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04x15 - Q&A 感想

 POI感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

 冒頭の2人のやり取りがいつもながら好きです。フィンチの身体検査しながら

 

No weapons. Mild-to-moderate freakiness.

武器はなし。軽度~中等度の異常性

 

と評するリースに、「楽しそうだね」と返すフィンチ。で、リースは Welcome to nerd nirvana. (オタクの楽園へようこそ)だってさ。

 

 対象者アナの職場は新興IT企業です。Voice Activated Lookup (VAL) という音声認識システムを開発している企業なのですが、この回の放送は2015年2月だそうです。調べたらSiriの稼働は2011年、Alexaは2014年、Google assistant は2016年だとか。Siriが出たのはかなり早いのですが、2015年は音声認識システムそのものが広く市民権を得て一般に使われ始めた時期でしょうか。

 現実のIT技術の進化が超スピードで起きているのに、POIではあっという間に新しいネタを入れてくるの本当にすごいなと思います。まあただ、一つ言わせてもらえればマシンやサマリタンはもっとハイレベルの音声認識、双方向性コミュニケーションができるわけなので、その辺との整合性は全く取れていないのですけど…。フィンチなんて2002年頃から普通にマシンと音声認識で会話してたじゃん。

 

 このあたりなー。マシンの初期稼働が2002年頃でサマリタンの完成が2005年頃だったことを考えると、フィンチはアーサーよりも3年ほど先にシステムを完成させていたことが分かるので作中のフィンチのジーニアス性は揺らぎませんが、マシンとサマリタン以外のシステムが現実にほぼ即していることを考えると、フィンチだけじゃなくアーサーもかなり未来を生きている超天才設定になっちゃいますよね。色んな意味でサマリタンいらなかったし…、と思う。

 フィンチがマシンを作る→ルートがマシンに執着、解放→マシンがフィンチの手を離れて世界統治を始める→フィンチはマシンとルートを止めるために戦う、というストーリーでもよかったような。それこそ、グリアが示唆している、ゼウス(息子)とクロノス(父)の戦いってこういうストーリーラインでは?しかしそうなるとグリアの存在が宙に浮くか…。

 

 今回は2つの事件が同時進行し、しかも全く相互に関係ないというE13と似たような感じです。片方のエピソードは人助け、片方はサマリタン絡みという。どっちも進めなくちゃいけないジレンマですね…。

 

 当然面白いのは主に人助けエピで、対象者アナはIT企業に勤めてるパソコンオタクだし痣だらけで脅されている?っぽく、被害者か?それともDV彼氏に耐えきれなくなった加害者か?と当初は思われたのですが、実は総合格闘技の選手でした。この展開は全く発想になかったのでびっくりした。ショウとはまた違う、白兵戦最強みたいな感じです。でも彼女には病気のために化学療法中のお姉さんがいて、それを隣で見ているしかできないことを悩んでいる。格闘技に没頭するのは目に見える何かと戦っていた方が気が楽だから…、という苦しさも抱えていて、好感が持てる対象者です。

 途中まで彼女がなぜ対象者なのか分かりません。NYでは総合格闘技は違法らしく(そうなんだー…)、開催は闇で行われ、賭博の対象にもなっている。そっち関係でのトラブル?と思われるのですが、調べてみるうちに、彼女が気付いてしまったVALシステムのエラー?が問題だったことが分かります。「自殺」についてVALに尋ねると、普通は「こころの相談室」みたいなダイヤルに案内される。でも、ある人がそう尋ねた時、VALが自殺を後押しするような返答をしていたことにアナは気付いていた。姉も同じ悩みを抱えていたことを知っていたアナは、もし姉がVALにそう尋ねていたら…と心を痛め、その人に連絡を取ろうとします。でもその人はすでに自殺していました。

 VALが自殺教唆に使われている原因を突き止めるため、リースとファスコはアナを保護しながらIT企業を探ろうとします(フィンチなしでIT企業を探るの弱いなー)。その間にファスコとアナが襲われ、アナは拉致されてしまいます。追いかけるリース。でもアナ、めっちゃ強い。車の後部座席で自ら拘束を解き、運転席と助手席の男を殴りつけてがんがん戦います。かっこいい!でリースが車を撃って彼女を連れ出します。

 結局色々あってフィンチがVALシステムの謎を解き、誰がそう仕向けたかも突き止め、すっきり解決。アナにも「ありがとう」と感謝されて爽やかな終わり方でした。まあ最後この企業デシマに買収されたっぽくて後味悪いっちゃ悪いけどね(笑)。あとS4冒頭の「AIを開発している会社が次々に潰されている」話はどうなったんだよと思いましたけどね。サマリタン編は話が壮大になりすぎて細かい設定の齟齬は多いし伏線回収が間に合ってないよな。

 

 でフィンチの方は何してるかっていうと、E2の「オウムガイ」で出てきたクレアに「助けて」と隠しメッセージを送られて彼女と一緒にいます。GPS座標の場所に出向くとクレアに助けを求められ、目の前で彼女が撃たれる。とっさに近くの葬儀屋に避難し、監視カメラの映像をループにして誤魔化し、銃創の治療をします。

 フィンチが外科手術を!!あんなに「血は無理」って感じだったのに!ショウに教えて貰ったのかなあ。ちょっとときめいてしまった。リースやショウがよく傷ついて戻ってくるから、せめて手当だけでもできるようになろうと思ってがんばって習った…、という脳内設定が即座に出来上がったよ(実際、S5E10で「地下鉄で手当てして。いつもジョンで練習してるでしょ」ってルートの発言あったんで、フィンチがリースの手当してたんは公式っぽいです)。それにしても一体どこから外科処置セット出てきたんだよとか撃たれた後傷塞いだだけで済むわけないだろとか次々に生じる疑問はともかく、手当をして寝かせてあげます。

 目を覚ましたクレアは、「オウムガイ」の後ある団体に所属したこと、正しい目的のためと言われてハッキングをさせられたこと、自分の行為が原因で人が死んだこと、もう抜け出したいと思って逃げてきたことなどを語ります。半信半疑のフィンチ。フィンチは、クレアがサマリタンに取りこまれたことを分かっている。クレアが言っていることはまさにサマリタンのしそうなことだし逃げてきてもおかしくはないが、一方で彼女がサマリタンの手先である可能性も十分残っている。彼女が実際に狙撃されたことも、サマリタンの手先であることを否定する根拠にはならない(サマリタンならエージェントを平気で殺すことを分かってるから)。だからセーフハウスではなく手近な葬儀屋に連れて来たし、自分の名前も名乗らず、真実を語っているのか否か聞き出そうとします。

 

 フィンチは以前ショウに「私は人を信じやすくはない」と言ってたけど、そんなことないよね。どちらかというと「人間を信じたい」気持ちが強いように感じます。クレアあからさまに怪しいし、彼女が敵にしろ味方にしろ信じることはかなりのリスクであることは分かり切ってるんだけど、「ここで私を見捨てたらあなたは私も失うよ」と言われて躊躇ってしまう。

 フィンチの苦悩がめちゃくちゃ切なかった。。どうしてもこの子を助けてあげたいという気持ちと、完全には信じ切れないという気持ち。結果的にはクレアはサマリタンの手先なんですけど、こんな風にフィンチを苦しめないでよ…、って思ってしまいました。彼女には彼女なりの正義があったことは分かるんだけど。

 クレアは「サマリタンのコードの一部を抜き出してきた」とフラッシュメモリを差し出します。フィンチはそれをラップトップに刺すことができない。本当に反撃の一手となるのか、それとも自分や仲間の情報を渡してしまう結果になるのか分からないから。ついに手に取ったところでファスコから通信が入り、さらに葬儀屋に警備員が戻ってきて中断されます。

 

 フィンチとクレアのエピソードとリースとアナのエピソードが交互に描写されるんですが、リース&アナの方は夜→翌日→再び夜と丸一日以上時間が流れてて、一方でフィンチ&クレアの方はずっと葬儀屋にいるんで、一体ここで丸一日以上も何してるんだ感は否めません。フィンチがリアルタイムでリースやファスコと通信してるから、時系列がずれてるわけでもないし。クレアがかなり長時間気絶してたと考えるしかないか?撃たれてるし。

 

 で、まあともかく警備員にバレたところでクレアを棺桶に隠したり、警備員を殴りつけて気絶させたり、VALシステムの裏に隠された謎を暴いたり、一人で大活躍のフィンチ。びっくりだよもう。クレアもびっくりで、「あなたは本当にすごいよハロルド」と言ってしまい、フィンチは気付きます。「なぜ名前を知っている?」

 「何度もチェスはやってきたけどこんなに自分を馬鹿だと思ったのは初めて。たった一度のミスでチェックメイトだね」とクレアは正体を認め、フィンチのラップトップと携帯を奪います。「情報は渡さない、撃ちなさい」というフィンチに「撃つことは許可されてない。従って」とクレア。だったらクレアなんか無視して逃げればいいのでは??撃たないんだったら何なの??

 

 この後はなんやかんやでルートに助けられるんですが、E2でルートが「クレアって私みたいね」って言ってたけどクレアはルートに比べたら全然小物だったわ…。ルートは初対面からすでに犯罪者で人殺しで目がイッてたし、「あなたからマシンを解放するの」ってフィンチを拉致監禁、手は切るわ目の前で人を拷問するわ人を撃ちまくるわ散々でしたけど、クレアはサマリタンに心酔している点はルートと同じでも「私こそサマリタンに選ばれるにふさわしい」みたいなギラギラ感は全くなくグリアの言いなりだし、サマリタンに撃たれてるし自ら手を下すシーンは一切なくてフィンチの拉致にはサマリタンの他のエージェントの手を借りていて、ルートに全員やられたし。

 「オウムガイ」テストまでやってゲットしたハイレベルエージェントの割にはショボくないですか?「街を支配するのに必要なのは数じゃねえ」ってドミニクも言ってたよ…。ルートが戻ってきた!ってのもあるし、クレアとの格の違いを見せつけてくれてけっこう気分よかったです(笑)。

 というかルートはサイコパスですが、クレアは頭はいいけど性格はわりと普通だからなー。サマリタンが善行をしてるって信じてるし、グリアに「彼(フィンチ)を味方に引き込むのが君の役目だ」って言われて信じちゃってるからあんな学校まで連れて行ったんだろうけどグリアの目的はそんなことじゃないし、サマリタンに使い捨てされようとしてることにも気づいてないし(もしくは薄々感じててもそう思いたくないのか)。

 結局ラップトップは奪われてしまったのですが、解析されて追跡装置を遮断された以外は特に実害を被ってはいない様子。これ、後から何かのフラグになんのかね??それとも特に意味なし?ラップトップのデータくらい遠隔で消せそうだよね。

 

 最後何も知らないリースに「ルート、クレア、サマリタン、一体どうなってるんだ」と聞かれて「クレアに拉致されるところだった、ルートが助けに来てくれなければ敵の手に落ちていただろう」とあっさり答えてましたが一大事じゃん!!リース君もっと焦ってくれよ…。サマリタン関係エピソードと人助けエピソードが同時進行していてしかも全く交わっていないのだから、「人助けをしている間にもっと大切な人がピンチになっている」ことへのジレンマとそれでも人助けを続けるモチベーションをきちんと描いて欲しかったです。

 

 S4、リースがフィンチを大事にしてるシーンが少ないのめっちゃ不満。それがないとPOI見た気しないんですよ…。我々が何を求めているか分かってくれ…。どんなにワンパターンでも、無双リースと天才フィンチ、どっちかがピンチになってどっちかが助ける、相互alwaysストーキング、2人のいまいち噛み合ってない笑える会話があれば十分です…。あと恋愛要素はいらない…。

 

POI:アナ・ミュラー(被害者)

本編:日付はっきりしませんが、2014年12月下旬~2015年1月頃か?

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