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04x13 - M.I.A. 感想

 POI感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

 MIAは"Missing in action"の略語で「最近会っていない人」という意味だそうです。 もともとは戦争で消息が分からなくなった軍人のことを指す言葉でしたが、今ではスラングになっていて、 I'm sorry I've been MIA. みたいに使われるのだとか。POIでもS1のオープニングシークエンスからずっと、リースにM.I.A.って表示されてました(フィンチはUNKNOWN)。

 

 今回は対象者が複数の「失踪者」に絡んでいる、というファスコ&シルヴァ刑事の事件と、「失踪」したショウを追うリース&ルートの事件が同時に展開されます。といっても別に2つの事件が交わる!とかはないですが…。どちらの事件もジーニアスが情報をいい感じにゲットしてサポートしてくれます♡

 

 リース&ルートが本編なのは分かってるけど、ファスコ&シルヴァの方が面白かったなー。なんか、パトリシア・コーンウェルの初期の小説みたいだった。

 ストーリーはめちゃくちゃ単純で、人畜無害に見えた対象者が加害者であることが分かり…、っていう。彼のクレジットカード履歴を照会するとNYでカードが使われている時期とNYで失踪者が出る時期が一致している。フィンチのサポートで対象者が殺し屋であること、ギャング絡みの犯罪の目撃者が消されていることが分かります。誰が狙われているか突き止め、一度は取り押さえるのですがファスコのミスで逃げられてしまいます。シルヴァは単独行動に出て隠れ家を探り、死体処理場に使われていることを突き止めるのですがそこで襲われてしまう。ファスコが駆けつけて命は助かるのですが犯人には逃げられ、(令状がないので)家宅侵入罪に問われた上におそらく証拠も隠滅される。そこで2人は犯人を罠にかけるのですが、シルヴァは自宅で犯人を射殺することになる。シルヴァはトラウマを抱えることになった上におそらくもうあの家には住めないでしょう。落ち込むシルヴァをファスコが「いい警官になる」と励まします。

 

 このストーリーラインは単純明快でオチもはっきりしていて、S1S2みたいに「対象者は被害者か加害者か?」「誰が狙われるのか?」「ギャング絡みの抗争」などをもっと膨らませたらもっといいストーリーが作れそうだし、シルヴァが自宅で犯人を射殺する、ってとこももっと掘り下げればいい心理描写ができたと思うのに残念だなー。でも、シルヴァはリースと組むよりもファスコと組んだ方が警察モノとして面白かったので、それはそれでいいとします。

 パトリシア・コーンウェルのケイ・スカーペッタシリーズの第一作目『検屍官』を思い出すよね。最後の

 

 新聞は読まなかった。とても読む気にならなかったのだ。昨日の夕刊の見出しだけで十分だった。玄関口に投げ入れられた新聞の見出しをちらっと見ただけで、急いでそれをごみ箱に押し込んだ。

 

 刑事、絞殺犯を射殺

 検屍局長の寝室で

 

 結構な見出しだ。これでは午前二時に私の寝室にいたのが、犯人かマリーノかわからないではないか。なんてことだろう。

 

というシーン思い出してしまいました。シルヴァとファスコのコンビ、とてもよかったです。

 

 ファスコがいい味出してて、フィンチから電話がかかってきた時「お袋からだ」とシルヴァに断り、「なんだ母さん」って応答して「母さんはないだろう」って言われるシーン笑った。フィンチはチームのママが公式化しておる…。で通話を終えてシルヴァに「対象者が分かった」とか言ってて、お母さんに対象者教えてもらったのかよ!ってなりましたよね、ほんと。ファスコ大好き。

 

 リース&ルートの方は相変わらず壮大すぎるサマリタン編でしかも見つかるはずのないショウを追う、という何ともオチ無しなストーリーです。

 前回仕掛けたワームから得られたわずかな手がかりを追って辿り着いた町メイプルタウンでは、ここ半年で不思議なことが次々に起きていた。かつての町長は自殺、町議会議員だった外科医は医療ミスをでっち上げられ職を追われ、富豪の息子は一文無しに。一方で問題だらけの人物が警察署長になり、ホームレスが宝くじに高額当選、別の街から来た見知らぬ女性(トンプソン)が工場を作り、町の多くがそこで働いています。

 フィンチは悟る。「そこはサマリタンの実験場だ」と。サマリタンはマシンと違って教育を受けていないので、こうやって実験場を作って人間の挙動を観察しているのだと。小2の自由研究「アリの観察」みたいな感じですね。こんな倫理観のAIの「理想の世界」に一体何を夢見られるのか全く分かりませんが…。

 サマリタンの起動が4月16日で、この回がおそらく12月頭くらいなので、サマリタンは6月頃からメイプルタウンを実験場にし始めたようです。

 

 ショウにつながりそうな手がかりはわずかで、証券取引所からあの後冷蔵車が出発し、メイプルタウンに到着してそこを出ていないことしか分かっていません。2人は冷蔵車を発見するのですが、そこには頭部外科手術用のドリルと血のついたガーゼが残されていました。ショウは頭部手術を受けて隔離されていると考えた2人はさらにその行方を追います。

 ルートの新しい身分はNY市警。その身分で聞き込みをします。ここはマシンチームの秘密通信圏外なので、リースはここでは身分を名乗りません。ルートは身分が仮のものなのでやりたい放題です。セクハラしてきた警察署長を拉致監禁、リースと一緒にトンプソンも拉致監禁。激しい拷問でショウの行方を聞き出そうとします。

 

 前回のコントロールの拷問では、リースがまず聞く→ルートに交代、スタンガンで拷問→フィンチが止め、コントロールからは情報を得られないことを知る、という流れでしたが、今回はリースがまず聞く→激しい拷問をフィンチが拒否、電話越しに質問→ルートに交代、ドリルで手に穴をあける、とルートのサイコパスぶりが加速してます。

 まあ、ルートはもともとこういう人だったよね…。めっちゃ美人なのにキモいという…。ちょっと忘れてたよね。キモいルートが久々に見られて正直嬉しい気持ちもあります(笑)。リースは拷問はしないけど、ルートを止めもしない。多分こういう状況はカーラと一緒にいて慣れっこだし、もし失踪したのがフィンチだったらルートと同じことをするだろう。

 

 しかしながら、この辺りどうも白けちゃって無理でした。そもそも秘密通信不能なエリアで話してる以上通話はサマリタンに筒抜けなんですよね?なのに「ルート」あるいは「グローブスさん」とか「サマンサ」「リース」「フィンチ」って普通に呼び合ってるし、敵がどうこうって喋りまくってるし、警察署長を拉致監禁とか目立ちすぎ。拷問されてるトンプソンさんはサマリタンに勝手にペースメーカー入れられてるはずで多分逆らったら即殺されるから口をつぐんでるんですが、喋っても工場に連れて行っても立ち入り禁止エリアに侵入しても殺されもしないし(私がサマリタンなら、リースとルートに捕まった時点で即座に心停止させるね)、設定がぬるすぎてもはやついていけない。

 マイクロチップがどうこうとか脳に埋め込む電極がどうこうとか展開もありがちなSFホラーだし、しかもその設定全然活きてないし(まあ、活かしてもゾンビものみたいになるだけですけど)、あと、当然のように「サマリタンがやった…!」みたいになってるけどさ、人にペースメーカー勝手に埋め込んだのも人の脳味噌に勝手に電極付けたのも結局は人間じゃん…。一体誰がどんな動機でそんなことすんの??ご都合展開が続いているうえにショウが見つかるはずがないために全体が茶番と化していて、ルートの鬼気迫る拷問も「ハイハイ」って感じになっちゃってほんとダメでした。

 結局ルートの気持ちの落としどころをどこかに持ってくためにこういう回持ってきたんでしょ??みたいなさぁ。あくまで止めようとするフィンチと対立して一度チームを去るという出来レース感がさぁ…。前回と今回の2エピソードにおけるショウの追跡劇は全然いいと思えないし、ショウは死んでいると全員が思い込んでる方がマシだったと思います。

 ルートの拷問シーンも、必死感出すのはいいけど、結局前回も今回も拷問反対派でこっそり情報探ってたフィンチの方が有力な情報得てて、人を痛めつければ痛めつけるほど徒労感が強いというか、パフォーマンス感が強いというか…。こんなに必死なの!って言いたいだけやろみたいな。今回ルートはトンプソンから無理矢理情報を得ますが、結局フィンチの調査で、冷蔵車で見つかった血液の持ち主がショウではないことが分かります。頭部手術を受けていた女性が工場で見つかりますが、それは当然ショウではなかった。

 手がかりは行き止まりで、ショウがどこにいるのかは全く掴めません。最後はマシンまでがルートに「STOP」とメッセージを寄越してルートは「さよなら、ハロルド」と姿を消してしまいます。

 冷静に考えれば、「死んでます」じゃなくて「追うのをやめなさい」ってことは生きてることを示唆してるようにも思えますがだからといって何ができるわけでもなく…。そして今までマシンを盲目的に崇拝していたルートが初めてその意思に背いて姿を消しました。まーこれは仕方ないかな。

 

 ラストのリースとフィンチの会話好きでした。

 

Dr. Enright is keeping an eye on Delia at the safe house.

エンライト先生がセーフハウスでデリアを診てくれている

I've prepared a cover for her once she's healed.

私は彼女が治癒した時に備えてカバーIDを準備した

She'll have to hide.

彼女は隠れる必要があるだろう

What about Maple?

メープルはどうなってる?

The factory has closed.

工場は閉鎖された

Samaritan is pulling out.

サマリタンは撤退している

Maple may fall apart.

メープルはばらばらになるかもしれない

The people there will have to learn to fend for themselves again.

そこの人々は再び自分たちの面倒を自分たちでみることを学ぶ必要があるだろう

I sent you for nothing. I'm sorry.

君たちに無駄骨を折らせた。すまなかった

We saved people, Finch.

俺たちは人々を救った、フィンチ

Shaw would be proud.

ショウも分かってくれる

And she'd understand what we have to do.

それに彼女は俺たちがすべきことを分かってる

Root might not, though.

だが、ルートはそうじゃないだろうな

Good luck.

頼んだぞ

 

 マディ先生にはまたお世話になっているようです。

 全然どうでもいいけどルートがショウにLOVEなのをリースもフィンチもごく当然のように受け止めてたの萌えたよ。あとルーショウは公式なのに、S2冒頭並びにS2S3それぞれシーズンラストのリースがフィンチを追うシーンもルートがショウを追うのと同じくらいの熱量で描いてくださってどうもありがとうございましたおいしくいただきました。

 

 あとは、なんだろうな。リースが女性をお姫様抱っこして救出するシーン、緊迫した状況なのにちょっとときめいた。意識ない人をお姫様抱っこして歩き回るなんて、どれだけ力持ちなの…?

 

 ところでメイプルタウンの方、よく分からんマイクロチップ的なものとか追跡装置とか脳に埋め込む何かみたいなのって、これでサマリタンに人間が分析されたり操られたりするシーンあった??サマリタンのエージェントは実はみんなこれを埋め込まれていて操られている!自分の意思ではない!助けなくては!みたいなありがち設定もなかった気がするし、戻ってきたショウがマイクロチップで追跡されていて…みたいな(当然やるだろっていう)ストーリー展開もなかったような…。

 ほんとこの「ショウを追う」2エピソード必要あったかなぁ、って思ってしまいますが、ショウはグリアに密かに拾われていて生きています。カーラ様かよ。カーラ様と被ってんだよ、ほんと。まあカーラ様最後まで有能だったからグリアは「また使える美女はっけーん☆」とか思ったんか??これもご都合主義展開といえばそうなんですが、グリアの趣味が美女集めと思えば、まあ…。性癖には逆らえないよね…。いや、だからといって犯罪はよくないよ。

 

 ほんと割り切れないのがこの2エピソードでのフィンチの立ち位置なんですけど、多分だけど、フィンチはこの時、ショウは死んでいると思っているか、生きていることを諦めてなくても、かなりデシマの中枢に取りこまれていると思っているんだと思うんですよね。だから、生きていても現時点で取り戻せる見込みはかなり薄いと。追えば確実にサマリタンに見つかる。この割り切りを冷たいと思うかやむを得ないと思うかは人によると思いますが、メタ的に他に選択肢がなかったことも事実で、どうしろっちゅうねん、ってなりましたよほんと。

 だけどさ、フィンチはカーターやショウが退場した時も心の痛みを押し隠して冷静に振舞っていましたが(痛んでないわけじゃないんだよ)、もし生死不明がグレースだったらフィンチも拷問する(あるいはさせる)かもなーって思ってしまった。その辺が、ちょっと微妙。正直S3E21の「全員殺せ」発言にはフィンチの人格の一貫性を感じなかったのですが、そういうイレギュラーがあっても仕方ない状況だった??だったらリースがクインとシモンズを殺しても、ルートがトンプソンを拷問してもよくない??とか思っちゃう反面、リースが人を殺したりルートが誰かを拷問したりするのは別にイレギュラーではないかぁ。普段はストッパーとして機能しているリーダーがキレた、という極限状態を示していたのかもしれないけど、その極限状態というのがチームの仲間の危機じゃなくて自分の恋人の危機かよ、っていうとこもまた微妙だったし。今まで思ってたけど書いていなかったことをここでぐちぐちと書く(笑)。

 

 でもなー、チームの仲間が危機に陥ると誰かが暴走するから止めなきゃない、ってのはありますよね。カーターの時はリース、ショウの時はルートだったし。フィンチはリースが死にかけの時は毎回割と取り乱してるしルートの死がきっかけでブチ切れモードに突入したので、つまり本当は自分もブチ切れたかったんだけど他の人がブチ切れてるからストッパーに回ってたのかも、と思うことで自分の気持ちを納得させときます。

 

POI:アルバート・ワイス(加害者)

本編:2014年

E7が11月11日でE14が12月15日あたりなので、E8~E13はこの1か月の間

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