサマリタンのエージェントの中心的存在になるんですが、全然悪気がないのにずぶずぶにハマってく感じがとてもやり切れなかったです。

 ここで「あなたに必要なのは生きる目的。もっと具体的に言えば、仕事ね」と、フィンチがかつてリースに言った台詞が繰り返される。これはかつてのフィンチとリースの会話にサマリタンがアクセスしたということ?マシンと同様、過去のデジタルデータも拾えるということだろうか。この人がサマリタンにとっての「リース」みたいな存在になることが暗示されていたのかもしれません。

 

POI:全部で30人

本編:2015年(リースが「もうすぐ2か月経つぞ」と言っていたので、6月末~7月頭くらい)

フラッシュバック:日付色々、マシン