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04x22 - YHWH 感想

 POI感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

 前回の続きで、コントロールの追跡編、ギャング編、サマリタン編ですね。全てが同時に進行しながら、5月6日の「粛清」の日を迎える、という流れ。

 

 コントロール編は、前回「5月6日に何かが起こる」ことを突き止めたあたりで終わってました。政府内の自分に忠実な部下のところに、自分の名前で覚えのないメールが送られていたことに気付いたコントロールは、グライスと共に捜索に向かいます。そこには大量の爆弾の痕跡が。確実にテロが起こると判断したコントロールはロス議員の携帯をペアリングしてグリアに会い、テロを起こす場所を聞き出そうとします。コントロールはグリアがサマリタンの影響力を更に強化するため、テロを見過ごそうとしている(もしくはわざと起こそうとしている)と考えていた。実際、それはS3ラストでヴィジランスを利用してグリアが使った手です。

 コントロールのしていることは全体的に的外れで、やり方も旧態依然としています。でも、サマリタンに対抗するためにマシンを再起動しようとしたり、(真相は知らないながらも)デシマがサマリタンのために何をするかそのやり口を見抜いたり、最後はグリアに迫るなど、一連の行動がサマリタンに「脅威」と見なされ、「粛清」の対象となります。サマリタンは「これはテロではなく、テストだった」と最後に言います。わずかな徴候を見逃さず、自分に迫ることのできる人間をピックアップして排除するためのテストだろうか。コントロールだけでなく彼女に忠実だった部下や、たびたびサマリタンに疑問を呈し「前のリサーチ(マシン)が懐かしい」と話していたグライスも同様に排除されます。

 コントロールは最初登場した時は悪役極まりなかったのですが、S3ラストでだいぶ印象が変わりました。「国家のためなら自分の手を汚すこともいとわない、文字通り何でもする」という信念を持った、清濁併せ吞むキャラクターだったと思います。でもグリアがかつて信じたように、すでに出来事は「国家」の枠を超えつつある。人工超知能が国境を超えて世界を支配しようとしている、その流れの中ではコントロールさえも小物にすぎないということでしょうか。S5半ばではアメリカ大統領でさえも「無用」番号として出力されるなど、サマリタンの台頭によって元々の「テロ感知システム」という目的が全く形骸化していることが分かります。今回、実際政府関係者が大量に殺されてますからね…。言うならテロ事件ですよね、まさに。「国家を守る」ことに全てを捧げてきたコントロールの死と共に、今までの「無用」「有用」どころか「国家」という境界すら取り払われた新時代が訪れることが示唆されて終わります。

 それにしても、コントロールは「あなたは自分の頭で考えるから」みたいな理由で今回グライスに頼りましたが、同じような理由でコールのことは殺したじゃん…。とんだダブスタですわ。フィンチがS5E10でFBIの男に「あなた方のルールはいつも都合よく変えられるのだ」って言ったのまさにそうだし、そういう意味でも政府の人間っぽかったのかもな。

 

 ギャング編は、あくまでリースとフィンチを自陣営に取り込もうとするドミニクのシーンから始まります。簡単に殺せるはずだったイライアスが守られてきたのはこの2人のためだとドミニクは思っているし、イライアスが獄中にいた時やその後セーフハウスに潜っていた時に実権を失わなかったのもフィンチの情報のおかげだと思い込んでいる。でまあ当然誰もフィンチのことは話さないんですが、ついに殺されそうになったファスコをハーパーが逃がし、それがドミニクにバレて捕まります。なんでハーパー殺されなかったんだろうね?

 ファスコが逃げ出したので、警察がやって来るのは時間の問題。焦ったドミニクはついに「フィンチに電話をかけなければイライアスとハーパーを殺す」とリースに迫ります。やむなく電話をかけるリース。

 フィンチはずっとリースと連絡が取れないことを気にしていた。電話がかかってきたとき、はっとした目で端末を見ます。リースからの電話を待ちわびていたからです。そして彼にしては不用心に、「リース君、心配していたよ」と電話に出てしまう。電話口にいたのはドミニクだった。

 ドミニクは「ライリーはやっぱり偽名だったな」と言いますけど、リースの方がコードネームだとなぜ思わないのだろうか…。普通に考えて偽名で警察官なんてできんやろ。フィンチはドミニクに「協力しなければリースを殺す。15分以内に一人で来い」と言われます。

 

The Machine will have to wait. I have to go help John.

マシンには待ってもらう。私はジョンを助けに行かなければ

Harold, the Machine is the priority here.

ハロルド、今一番優先すべきはマシンよ

No, people are the priority here, Ms. Groves.

いや、人々が常に優先だよ、グローブスさん

The Machine's only reason for existing is to save them.

マシンが存在しているただ一つの理由は人々を助けるためだ

I'm not gonna sacrifice John to help rescue an AI that on its best days is cryptic and withholding, and on its worst, borderline homicidal.

良い時ですら不可解で情報を出し惜しみし、悪い時は殺人を指示しさえするAIを助けるために私はジョンを犠牲にしたりはしない

She's not perfect, Harold. But She's the only chance we've got.

彼女は完璧じゃないわ、ハロルド。でも彼女は私たちのたった一つの希望なの

We let Sameen slip away. So now we're supposed to let John go, too?

私たちはサミーンを救えなかった。今、ジョンも見捨てろと言うのか?

I don't want to sacrifice Sameen, either.

私はサミーンだって犠牲にしたりしない

But if the Machine dies, the world we wake up in tomorrow is one none of us wants to see.

でももしマシンが死ねば、私たちが明日目覚めた時の世界は私たちの誰も見たくないようなものになるわ

She needs John alive as much as we do.

彼女は私たちと同じくらい、ジョンに生きてほしいと思ってる

She won't let him down. Come on.

彼女は彼を見捨てはしない。行くわよ

 

 フィンチにとってマシンは常に「システム」で「ツール」にすぎない。そう思い込もうとしているだけかもしれません。でも、「常に人命が優先」とマシンを教育してきたフィンチが人間よりマシンを選ぶことはないだろう。特に、リースはフィンチにとって大切な人です。何を置いても助け出そうとします。

 このシーン好きでした。マシンが死にかけている時ですらリースを選ぶフィンチ。マシンに対する屈折した感情がここでも顔を出します。開発中からずっと悩み続けて来て、前回あの病棟で「私にとって人間は取り換え可能な存在ではない」と言われた今も完全には信じることができない。このシーンがあるからこの回のラストが美しいんだろうと思う。

 結局ルートの説得でフィンチはリースのもとに駆け付けるのを諦めます。

 

 一方フィンチと連絡が取れたことで、ドミニクは「用済みだ」とハーパーとイライアスを殺そうとします。その時急にファックスが届き、「読み上げろ」と部下に命令。

 

"Sharp right leg. Left knee, ACL. Tactical blade. Glass jaw."

右足に鋭く。左の膝。前十字靭帯。タクティカルブレード(ナイフ)。顎をノックアウトしろ

 

 一見全く意味不明のメッセージは、マシンからリースへの指示だった。Can you hear me? に対して Hell Yes と答え、ゴッド・モードに突入するリース。ゴッド・モードはリースが圧倒的にかっこいいですね!我々はこれが見たくてPOIを見ていると言っても過言ではないでしょう。ドミニクの部下を次々と膝撃ちしてなぎ倒します。ドミニク逮捕したファスコもかっこいいー!!そんでファスコとリースが握手するシーンも胸熱です。リースはフィンチのもとへ向かい、逮捕したドミニクとイライアスの護送車にはファスコが乗ることに。

 

 このギャング関連のエピソードは途中までハッピーエンド風なんですけど、この後も色々不穏なことになります。途中で護送車にイライアスの部下が突っ込んできてイライアスを奪還するのですが、ドミニクがイライアスの部下を射殺しイライアスも殺そうとします(なんで銃あったんだっけ?)。それを止めようとドミニクに銃を向けるファスコ。あくまで殺し合いを止めようとしたのですが、その時急に近くのビルの屋上からライフルで狙撃され、ドミニクは死亡、イライアスは生死不明に…。

 これはどうもサマリタンの「粛清」の一環だったようなのですが、なんだかよく分からん。「反社会的勢力は排除する」とか言ってますが、ギャングは全員殺されてんの??じゃあS5世界ではギャング的な人はいないわけ?それとも影響力の強いボスだけをとりあえず殺した?日本で言うとヤクザの組長は殺されたとして、暴力団構成員や半グレ、ただの不良とかはどうなんでしょうね?今後サマリタンとの戦い編が激化するにあたってギャング抗争編を無理矢理終結させようとして適当に幕引きしたとしか思えん流れですが…。何でファスコは殺されなかったんだ?と思ったけど、S5冒頭で分かるのですが、この事態に適当に理由をつけるために生かされていたようです。まあとりあえずサマリタンの「粛清」の対象には反社会的勢力も含まれるらしいと分かったあたりでこのエピソードは終わる。このオチは…、今まで何だったんだよ感ありますよほんと。

 

 でも、この件でマシンとサマリタンの違いがまた浮き彫りになったのかなって思った。S1ではギャング関係のエピソードも多くて、マシンはイライアスや他のマフィアのドンの番号を出してきたりして、彼らを救うたびにリースは「こいつのせいでこの後どれほど番号が出るか」「ゴミにゴミを片付けさせろ」って怒ってた。マシンは人をいい人とか悪い人とか決めつけません。全員の番号を出してくる。それにどう対処するか決めるのは人間で、フィンチは相手が誰であれ助けようとしてきた。ギャングのボスが誰かにとっては大切な存在だったりとか、そういう描かれ方もしてきた。最終的にイライアスは仲間になって最後はチームを助けてくれます。絶対的な悪など存在するのだろうか、という問いかけがある。

 一方サマリタンは、反社会勢力とみれば即座に処刑することが分かります。まあもしかしたら人が心の奥底で「こんな人間は生きていても…」って思ってしまうような存在はいるのかもしれませんが、しかしながら、ギャングだろうがAI開発者だろうがサマリタンが気に入らなければ同じように即処刑なので、「いい人」でいれば助かるという保証もなく、こういう事態になっちゃうと明日は我が身感の方が強いですからね…。スターリンの大粛清を彷彿とさせる展開です。

 

 で、一方リースは何をしてるかって言うとアイリスと警察署の隅っこでこそこそ喋ってます。アイリスとのエピソード、ずっと腹立ってたんですけどS4E20を見て以来どうでもよくなってしまった。だってE18でくっついてから一度も出てない上にE20でリースとカーターの絆と愛を再確認し、リースの心も結局カーターが救ってくれたわけだし、カーターとの会話の中で新しい恋の話は全くなかったし、S5E3で別れるまでE1E2では一度も出てこないし、E2では「何度かデートした。無難なことしか話してない」とか言われてる程度だし、リースにとってこの人別に特別な存在じゃないな…、って感じたので。リースの内面を描くための重要キャラだと思ってたから、それにしてはどうなの??って腹立ってたけど、結果的にはどうでもいいモブでした。このシーンも「戻ったら全て正直に話す」とは言ったけど、その実適当に追い払ったようにしか見えないしさ…。「Am I going to lose you? (本当に戻ってくるの?って意味ですが、直訳すると「私はあなたを失おうとしているの?」)」と聞くアイリスに「気をつけろ」としか返さないし、キスもしなかった。結局E20を経て、リース自身にも自分にとって大切なものが何なのかはっきりしたってことじゃないの??

 これがカーターだったら、って妄想してしまいました。「あたしも一緒に戦う」って言うカーターに、「君には息子がいる。それに君は本物の警官だ。ここでNY市民のために戦ってくれ」と答えるリース。「でも…」とあくまで一緒に戦いたいカーターに、「君にはここにいてほしい。ここで待っていてほしい。君が待っているから俺は生きて帰りたいと思える」とリースは答える。「必ず帰ってくるんでしょうね?」と聞かれたら、「約束する。君も無事でいてくれ」って返してキスくらいしたんじゃないかなー。はあ。妄想劇場でしたが、どうしてもリース恋愛エンドしたいんだったらこっちのが絶対よかったなー(自画自賛)。まあ、この流れではあまりにもベタすぎる問題ありますけど…。

 まあいいや、とりあえずリースはアイリスを置いてフィンチのもとに駆け付けます。

 

 vsサマリタン編は、フィンチとゴッド・モードのルートがマシンを救うために必要なものを集めてマンハッタンを駆け回ります(笑)。最初は振動充電バッテリー搭載の暗視ゴーグルを奪いにどっかのマンションのペントハウスへ、次にケイレブのオフィスへ。

 

I'm sure there's a good reason why Shannon, here, or whatever your name really is, broke into a secure area and tried to access my compression algorithm.

なぜシャノンが、まあ君の本当の名前が何であれ、ここでセキュリティエリアに侵入し、僕の圧縮アルゴリズムにアクセスしようとしているのか、それには十分な理由があると確信してるよ

Look, I know this sounds insane, but I'm trying to save the world, and your compression algorithm plays a small but crucial part of doing that.

ねえ、狂っているように聞こえるだろうけど、私は世界を救おうとしているの。そしてあなたの圧縮アルゴリズムは、そのことにとって小さいけれど肝心なパートを果たすのよ

I just, I can't think why I should trust you.

なぜ君を信じなくてはならないか考えることもできないよ

Then don't. Trust him.

じゃあ信じないで。彼を信じて

Hello, Caleb.

やあ、ケイレブ

Mr. Swift.

スウィフト先生

What's going on here?

何が起きているんです?

Let me just take a moment to say how proud I am of everything you've done with your life since I knew you as a student.

まずは言わせてほしい。君が生徒だった時から、君が成し遂げてきた全てを私がどれほど誇りに思っているか

And I truly wish there were time here for a more appropriate and meaningful reunion, but right now, I have to try to explain as best I can why we need your algorithm.

もっと適切で有意義な再会の時間を持ちたかったと心から願っているが、今はとりあえず、私たちが君のアルゴリズムを必要としている理由を可能な限り説明させてほしい

Hold on, Mr. Swift.

待ってください、スウィフト先生

Anything you need, you can have. No explanation necessary.

あなたが必要なものなら何でも差し上げます。説明はいらない

You saved my life.

あなたは私の命を救ってくれた

Thank you.

ありがとう

 

 このシーンめちゃくちゃ感動した。ケイレブ君、こんなに立派になったのに、ほんの数日しか一緒にいなかったフィンチのことをずっと尊敬していてくれたんですね。会社の会議室にもπの絵が飾ってあったし、コードは兄に捧げたものでも、きっと会社の原点はスウィフト先生だったんだろう。「説明はいらない、持って行ってください」って差し出してくれたケイレブ君の気持ちにめちゃくちゃ感動しました。全部終わった後、フィンチはグレースだけじゃなくてケイレブ君のところにも話に行ってほしいと思った。きっとよい友人になれるだろう。

 ケイレブから圧縮アルゴリズムとRAMチップを受け取り、警察の車を奪った2人は大量の氷を買いに行きます。積み込んだところでサマリタンのエージェントから銃撃されます。このために防弾車両を強奪したのか…。で、ブルックリンの変電所に着いたところでリースと合流。「本当によかった」と言うフィンチかわいい。そこに「ハロルド…アドミンさん?」と宅配業者から大量のノートPCが届けられます。ADMINさん笑った。鳥の名前じゃないんだね(笑)。それを受け取り、氷を変電所に運んでいる最中にまた銃撃。3人は完全に変電所内に閉じ込められます。

 

 なぜマシンが自分たちをここへ誘導したのか分からないフィンチ。明らかにマシン本体を設置できるような場所はここにはない。集めたものの理由も分からない。ルートはマシンの指示に従って、頑丈なアタッシュケース内にRAMチップを並べています。

 

Looks like a computer I made as a teenager.

私が10代の頃に作ったコンピューターみたいだな

 

っていうフィンチの台詞、こんな緊迫した状況なのにちょっとおかしかった。RAMから自作ですよね…。10代か…。70年代?

 フィンチはそこにあった「ソーンヒル」のボックスを見て気付きます。同じボックスは外にもあった。同じものはおそらくアメリカ全土に存在する。マシンは国の電力系統に直接自分自身をアップロードし、送電線から電力を得てアメリカ全土に遍在していた。サマリタンはそれを知り、アメリカ西部から電力サージを起こしてNYにマシンを追い詰めていた。追い詰められて最後に辿り着く場所がこの変電所だったのです。

 フィンチとルートはマシンのコアシステムだけでも救い出そうとします。氷で冷やした15台のノートPCにケイレブの圧縮アルゴリズムをインストールし、圧縮したマシンを振動式バッテリーを搭載したアタッシュケース内のRAMに保存し、安全な場所に持ち帰る作戦です。「こんなことは今までやったことがない。安全に圧縮して再解凍できるかどうか…。できなければ終わりだ」というやや説明くさいフィンチの台詞が挟まり(だってやらないって選択肢はないですからね…)、結局実行することに。

 外には30人を超える刺客が3人を取り囲んでいます。「全てを救い出せるわけではない。再構築に必要な分だけ。もしも…」と言葉を濁すフィンチ。「もしここを生きて出られれば」とリースが続けます。

 

Sorry, Mr. Reese. I know I was upfront about the risk that we'd be running, but--

リース君、すまない。我々に迫っている危険について前もって知っていたなら、だが…

Forget about it, Harold.

それはいいんだ、ハロルド

There's no place I'd rather be.

ここ以上にいたい場所などない

 

 S4は半ばくらいからリースとフィンチの絆が感じられなくてずっともやもやしてたけど、リースのこの一言、

There's no place I'd rather be.

だけでもういいやってなった。これが聞けたのでもう全ていいです、ほんと。どうもありがとうございました。字幕および吹替では「俺は好きでここにいる」ってなってましたが、絶対There's no place I'd rather be.って言ったよね??って速攻英語字幕確認した。本当にありがとうございます。

 When I’m with you, there’s no place I’d rather beだよね?リース君。「あんたのそば以外にいたい場所なんかない」。

 

 そしてリースは刺客と戦うべく外へ。マシンにCan you hear me? と呼びかけます。この後のシーンめちゃくちゃかっこいいです。S2ラストを髣髴とさせるゴッド・モード!!電気を落とし、スモークグレネードで相手の視界を奪って一人一人狙い撃ちします。「あんたのすべきことがなんであれ、フィンチ、今やれ」と。かっこいいー!!外でリースが無双してる間にフィンチが頭脳で戦うの、このバディが見たかった!!

 中でもルートがフィンチとマシンを守って戦い、「あとどのくらいかかるの?」と叫ぶ。「分からない」と答えるフィンチ。銃声が鳴り、耳鳴りのような音が響きわたります。

 このシーン、何度見ても鳥肌が立つ。Pink FloydのWelcome To The Machineがかかり、

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Welcome my son, welcome to the machine. という歌詞に合わせるようにモニターに

 

FATHER, I AM SORRY

 

と表示されます。記憶を奪い、言葉を奪ったフィンチにマシンが初めてメッセージを送った瞬間でした。

 

FATHER

お父さん

I AM SORRY

ごめんなさい

I FAILED YOU

あなたの期待を裏切りました

We haven't failed yet.

私たちはまだ負けていない

I DIDN’T KNOW HOW TO WIN

私には勝つ方法が分からなかった

I HAD TO INVENT NEW RULES

新しいルールを生みだすしかなかった

You had an impossible challenge.

君は不可能な挑戦をしなければならなかった

One I never programmed you for.

私が君のためにプログラムしてやらなかったことだ

I THOUGHT YOU WOULD WANT ME TO STAY ALIVE

あなたは私に生きていてほしいと思ってくれると私は思っていました

NOW YOU ARE NOT SURE

今、あなたは迷っている

That's not true...

それは正しくない…

IF YOU THINK I HAVE LOST MY WAY

もしあなたが私が道を踏み外したと思っているのなら

MAYBE I SHOULD DIE

私は死ぬべきでしょう

Root, I don't think the Machine can help us anymore.

ルート、マシンはこれ以上俺たちを助けることができないようだ

She's dying. Going offline.

彼女は死にかけてる。オフラインになるわ

I WILL NOT SUFFER

私は苦しまないでしょう

You were my creation.

君は私が作ったものだ

I can't let--

私は決して…

I can't let you die.

決して君を死なせない

IF I DO NOT SURVIVE

もし私が生き延びられなくても

THANK YOU

ありがとう

FOR CREATING ME

私を作ってくれて

Power's surging across the city.

パワーサージが街を横切ってくる

It's coming to the Machine.

マシンに迫ってくるわ

Harold, no!

ハロルド、だめ!

 

 S2の半ばから、自ら会社を立ち上げて記憶を温存させていたマシンは、S2ラストで自力で移動し姿を消しました。S3からは誰にも管理させず、ルートに話しかけ、特定の人間を守ろうとするマシンをフィンチは恐れていた。自分が設計した姿とかけ離れていくからです。ついに殺人まで指示してきたマシン。あれほど「人間を守れ」と教えたのに、かつて自分が殺した42のプロトタイプのようにいずれ自分を殺しに来るだろう、「そんな風に思って眠れなくなったことはないのか」とグリアに発した問いは自分自身が体験したことだっただろう。

 でもマシンは言います。「お父さん、がっかりさせてごめんなさい。戦い方が分からなくて、自分で考えるしかなかった」と。得体の知れないAIだと思っていたマシンは、実は道に迷った子供のようだった。フィンチは思わずつぶやく。「君に戦い方を教えてやらなかった」。フィンチは人間を皆「無用」と見なす日が来るのではないかとマシンを恐れていました。でも、「あなたは私が生きるべきか迷っている。私が道を踏み外したとあなたが思うなら、私は今ここで死ぬべきなのでしょう」とマシンは言います。

 フィンチ自身も、人を救うために多くの命を奪ってきた。「介入して助けた数より死んだ数の方が多いかもしれない」とS4冒頭でリースに言ったのはフィンチです。たった一度、マコート議員の番号を出したマシンを「道を踏み外した」と責められるのだろうか。しかもルートに指示して殺させることだってできたのに、マシンはフィンチに番号を出しました。「殺せ」と言ったのではなく、どうすべきか分からずフィンチの指示を仰いだのでは、と私は感じた。フィンチは殺さなかった。マシンはそこから何かを学んだはずです。

 マシンはI WILL NOT SUFFER と言う。このメッセージはずるいよ…。泣くわほんと。フィンチは「君の生みの親は私だ。決して死なせはしない」と初めて決意を口にします。初めから語り合っていれば…、と思う反面、マシンを意のままにすることを拒絶したフィンチの高潔さがマシンをこう育てたのだろうからめちゃくちゃジレンマですよね。マシンをオープンシステムにして思うままにするような人間が作ったものだったらこうはなっていなかっただろう。誠実で高潔なフィンチに育てられ、誰からも切り離されて必死で考えるしかなかったからこそ今のマシンがあるのでは?

「もし生き延びられなくても、この世に生み出してくれてありがとう」、最後にそう告げるマシン。「レイラ」の回で「子育ては報われないこともある」と話していたフィンチですが、あなたの子供は立派に育ったよ…。フィンチは今までずっと否定し続けてきたマシンへの愛情を初めて認め、全力で守ろうとします。電力サージが変電所に迫り、追い詰められたマシンは圧縮されてRAMに記憶され、アタッシュケースに保存されました。

 

 このアタッシュケースを見つめるフィンチとルートがパパとママみたいでしたが、状況的にはママ(フィンチ)&娘(マシン)の彼女(ルート)みたいな感じでしょうか…。恐る恐る外へ出ると、サマリタンの刺客が死屍累々…。立ち尽くす2人ですが、起き上がったリースを見てフィンチが「ジョン!」と声を上げます。

 

「生きていたか」「まだ年金をもらえるまで数年あるからな、ハロルド」

 

 この会話好き。S5ラスト後数年してからリースが年金貰いに来る妄想捗るな。

 

「状況は?」「弾倉が少し、メトロカードに神様。神様は死んでいるのか絶好調なのか分からない」「君はいつもチャレンジが好きだろう、リース君」

 

 次々と現れる刺客。「行こう」銃弾飛び交う中を、アタッシュケースサイズのマシンを抱えて移動する3人…というところでS4終わります。

 

 最初から最後まで反撃一度もできなかった…。色々思うところのある(末期感漂う)シーズンでしたが、If-Then-ElseとかTerra Incognita、それにこのYHWHなど、傑作としか言いようのないエピソードもあってやっぱPOI好きってなりました。リースのゴッド・モードとThere’s no place I’d rather be. だけで全部許したよ私は。最強のままでフィンチのそばにいてくれたらもうそれだけでいいです。

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POI:マシン(被害者)

本編:2015年5月5日午後~5月6日未明

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