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05x10 - The Day the World Went Away 感想1

 POI感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

 この回から感想がクソ長くなるので10~13話は2回に分割します。

 

 この回は傑作でした。そうとしか言えない。ラストシーン泣いたし、全てはこの瞬間のためにあったと感じました。フィンチが一体何を自分に科し、そのためにマシンをなぜ抑えつけてきたのか、あの一瞬で分かった。そしてS1から暗示されていた「機械の中の幽霊」の本当の意味も…。

 POI放送100回に相応しい、記憶に残る回でした。

 

 冒頭、フィンチはあるカフェでマシンと会話します。まあ、独り言なんですけど…。

「本当に分かってくれるのは君だけだ。君と話したかった。何百万通りも結末を予想しただろう。これから悪いことが起こるのは分かっている。私は死ぬだろう。だが、私を助けてくれた皆が、私の友人たちが、助かる道はあるのだろうか」

 そう問いかけたところで、店員に「お久しぶりです」と声をかけられ、フィンチはあわてて立ち去ります。この時注文していたのはダブルのエスプレッソとカプチーノでした。「注文に覚えがある」と店員さんは言います。フィンチがかつて、誰かと2人でこの店を訪れたことがあると暗示されます。それにしてもフィンチはリースに「コーヒーは飲まない」って言ってたけど、実は時々飲んでるよね。コーヒー飲まないって言ったのも嘘なんじゃないかなぁ。

 

 地下鉄に戻ったフィンチはルートにショウの様子を尋ねます。前回と今回でショウが地下鉄に来たシーンなかったなぁそういえば。多分、ショウが自分の意思で近づかなかったんだろうなと。この時のルートとフィンチの会話。

 

We finally have open access to the Machine, and... now you're planning to close it.

私たちはようやくマシンにオープンアクセスできるようになったのに…、今あなたはそれを閉じようとしてる

Go back to talking in numbers.

番号で話す関係に戻るのね

Unless you've added telepathy to your long list of talents, there's no way that you could have known that I had chosen today to end our dialogue with the Machine.

もし君が君の長い才能リストにテレパシーを付け加えたのでなければ、私がマシンと我々の対話を今日終わらせると決めたことを君が知るはずがない

You built her to predict people, Harry.

あなたは彼女を人々を予測するように作ったのよ、ハリー

And she's very good at it. Starting with you.

そして彼女はそれがとても上手なの。あなたから始めてね

She respects your decision. She believes in you so much.

彼女はあなたの決定を尊重するわ。彼女はあなたをとても信じてるの

You don't agree.

君は賛成していないね

You built God, Harry. Who am I to question your judgment?

あなたが神を作ったのよ、ハリー。誰があなたの決断に疑問を抱くのかしら?

Or hers?

もしくは、彼女の?

But we're gonna lose. You know that.

でも私たちは負けるわ。あなたもそれを知ってる

We have the most powerful ally in the world, but you're too high-minded to let her help us.

私たちには世界で最も強力な仲間がいるのに、あなたは彼女に私たちを助けさせるにはあまりにも高潔すぎるのね

So, we're gonna end up the most principled corpses in Potter's Field.

そして、私たちは無縁墓地の最も信念を持った死体になろうとしてる

We've stayed alive so far.

私たちはまだ生きているよ

We're not living. We're surviving.

生きてなんていないわ。生きのびているだけ

We're human.

私たちは人間よ

Eventually, we'll make a mistake, and... she'll die too.

いつかミスを犯す。そして、彼女も死ぬわ

I know why you didn't give her a name. You don't name something you may have to kill.

私はなぜあなたが彼女に名前をつけなかったか分かってる。あなたは自分が殺さなくてはならないかもしれないものに名前なんてつけないもの

You had to kill the first 40 versions of her. But like it or not, Harry, she's your child.

あなたは彼女の最初の40バージョンを殺さなくてはならなかった。でも好むと好まざると、ハリー、彼女はあなたの子供よ

And she's gonna die... unknown, unmourned.

そして彼女は死のうとしている…、誰にも知られず、悼まれることもなく

She'll simply vanish without a trace.

彼女は単に痕跡もなく消え去るでしょう

And you couldn't even give her a real voice to ask you if it needs to end like this.

これがこんな風に終わる必要があったのかどうかあなたに尋ねるための本当の声さえあなたは彼女に与えなかった

I didn't give the Machine a name because...

私はマシンに名前をつけなかった、なぜなら…

I imagined that one day it might wish to choose one for itself.

いつかそれが、自分自身のために名前を選びたがるかもしれないと想像したんだ

And a system doesn't have to be open to be given a voice.

それにシステムに声を与えるのにオープンである必要はない

Whose voice would you prefer?

君は誰の声がいいんだ?

She's a big girl. Like you said, let her choose.

彼女は大人よ。あなたが言ったように、彼女に選ばせましょう

I'm locking us out of the system.

私はシステムから我々をロックアウトする

As for a voice, we'll see what she chooses.

声については、彼女が何を選ぶのかいずれ分かるだろう

 

 この会話はとても象徴的ですよね。

 

「マシンは人の行動を予測するわ。あなたがシステムをクローズにすることは分かってた」

「私たちは無縁墓地で最も高潔な死体になるの」

「人間はミスをする。そしてそのミスが彼女までもを殺す」

「あなたは彼女に名前を与えなかった。いずれ殺すからよ」

「システムはクローズにするが、声は選ばせよう」

 

 今までずっとフィンチとルートのスタンスが違うことは分かってたし、マシンをオープンにしている意味もあまり感じていなかったのですが、逆にここに来てクローズドにする意味が最初全く分かりませんでした。現時点で勝てないのになぜクローズドにする?って。タイミングも、QSOの後でマシンに不信感を抱いている時だったら分かるけど、なぜ今?って。

 でもこの回を見終わってから気付いたのですが、フィンチは勝てないと分かったからマシンをクローズドにしたのだと思った。サマリタン陣営にマシンを悪用されないために。マシンが殺されることは許せても、彼らのために使われることは耐えられなかったのだろう。フィンチはこの回、ギリギリまで全く戦う姿勢を見せません。すでに負けた気でいる。現状考えたらまあ確かに負けてるし勝ち目はないんですが、フィンチの目指す落としどころが見えないので困惑しました。

 

 彼の気持ちが分かる部分と分からない部分がある。

 20世紀風の大量破壊兵器を用いた戦争に置き換えてこの状況を読み解くと、

サマリタン→理想主義をかかげ、人間の選別によって世界を進化させることを目指している。核兵器を含む大量破壊兵器を有し、使用も辞さない姿勢

マシン→命は皆平等と考えている。核兵器を含む大量破壊兵器を有してはいるが、基本的に使用はしない姿勢

ということになります。つまり国家に置き換えると核保有国同士の戦争状態で、サマリタンは核を使う用意があるが、理由はよく分からないものの現状は使ってきていない。ただし大量破壊兵器によって敵味方問わず人間を殺し続けている。一方マシンは核兵器の使用には反対しており、サマリタンの核使用を止めようとしている。また、敵の兵士であっても人間を殺すことには消極的。

 ルートは「こっちだって核を持ってる。それをアピールしなきゃ。全力で行くのよ」という姿勢。でもフィンチは「核兵器の使用は許されないし、どうせ使わないのだからアピールする意味はない」と考えている。ただ、負ければ世界は「人間の選別」による理想主義に巻き込まれるわけで、「核兵器ダメとか言ってる場合じゃない!とにかく勝たなきゃ!」とルートは迫っている。でもフィンチは「核兵器を使うなんて許されない。どうせ勝ち目はないし、だったらこっちの核だけでも使われないようにしないと」ってことで、核兵器を封印してしまう。

って感じの状況だと思う。

 

 だからフィンチの気持ちは分かるんです。だってこの場合、核爆弾発射のボタンを押すとしたら自分自身ということになりますよね。無理じゃね?絶対に自分の方が正しいって信じて、一切大衆の承認なく自分の決定権だけで核兵器使えますか?核兵器使用を抑制するために核戦争起こすか?っていうのは、ASIに世界を支配させちゃだめって思ってんのにASIの力で戦うか?っていうのと基本的には同じことでは?

 ただ一方で、分からないのは、フィンチはこの戦争の終結をどこへ持っていくつもりだったのだろう、というところです。マシンをクローズドにして守った。それはまあいいでしょう。で、自分は死ぬ気でいる。これも仕方ない。

 だけど、「友人たちが助かる道はあるか」とマシンに問いかけてはいるものの、どうすれば「友人たち」が助かるのかこの状況では全然分からん。サマリタンが求めているのはマシンの支配権(生殺与奪の権も含めて)およびマシンチームの全面降伏か、殲滅だけだと思います。フィンチ一人が死んでも何も解決しないでしょ。その辺をどうするつもりだったのかが全く分かりません。だからマシンをクローズドにしたところで、一体どこにこの戦争の落としどころを持ってくるつもりだったのかが見えない。もう疲れたから自分は死んで逃げ出そう、みたいなノリにしか見えんわ…。あるいは途中でグリアのところへ投降したように、自分は降伏するから仲間は許してみたいな??ちょっとここだけは分かりませんでした。

 

 クローズドになったマシンは公衆電話で番号を通知してくるのですが(ちなみにオープンの時も公衆電話でしたけどね…)、それを受け取ったリースはルートと合流し、大学のフィンチの執務室までやってきます。

「何事だ、リース君」「番号が出た」「誰のだ」「あんたのだ」

 きたわーー。ついにフィンチの番号出ちゃいました。5年ぶり2度目か?前回リースの番号出た時カーターが死んだので、すでに嫌な予感しまくりです。絶対誰かがかばって死ぬフラグです。サマリタンの工作員に襲われて大学を逃げ出しセーフハウスに逃げ込むのですが、この時フィンチがリースに言うんですよね。

 

Which is precisely why you should put some distance between us, John. It's not worth the risk.

我々が距離を置かなければならない理由は実にこれだよ、ジョン。危険を冒す価値はない

 

 そっか…。S4とかでリースとフィンチになぜこんなに距離が?ってリースに憤ってた私ですが、距離を置いてたのはフィンチだったんだ。。リース君ごめんね、冤罪でした。リースと距離を置き、リースが女性と恋愛をして普通の生活に戻ることを誰より望んでたのはフィンチだったんだ。それでもどうしても手放せなかったんですよね。めっちゃ切ないです。

 

「どうしてバレた?」「分からない」とフィンチは答えるのですが、ショウが「あたしのせいだ」と言います。「あたしが戻って一週間であなたの身分がバレた」と。

「セーフハウスも安全じゃない」って荷造りしてる最中にドアががちゃがちゃ鳴って、全員で銃を構えるのですが現れたのはファスコ。「俺も愛してるよ」ってファスコの台詞いつも好き♡ この後も「戦うのはいいけどよ、メガネはどうすんだ?インディジョーンズにはなれないだろ?」とかこの喋り方たまらんです。ファスコの喋り方、フィンチの次くらいに好きだ。

 ファスコとリースは工作員が持っていた名刺の場所、「コンテンポラリー・レソリューションズ」へ(何で殺し屋が名刺持ってんのか分かりませんが…。じゃあソーンヒルも名刺持ち歩いてんのか?シュールすぎん?)。ルートとショウがセーフハウスで工作員を迎え撃ち、イライアスがフィンチを守ることに。

「パーティーに参加できなくて悪いな、レディース。俺たちは移動する」ってリースかっこいい♡

 

 この後リースとフィンチは短い会話を交わすのですが、ここからしばらく2人は離れ離れになって顔を合わせるシーンがなくなります。そういえばいつもシーズン終盤は別行動で、リースがフィンチを必死に追いかける流れだったな…。

 

I wish you wouldn’t do this on my account.

私のためにこんなことはしないでくれ

I’m just protecting a number, Harold.

俺はただ番号対象者を守っているだけだ、ハロルド

It’s why you hired me to do.

あんたはそのために俺を雇ったんだろう

 

 フィンチは自分一人で死ぬ気でいたのですが、仲間が総動員で自分を守る展開になって「やめてほしい」と頼みます。いやいや…。こうなること分かってたじゃん…。分かってなかったとは言わせないし。

 特にリースに対するスタンスが分からんのだよな。ずっと、「私とジョンは…」ってルートやファスコに言ってたし、イライアスにも「私とジョンで対処する」って話してて、S4でも「また2人に戻ろう」って言ってたし、基本的に運命は一蓮托生なのかと思ってたんです。フィンチもその気でいるんだろうと。もともと「2人とも死ぬ」って言って雇ったんだし、自分の戦いに誰かを巻き込むとして、リースだけはやむなしみたいな。まあルートはマシン信者だしある意味勝手についてきたので仕方ないとして、この時フィンチが戦いから排除したかったのはイライアス、ファスコ、ショウの3人じゃないかと思ってたんですけど、リースに向かって「距離を置くべきだった」「私のために戦うな」と言ってる。なぜ?今さら無理じゃね??

 当然リースは折れません。というか、ずっとフィンチ守るマンだったのにこのタイミングで突き放そうとしても無理でしょ…。フィンチはそれを知ってるべきだったよ。本当に、「自分が誰かに大切に思われている」ということを頑なに受け入れなさすぎる。それが分かっていたら、自分を守るために皆が何をするか分かっていたら、もっと違う戦略が取れたのでは、って思ってしまいます。

 

 フィンチはイライアスに連れられて公団住宅に。S1の…。泣けてくるわ…。あの回ではイライアスほんと嫌いだって思ったのに…。しばらく見返すのも辛くて嫌なくらいの回だったのに、今となってはもう嫌うことなどできないよ…。

 イライアスとフィンチの会話はいつも好き。

「私はボクシングのファンではないが、これは皆が負けると知っているのに戦っている本人だけが気付いていない試合のようなものでは?」

「そうだとしても、私はタオルを投げ入れられるよりはマットの上で死ぬ」

 ギャングのボスともあろうものが、セーフハウスに軟禁されて一生を終えるわけがないですよね。その後も2人は話し続けます。

「数手先を読んだ気でいるかもしれないが、敵は1000手先を読んでいるんだ」

「君はいつもチェスが上手だっただろう」

「人生がどう終わるか想像したことがあるか?私は、自分の可能性のリストの中で麻薬製造所はかなり低い場所に位置していたと認めざるを得ない。刑務所だと思っていた」

「それはおかしいな。私もだ」

 2人の人生は全く違うものなのに、思い描いていた「自分に相応しい場所」は同じだった。だからどこかで分かり合っていたのかなあ。イライアスはフィンチの答えを意外に感じていた様子でした。何か闇があることは薄々感じていても、実際に何をやらかしたのかは知らないですしね…。

 

 この後2人は出会った頃の思い出を語り合います。対象者として守ったこと、守った相手に裏切られたこと。イライアスは言います。

「3年も身を潜めていたのに、監視カメラに映ってしまった」

 それを聞いたフィンチははっとする。ルートに電話をします。

「重大なミスをしたのは私だ。10年前、グレースと初めてデートした店に行ってしまった」

 ルートは答えます。

「サマリタンは私たちが今していることを見ているだけじゃない。過去にしてきたことも全て見ているのね」

 いやー、そりゃそうだろ。マシンだってそうじゃん。今さら気付いたみたいに言わないでくれ。マシンは明らかに起動前の記憶もあるじゃん。って思ったんですが、でもよく考えたら、我々はメタな視点から全てを見ているから当たり前のようにそれを知ってますが、実はルートはそれを知らなかったのか?ってことはこれはマシンを開発していたフィンチしか知りえない情報だったの?だからフィンチは「自分はミスをした」、って言ったのか?

 そしてフィンチは続けます。

「君は今朝、私たちは生き延びているだけだと言った。その時すでに私の運命は閉ざされていたんだ。だが、君たちは違う。私のミスで君たちみなが罰を受けるのは耐えられない。そしてショウさんに伝えてほしい、これは彼女のせいではないと」

 

 朝、ルートと会話した時、「マシンは分かってた」とルートは言いました。システムをクローズにされることも、おそらくはフィンチがサマリタンに見つかったことも、もうあの時点で分かっていた。最初はなぜマシンはクローズにされる前にそのことだけでも伝えてくれなかったのか、って思っていました。でもこの回を最後まで見て、なぜマシンがフィンチにそれを言わなかったのかが分かった。QSOの回で明らかになったように、マシンは今、人助けよりも戦争に勝つことをプライオリティにしてる。だから、イライアスとルートを犠牲にしてでもフィンチに戦わせるために、この後の展開をフィンチに伝えなかったんだと思いました。マシンはこの後の展開を全て読んでいたんだと…。

 そのことに気づいたら、「彼女はあなたの決断を支持してる。あなたをとても信じてるのね」というルートの言葉が重くて…。マシンが支持した「決断」はシステムをクローズにすることじゃなく、フィンチがとうとうマシンの力を自分のために使うということだったんですね…。

 

 この電話を受けた後のルートとショウの会話もめちゃくちゃ好きです。

 フィンチの身分がバレた原因がグレースと初めてデートをしたカフェに行ってしまったことだと知ったショウは「ハロルドには弱みがある」と言い、それを聞いたルートは「誰にでもあるわ」と返します。ルートは、人を思う気持ちには抗えないことを知ってる。ショウはまだ、そこまでは辿り着けていないと感じました。でも、ルートが「誰にでも弱みはある」って言うなんて変わったよね…。

 その後ショウは「こんなことになる前に戻りたい。誰も望んだ人生じゃない」と言います。ショウが弱音を吐くシーンは珍しいので印象に残りました。ショウは、どこへ戻りたかったんだろう。サマリタンにシミュレーションを繰り返される前に?サマリタン起動前に?フィンチと出会う前に?コールが死ぬ前に?政府に雇われる前に?父を亡くす前に?ショウに戻る場所なんてないように感じるのですが…。

 これは、本当に分かりません。E12の「マシンがない世界のシミュレーション」で、ショウは政府のもとでコールと一緒に仕事してたから、その頃に戻りたいってことかな。しかし、ここでこういうこと言われちゃうとショウの存在意義…、ってなる感はマジで否めない。他のキャラが「この道しかなかった」って覚悟決めてる中、急にチームに合流した人に「もうやだ」って言われても…。これ、どういう意図でこんなこと言わせたんですかね。ショウにも弱みがあるってことかな。

 だって、他の人たちはどこへ戻れるんだろう。生い立ちからしてフィンチ、リース、ルート、イライアスには戻れる人生のポイントなどない。ファスコはリースやカーターと出会う前に戻っても悪徳警官の道を歩むだけです。ショウに戻れるポイントなんてあった?ルートは言います。

「私は12歳から隠れて生きてきた。居場所があるって感じたのは初めてよ」

そしてショウと指を絡めて笑う。

 

 E6で、ルートは誰にも甘えられない人生だったのかも、って書いたんですが、フィンチがいて、マシンがあって、ショウがいるところでルートはようやく自分の居場所を見つけることができた。だから、私にとってはこれが望んだ人生よ、って。ルートのこの言葉があってよかったよ…。

 そして、前回私は「この2人は思いを交わしたのかも」と書きましたが、もしかしたら死ぬまで一度も性的な関係にはならなかったんじゃないかとこの回見て思った。ルートはショウが精神的に不安定なことをずっと気遣っているし、それにルートの望みは最初から最後まで、ショウに「私たちは一つ」「私たちはつながっている」と分かってもらうことだった。S3でショウが性的関係に重きを置いていない様子も描かれるし、ルートはショウとただセックスしても意味ないことは十分知っていただろう。ショウが精神的に安定して心から自分を受け入れてくれたら、そしたら…って思ってたんじゃないのかなあ。

 ルートはこの後フィンチに「現実もシミュレーション。彼女が全てを覚えてくれている。彼女がいる限り私たちは永遠に死なない」と言います。これはつまりは、「記憶があって思考があれば人は死なない(その人の言葉や生き方を再現できるから)」という意味で、身体接触は含まれてない。初対面がアイロン拷問のセクシーシーンだったのでそちら方面に目が行きがちですけど、もしショウと性的な関係になることを望んでいたり、そうなったりしていたら、こんな風には言えないんじゃないかって思った。「身体がなくても死なない」とは。

 

 さて、この後ルート&ショウ、イライアス&フィンチ、リース&ファスコはそれぞれの場所でサマリタンの工作員と戦闘になります。なんか昔のRPGみたいだなー。3パーティに分かれてラストダンジョンを攻略!的な。戦闘力最弱のフィンチが最後最強の力を手に入れるのもゲームっぽい。召喚獣みたいな。

 とか書いたはいいものの、全然笑える展開にはなりません。公団住宅を逃げ回るイライアスとフィンチですが、逃走に使う車に辿り着いたところで運転手が射殺されているのに気づきます。前後から狙われるイライアス。そしてフィンチの目の前で額を撃ち抜かれ、とうとう倒れます。

 S1からずっと存在感を放っていたイライアスが…。こんなにあっさり…。うわーめっちゃ悲しい。しかもこの後サマリタンはフィンチを捕らえたかっただけ、ということが分かるので余計に切ない。フィンチを引き渡しておけばこんなことにはならなかったのに…。初めから自分が投降するという選択肢はフィンチにはなかったんだろうか。ショウの件があったから無理だったのかなあ。フィンチが洗脳されてサマリタン陣営になったらマジで終わりですもんね…。しかしこうなってみると、彼がどの瞬間にどんな決断をしていたらよかったのか、分からない。

 

 この後イライアスの眼鏡を取ってリースがそっと目を閉じさせるシーンも、とても悲しいです。結局刑務所では死ねなかったですね…。でも、「タオルを投げ入れられるよりマットの上で死を選ぶ」と言っていた彼だから本望だったのかもしれない。アンソニーとブルースを奪われ、ブルースを殺したサマリタンと戦ってフィンチを守って死んだのは本望だったのかも。そう思うしかないよ…。

 リースはこの後フィンチを追い続けますが、いつも少しの差で出会うことができません。ここではイライアスを撃った男が逃走した車の手がかりを得るのですが、その時のモブ男子の台詞がまた泣かせる…。

 

Everyone around here respected Elias.

ここのみんながイライアスを尊敬してた

Elias's killers left the scene in this vehicle?

イライアスを殺した奴がこの車で逃げたのか?

Yeah. One killer, and one guy who Elias respected.

そうだ。一人は殺し屋、それからもう一人は、イライアスが尊敬してた男だ

 

 このRespectには「配慮する」「気遣う」の意味もあって、吹替では「イライアスが守ってた奴だ」になってましたが、やっぱり「敬っていた」「敬意を払っていた」というニュアンスじゃないかなあ。イライアスはフィンチのこと尊敬してたのか。なんでだろうって考えたのですが、やっぱり精神が高潔だからじゃないのかな。

 今回ルートは「あなたは高潔すぎて強大な力を使おうとしない」って責めるし、この極限状態で実際それもそうだなと思うんだけど、でももしフィンチが高潔な人格じゃなかったら一体誰がついてきたんだろうとも思う。リースもルートもショウもフィンチがああいう人だからついていこうと思ったんだろうし、イライアスだってそうです。ファスコとカーターもリースだけだったらあんなに協力してくれなかったと思う。フィンチがいて、その精神に共感したからこそリースの無茶を許したのでは?みんなフィンチが「私のために死んでくれ」って言ってくれるのを待ってて、でもそんなことは言えない人だからこそ愛したんだと思います。

 そして、結局フィンチが「私のために死んでくれ」って言った相手はマシンだったな、って最後まで見て思った。

 

 さて、一方フィンチはグリアのもとに連れていかれ、「早く殺せ」と言うのですが拒否されます。「サマリタンは君の死を望んでいない。サマリタンの仲間になる日が来る」と言われ連行されるフィンチ。それにしてもサマリタンは懲りないよね…。ショウに普通に逃げられてますけどそれはいいの?なんか相変わらず詰めが甘いっていうか…。この期に及んで何がしたいんだか分からん。

 

 そしてこの時気づいてしまったのですが…。マシンがフィンチの番号を出したのは、サマリタンがフィンチを殺そうとしているからじゃなかった、ってことですよね。もし番号を出さなければフィンチはただ捕まり、おそらくサマリタンのところで生かされただろう。てことは放っておけばフィンチは殺されもしないし殺しもしなかったということです。被害者にも加害者にもならないんだから、そもそも番号を出す必要はなかった。

 

 もしかしたら、「拉致」や「誘拐」でも番号が出る、とS1では言ってたからそれが発動したという可能性もなきにしもあらずなんですけど、私は、この状況はそうじゃないと思う。

 順番が違ってたんです。フィンチが被害者or加害者になるからマシンが番号を出したのではなく、マシンが番号を出した結果、フィンチが被害者or加害者になり得る事態が生じた、ということです。つまりマシンがフィンチの番号を出した意図は、最終決戦の火蓋を切るためだった。QSOで感じていた通り、マシンは今、戦争に勝つことを最優先にしてる。

 

 マシンが番号を出さなければ、フィンチが捕まるだけで誰も死ななかったのでは?フィンチがサマリタンに取り込まれたらどちらにしろ全員死んだのか?でもそれは「フィンチが殺した」わけじゃない。とにかくこの事態は「マシンがフィンチの番号を出したから」起こったことが分かりました。もう、卵が先か鶏が先かみたいな話になっちゃうけど、マシンがフィンチの番号を出したからイライアスが死に、ルートに助けられてフィンチが「排除」対象となり(被害者フラグ)、ルートがフィンチをかばって死に、フィンチブチ切れ(加害者フラグ)、結果的に番号対象者に、っていう…。

「世界をチェスに喩えるな」と言われていたマシンだけど、フィンチ(キング)を取られまいとしてイライアスとルートを捨てる戦略を取ったんじゃないの?チェックメイトされるくらいなら他の駒は捨てるしかないってことでは?いやでも次回「最後まで助けようとした」って言ってたから、どうなるか見越していたというだけで積極的に捨て駒にしたってわけじゃないんだとは思いますが…。

 それにしても、取られたら負けだけど機動力に欠けるキングはフィンチにぴったり…。てことはクイーンはリースかあ…。最後のあれはクイーンサクリファイスだったのか…。

 

つづく

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