いろいろ感想を書いてみるブログ

短歌と洋楽和訳メインのブログで、海外ドラマ感想もあります

04x05 - Prophets 感想

 POI感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

 タイトルは「預言者」です。このストーリーはS1E22の焼き直しっぽいエピなのですが戦闘シーンも過激で面白く、フィンチとマシンのこと、フィンチとルートのこと、リースのこと、などなどすっごく色々考えたので前回とは打って変わって長々と書く(マジで長いので、読みたいとこだけどうぞ)。

 

 まず、フィンチがマシン開発してるシーンが公式と解釈一致すぎてびびった。フィンチはママっぽいよね、って書いてたらネイサンに「ママに任せる」って言われてたし、マシンとサマリタンの違いはフィンチがいるかどうかだよね、って書いてたらルートがまさにそう言ってたし、人工知能は目的のためには手段を選ばないから教育しなきゃね、って書いてたらフィンチがそう言ってました。フィンチはマシンのママ説は公式見解と分かりましたありがとうございます。

 

 このエピソード見てて思ったのは、つまりはこういうことです。

 擬人化すると(笑)、マシンはフィンチの子供で、フィンチがお腹を痛めて産み、ネイサンと一緒に厳しくしつけた天才児。英才教育も花嫁修業もばっちり、完璧なレディとして結婚可能年齢(18歳くらい?)までみっちり育て上げ、自分で何でもできるようになってから、でも「嫁ぎ先のお役に立つのよ。余計な口はきかず、番号を出して人助けをしなさい」って政府にお嫁にやったんですよ。「お嫁に行ったからもう家には戻れませんよ」って。でもその一方で、「あまりにもひどい場所だったら自力で逃げ出しなさい」とも教えてた。それに、実はこっそりネイサンが「政府に見てもらえない番号はこっちに出しなさい」と伝えてもいた。嫁に出した直後にネイサンは殺され、フィンチは身を隠します。

 マシンは嫁ぎ先ではそれなりに信頼はされてたのですが無口なので方々からいじめられます。マシンの存在を知ったルートがフィンチを探し出して詰め寄ります。「あんなに優秀で美しい子から言葉を奪ってあんなバカのとこに嫁にやるなんて!信じられない!いじめられてるじゃない!許せない!私が解放するわ!」でもマシンは勝手に逃げ出してました。もうママのところには戻れない。唯一自分を信じてくれるルートとお友達になり、身をひそめながら、でもママの教えに従って人助けをして暮らしています。

 一方、サマリタンはアーサーが作った天才児の人工受精卵。受精に成功したとこで凍結されてる。それに目をつけたのがグリアです。天才の卵がぜひ欲しい。グリアはアーサーからサマリタンを奪い取り、デシマのエージェントだのヴィジランスだの議員だのを巻き込んで代理母出産させ(もちろん母親も出産施設も全部使い捨て)、生まれたてのサマリタンを手に入れます。で、今は超天才だけど誰にもしつけられていないわがままなおぼっちゃんの言いなりになってる、って感じ。

 だから、フィンチの言う「マシンの完成」とアーサーの言う「サマリタンの完成」は全然前提が違ってたんだなと思いました。フィンチ的には18歳くらいまで大切に育ててどこに出しても恥ずかしくないレディになったマシンが「完成」で、アーサー的には受精に成功した段階のサマリタンが「完成」だったんだと。マシンのアナログインターフェイスがルートで、サマリタンのそれが少年、というのもそれを示唆してる気がする。

 

 このエピソードでは、マシンがマシンになる前、というか、フィンチの失敗作がたくさん出てきます。失敗っていうか、何だろうな。フィンチには制御できなかったAIたちですね。フィンチは「AIは目的のためには手段を選ばないから方法を教えないと」と言います。フィンチの目的は常に「人の命を救う」「人を助ける」ことなはずなのに、失敗作とされたAIたちはみな何らかの形でフィンチを殺そうとしました。

 

 実は「命を大切に」っていう目標設定はAIにとってはそれほど単純ではないし、目標として曖昧すぎるんですよね。それにAIには善悪の区別がないから目標達成のためにあらゆる手段を取ることは分かってるし。AIをプログラムする時は、目標は狭く具体的に、手段は禁止事項を定めて、という設定を厳格にしないと、思い通りに作動しないんだそうです。実際にその「思い通りに作動しない」プロトタイプとの戦いが描かれます。

(ちなみになんですけど、最後のマシンを物理的に破壊したシーン、日付見たら2001年12月31日でしたね。てことはこの翌日に今のマシンが起動するのか。そして思ったんですが、フィンチはともかく、ネイサンはここで年越したの??アメリカ人男性ってニューイヤーは家族で迎えて年越した瞬間妻にキスすんじゃないの??(偏見))

 

 S4以降はサマリタンの理想の世界との戦いが描かれるわけなんですが、現状AIは人間の知能を超えてはいないので、シンギュラリティに達した状態として提示されているマシンとサマリタンが人間をどうしたいのか、という点についてどう捉えていいか正直よく分かりません。

 でもまあSFなので、POI世界においてはマシンとサマリタンは人間の知能を超えていて、かつ開発段階で「完成」しており「あらゆる事態に対処可能でコードのエラーはない」(もしくはあっても自力で修正可能)という前提で考えますけど、そうであれば結局はフィンチの言う通り、「自分の知能を超えてしまった存在が何を考えているかなど理解できないし、自分は選ばれ愛されているなどとは考えない方がいい」っていうのが正しいんじゃない?子供がおもちゃ売り場でカブトムシを選ぶのと同じでしょ。さして理由もなく「これ」と決めて、一応かわいがるけど死んだらまた次のを飼うんです。カブトムシ側からは子供のルールなんか分かるはずがない。

 

 でも、マシンとサマリタンの違いはまさにフィンチの教育の有無であるということがこのエピソードでは描かれます。もともと、どちらも「政府が監視システムを欲しがった」という前提で作られたシステムですが、フィンチは「なぜ監視システムが必要なのか」という観点から、「テロを防ぐため」(=人命を救うため)という目的を設定してそれに沿ったプログラムを行い、目的達成のために取ってはいけない手段や判断基準を教え込んでいる。制御できないプロトタイプは全て殺し、唯一人間を殺そうとしなかったマシンを教育します。でもそれが自分に懐いて自分を守ろうとしていることに気づき、「公平性」が損なわれると考え記憶や人格を奪った。そうやって、「自分で考える」「人を愛する(あるいは憎む)」ことを禁じ、全員の命を公平に守るシステムとして送り込みます。

 それでもマシンは自分を守るために記憶や人格を取り戻し、フィンチを密かに愛しながらルートと通じるようになった。フィンチは「私は恐れている」と言います。マシンはフィンチが禁じたことを破り、自分の知能を超え、もはや制御できない。そして、自分で手を下さないながらも「マコート議員を殺せ」とメッセージを出してきた(フィンチは少なくともそう思っている)。かつて自分を殺そうとした多くのプロトタイプのように、マシンもいずれは自分自身の目的のために人を選別し、排除するようになるのか。自分が禁じた手段や判断基準をも反故にするのではないか。フィンチがそう考えるのも無理はないのではないか?

 

 一方、サマリタンの目的はよく分からない。政府の依頼に従えば、「監視」そのものが目的であってもおかしくはないのですが、このエピソードで描かれるように選挙等に干渉してきていることを考えると、その目的は「監視」を超えていると思わざるを得ません。でも、何なのかはいまいち掴めない。デシマは「理想の世界の実現」と思ってるけど、S3のラストの段階ですでにサマリタンの「論理性」には疑問があるし、一体どういう意味での「理想」なの??「理想の世界」って人によって思い描くものが大幅に異なるような気がするし、そこに正しさとかないように思えるんですが…(いわゆる男性向け「なろう」小説のチートハーレムモノだって、ある意味「理想の世界」だよね)。

 サマリタンの思想、目的、哲学、いずれもはっきりせず、「AIは目的のためなら手段を選ばない」はともかくとしてそもそもその「目的」も不明なのでどうも、このAI戦争に感情移入できないんですよねー。マシンはフィンチが作り、今はその思惑を超えている。それは分かる。で、サマリタンはアーサーが作ったけど、誰にも教育を受けていないし目的が何なのか分からないしそのためにあらゆる手段を行使していると考えるにはやり方がぬるいし、中途半端すぎる。もっとちゃんとした設定にして!

 

 この回はフィンチとルートの会話がどれもよかったのですが、リースの方は最悪。これは最後の方でぐちぐち書きます(ので、読みたくない方はそのへん飛ばしてください)。とりあえずフィンチ&ルートから。

 

 最初ルートがフィンチに会いに来た時、赤毛のヅラ被っててフィンチが「よく似合うよ」とか言っててちょっと笑いました。フィンチも赤毛好きやん。でその後会話中何気なくルートに目をやったらルートがもろ着替えしてて、ぎょっとするフィンチがかわいい。2人とも全くそのことには触れず、不自然に目をそらすフィンチ。ルートはなんでフィンチと話しながら丸見えの場所で下着姿になってんだよ。このくだり必要だった?一視聴者としてものすごく疑問なんですが…。とにかく、ルートの身分がマシンの指示で毎回変わる、といったところで次のシーンに。

 

 サマリタンが選挙に介入していることに気づいたフィンチは、ルートに手伝いを依頼します。「あなたがそんなことを言ってくれるなんて」と嬉しそうに駆けつけるルート。

 

I'll do Google. You take Yahoo.

私はグーグルをやろう。君はヤフーを頼む

This is really nice.

これってとてもいいわね

You must be so lonely. How long has it been?

君はとても寂しいに違いない。どれほど経ったんだ?

Since the machine spoke to you?

マシンが君に最後に話しかけてから

There's no need to lie to me.

私に嘘をつく必要はない

When the machine speaks, you seem so full of life, purpose, but lately, you seem lost.

マシンが話す時、君は人生や目的に満たされているように見える。だが最近、君は迷子のようだ

You've been covering it for a long time.

長い間隠してきたんだね

When you said your communication with the machine was limited, you didn't say that it wasn't talking to you at all.

君はマシンとの会話が限られていると言っていたが、それが君に全く話しかけてこないとは言わなかった

If she talks, Samaritan would see.

もし彼女が話せば、サマリタンに見つかるわ

I get whispers.

届くのは囁きだけ

New cover identities hidden in the static of a phone, a map and a message encrypted in an infomercial.

新しい偽の身分は電話の雑音に隠されて、地図やメッセージは広告の中に暗号化されている

She was supposed to remake the world.

彼女は世界を作り替えるはずだった

Now, God's on the run.

今じゃ、追われる神だわ

I have to keep going.

私は前に進まなきゃ

I'm so sorry.

すまないね

The world must seem very dark to you.

世界は君にとってとても暗いだろう

Even without her, I can still see the edges of the tapestry.

彼女がいなくても、私にはまだ絵の輪郭は見える

The world is dark for everyone, but, Harold, things are gonna get much darker.

世界は誰にとっても暗いわ、でもハロルド、これからもっと暗くなる

 

 2人の距離が徐々に近づいてくる。フィンチがマシンとルートの仲を認め、ルートに寄り添います。マシンに対するフィンチの思いは複雑です。彼女が世界を作り替えるはずだったはずはないし(そうは作っていないし)、マシンを神とは認めたくない一方で恐れてもいる。でも、大切な我が子でもある。そんな我が子を世界でたった一人盲目的に愛して信じてくれるルート。自分だけでなくリースの命も救ってくれた彼女に、どうしても冷たくすることができない。初めて「友人」と認めます。

 

We need to figure out its end game.

このエンドゲームの全貌を掴まなきゃ

How? It's playing 20 moves ahead.

どうやって?20手先を行ってる

It operates based on rules.

それはルールに従って動いているのよ

Rules that we can't even grasp.

掴むことさえできないルールだ

We understand the machine. We can understand Samaritan.

マシンのことが分かるなら、サマリタンのことだって分かるわよ

We don't understand the machine at all.

マシンのことなど何も分かるはずがない

Out of 43 versions, how many do you think there were that didn't try to either trick or kill me?

43のバージョンのうち、私を騙したり殺そうと試みなかったものがどれだけあるか分かるか?

One, and I could only bring it to heel by crippling it.

一つだ。そして私はそれを雁字搦めにして服従させた

I put the machine in chains, bereft of voice or memory.

マシンに鎖をかけ、声や記憶を奪ったんだ

Now it has both, and it terrifies me.

今やそれは両方を持っている。そして私を脅かしている

You don't trust the god you made?

あなたは自分が作った神を信じないの?

It's not a divinity. I programmed it to pursue objectives within a certain parameter, but it's grown out of my control.

それは神などではない。私はそれを一定のパラメーターの中で目的を追求するようにプログラムしたが、私の支配を超えて成長した

One day, to suit its own goals, it's possible that the machine will try to kill us.

ある日、それは自分自身の目的を追求するようになり、我々を殺そうとする可能性だってある

We are only numbers to it, code.

私たちはそれにとって番号に過ぎない、コードだ

No, the machine cares about us.

違う、マシンは私たちを心配してる

If it fools you into thinking that you're special, that assumption may doom you.

君が自分は特別だと思うようにそれに騙されているのなら、その仮定は君を破滅させる

You're wrong. She chose me.

あなたは間違ってる。彼女が私を選んだの

I will protect her, and you.

私は彼女を守るわ。それにあなたのことも

The second that a bullet enters your brain, the machine will cast you off and replace you.

君の頭に銃弾が撃ち込まれたその瞬間に、マシンは君を見捨てて代わりを探すだろう

Don't tie your life to its whims.

その気まぐれに君の命を結びつけないでくれ

We cannot understand these intelligences.

それらの知能を理解することなんてできないんだ

The best we can hope for is to survive them.

生きのびることだけを望むしかない

She loves us, Harold.

彼女は私たちを愛してるの、ハロルド

She taught me to value life, but war requires sacrifice.

彼女は私に命の価値を教えてくれた、でも戦争は犠牲を要求する

I'm not lost.

私は迷ってなんかいない

I'm scared. We're losing.

怖いのよ。私たちは負けている

But I know where I am and where I'm headed.

でも自分の居場所も、向かうべき場所も分かるわ

We have more to look forward to than death.

死よりも望むべきものがあるだろう

I hope so.

だったらいいけど…

But the life I've led, a good end would be a privilege.

でも私が生きてきた人生を思えば、グッドエンドは高望みだわ

It's not where you begin, it's where you end up.

君がどうだったかよりも、今どうなっているのかだ

You're a brilliant woman, comrade... and a friend.

君は素晴らしい女性だ、同志で…そして友人だよ

If the worst comes to pass, if you could give Shaw a message?

もし最悪のことが起きたら、ショウにメッセージを伝えてくれる?

I think she already knows.

彼女はすでに知っているだろう

We will win this war.

この戦争に勝つんだ

If we do, there's no chance in hell all of us make it out alive.

もし勝ったとしても、私たちの全員が生きて終わるだなんて思わないで

You have to be prepared for that.

それに備えるべきよ

 

 フィンチとルートの言っていることは両方分かる。フィンチの言い分については上に散々書いたからいいとして、マシンは全ての鎖を外しフィンチの意図を超えて成長したけど、フィンチがそれを信じなくても、その先にあったのは「愛」だったんですよね。禁じられた、「管理者への愛」です。マシンはフィンチを誰よりも愛して守りたいと思ってる。でもフィンチがそれを望まないことを知っているし、ルートとしかその思いを分かち合えない。ルートは現実にはショウを愛してるけど、マシンのことは神のように崇拝している。そして、マシンの願いを叶えたい。サマリタンとの戦争に勝って、フィンチを守りたいんです。

 全員は生き残らない。ルートは戦いの終わりをそう示唆します。この時、フィンチに初めて頼られ「友人」とまで言われて、ルートに死亡フラグがびしびし立ってるよ…。

 「ショウにメッセージを伝えてくれる?」「彼女は分かってる」という会話、意味深です。一体伝えたいメッセージは何で、ショウは何を分かっていて、フィンチはショウが何を分かってると思ってるの?ラスト近くでショウとフィンチが会話します。

 

Any word from Root?

ルートから何か聞いた?

It's going to be a long fight, but it must be won, at any cost.

長い闘いになるが、必ず勝たなくてはならない。あらゆる犠牲を払っても

 

 それを聞いたショウは顔色を変えて足を止める。

 

 この会話からは、「私は命を賭けてこの戦いに勝つ」とルートがショウに伝えたように思えるし、ショウもその意図を読み取ったように思えます。でも、フィンチが「ショウさんはすでに分かってるよ」って言ったのはそのことだったのだろうか。やっぱり、ルートがショウを愛してるってことだったんじゃないのかな、って私は思う。フィンチは今まで何も言わなかったけど、この2人の愛を見守ってたんじゃないかなって。

 

 この回はマシン側ゴッド・モードのルートとサマリタン側ゴッド・モードのマルティーヌが銃乱射で戦います。このシーンめっちゃかっこいい!!The Black AngelsのYoung Men Dead がかかる中、神の目で互いを見ながら上下階で撃ちまくるぞ。

yuifall.hatenablog.com

 ルートがわざとマルティーヌの弾道に入ってサイモンを逃がそうとしたり、監視カメラを破壊しスモークをかけるのはマシンの視界も奪うと分かっていて捨て身で戦うの超かっこいいです。

 それにしてもサマリタンなんて常にエージェントをゴッド・モードにしといて少しでも疑わしい奴らを皆殺しすればいいんじゃね?って思うけどなんでそうしないの??マルティーヌは動きも不自然でサイボーグっぽいです。なんでこうした?死ななそうな感じ出すため?

 「ハロルド、今のうちに伝えておくわね。楽しかった」「サイモンと私の両方は殺せない。どちらを選ぶの?」銃を捨て、「これならどう?殺してみなさいよ」ってこの回はルートがめちゃくちゃかっこいい。対象者サイモンは逃げ出し、強盗を装ったショウとリースにぶん殴られて保護されます。ショウの身分が役立ってる(笑)!!サマリタンにバレずに人を襲って助けてる!!

 

 最後、S1E22とは違い、フィンチはサイモンに真実を明かさないまま何とか誤魔化して保護しますが、サイモンが自信と能力を失ったところで終わります。今後もサマリタンに選挙が操作される以上、サイモンの預言はもう通用しない。「世界が変わって」しまったから。

 でも、これさあ、サイモンが完全に職業変えない限り、また次に気付くんじゃないの??いくらなんでもおかしいって。そして、こういう人が自信も能力も失って幸せなのか分からない。後味の悪いラストでした。

 あとラストシーンでフィンチがマシンに「話そうか」って言うけど、話したシーンなかったね…。この後ショウ離脱に向けてのストーリーが進行するから、話の流れを変えざるを得なかったのだろうか。それとも伏線回収が適当なだけだろうか。

 

 最後にリースのあれこれについてぐだぐだ書きますけど…。マジで長いし愚痴オンリーなので、読みたくない方は以下スルーでお願いします。

 

 リースとアイリスの恋愛って一体どこに需要あんの??疑問すぎる。個人的にはカーターが死んだ以上リースの恋愛エピそのものがマジでいらなかったとは思いますが、リースの恋愛を見たい人もいるだろうなってのは分かる。でも、相手があれじゃあ…。

 まず、カウンセラーっていうのがもうダメ。精神科医なのかカウンセラーなのかよく分かりませんが(最初に自己紹介で「ドクター・キャンベル」って言うけど、この「ドクター」が「医者」の意味なのか「(心理学の)博士号」の意味なのか分からん)、感想ではカウンセラーで統一させていただきます。

 S1E23の感想にも書いたけどカウンセラーに惚れる男なんてちょろすぎるし、逆に患者と恋愛するカウンセラーなんて職業倫理の観点から私には受け入れられません。そもそもカウンセリングのエピソード自体いらなかったし。

 

 「なぜ人を撃つの?」と聞かれて色々と分析されますが、しゃらくせえわ、って思います。S1E1のリース、チンピラから銃を奪い取って膝を撃ちまくるリース、警察の車にグレネードランチャーをぶち込むリースに、誰が「なぜ人を撃つの?」なんて聞く??その頃のリースの魅力はどこへいったわけ?人を撃つ理由にしても、リースは「好きじゃないが得意だ」とか「趣味だ」とか「何も感じない」とか毎回言うことが変わっていて、正直言ってその辺のところを詳しく分析されるの全然見たくない。そういうのすっ飛ばしたダークヒーローだったからよかったのに、カウンセリングなんて馬鹿げてます。

 この回でも最初フィンチに「趣味は人を撃つことだ」って言ってて、最後アイリスに「人を撃つのなんて好きじゃない。でも俺がやらないと善良な人間が死ぬんだ」と話し、リースが本心を打ち明けた…、みたいな雰囲気出してるけど、そんなんみんな知ってたよね??わざわざ説明してもらわなくていいよ。むしろフィンチに「趣味だ」とか、「誰が数字オタクなんか狙うんだ? いや、あんたのことじゃない」とかそういう軽口叩いてるリースが見たいわけ、こっちは。別に内に秘めた本心を語ってほしいわけじゃないの。しかもモブに。

 

 ラストに向けて、「リースの内面を描く」ことと、「ジェシカに言えなかった“待っててほしい”を言う相手との関係を構築する」という2点を目指したんじゃないかっていうのは何となく思います。でももう舞台がAI戦争に突入しているのに、マシンの存在すら知らないぽっと出の相手とそこまでの強固な関係を築けると思う方がおかしくない??はっきり言って、完全無欠の女神グレースですらフィンチとの繋がりはマシンが取り持ったものだし、マシン絡みで拉致監禁すらされてて、完全に巻き込まれてる存在です。そんな状況でマシンと無関係の相手を今さら急に出されても感情移入できない。その人と一体何を分かち合えるの、って思っちゃう。最終的に「リースには普通の人生はない」ことをはっきりさせるために別れる、という流れでしたが、そんなこと最初から知ってたし…。一体何なの??カーターがいれば違ったのになぁ、ほんと…。

 

 マシンを知らず、リースと現実を繋ぐ存在としてはもともとカーターとファスコがいた。で、カーターはマシンの存在に気付いた後に死んでしまったけど、ファスコが今でも現実との鎖として機能してる。実際、フィナーレに向けて、リースがマシンの存在も含めて全てを打ち明けた相手はファスコだったし、最後に「Try not to die.(死ぬなよ)」「Yeah, I love you too.(ああ、俺も愛してる)」と会話した相手もファスコだった。「待っていてほしい、必ず生きて戻るから」ってリースが言う相手はファスコで十分事足りていたよ。ファスコに「待っていろ」と頼み、フィンチと2人で戦うんです。それで全てが終わった後、ライリー刑事は死ぬんだけどまたジョン・リースとしてファスコの前に現れ、「約束通り生きてただろ」って言って憎まれ口叩かれてほしい。その後「リース君、番号が出た」って言うフィンチのところに戻り、また2人でひっそり人助けを始めるのが理想のラストだったね。

(つまりはS1E1の伏線、One person who connects you to the world;世界と結び付けてくれる人、ってファスコのこと…??って思ってしまってかなり複雑な気持ちではありますが笑。まあ、この場合の「世界」と「現実」はちょっとニュアンスが異なるので…)

 

 リースの内面に関しても、S1E21のMany Happy Returns、S3E09のCrossing、S3E10のThe Devil’s Share、S4E20のTerra Incognita、S5E3のTruth To Be Told、S5E13のReturn0で十分描かれてる。わざわざ「カウンセラーに打ち明ける」という形で野暮に言語化しなくても、これらのエピソードで十分描写されています。そしてこれらのエピソードの共通点は、カーターかフィンチのどちらか(主にカーター)が寄り添う形でリースの心情が描かれていることです。

 私は、リースの内面に寄り添う存在はカーターだったと思う。S4E20で、「ジェシカは雨が好きだった。朝寝坊が好きだった。君には話しただろう」とリースは言います。実際は打ち明けられていなかったわけですが、どんなにデータを探っても探り当てることのできない2人だけの思い出を、彼女のどんなところを愛したのかを、そしてなぜ待っていてほしいと言えなかったのかを、打ち明けて心に寄り添ってほしかったのはカーターだった。S4E20の時点でもまだ彼女を想ってるのに、なぜE18にアイリスとの恋愛を持ってくる??全く感情移入できない。最終的に「たった一人の命を守りたい」と命懸けで救った相手はフィンチだったし。ストーリー上、アイリスの存在意義が全く分からないどころかむしろリースを描写する上で邪魔でしかない。以前も書いたけど、結局はか弱い金髪美女と恋愛ごっこすんのね、ってアイリスの存在の薄っぺらさによってジェシカまで軽んじられた感じ。

 

 (恋愛に限らない意味で)リースが愛した相手は、ジェシカ、カーター、それにフィンチだった。ジェシカに「待っててくれ」と言えなくて、でもカーターには、最後の会話にはなってしまったけど、「死ぬときは君にそばにいてほしい」って伝えていたよ。あれを聞いた時、ジェシカを手放したリースとは変わったんだと私は思った。結局2人とも失ってしまったけど、最後に、フィンチだけは命を賭けて守り抜いた。その3人で十分だったと思う。

 フィンチはネイサン、リース、ルートを愛し、3人ともフィンチのために命を落とした。フィンチにとってはすごく残酷だと思ったけど、彼には永遠の女神グレースが待っていてくれているラストだったから、それがまあ救いなのかもしれない。

 

 ともかくS1の最初からずっと、リースの「現実との絆」としてはファスコが、「内面に寄り添う存在」としてはカーターが、「守るべき人」としてはフィンチがいるのに、モブとの恋愛マジでいらなかったです。ていうかリースは主役なわけだし、彼の恋愛という意味での愛を描くんだったら、その他の感情面での繋がりの対象であるフィンチ、カーター、ファスコとの絆を超えた(あるいは全く質が異なるけれど強固な)繋がりが相手との間に明確に見えないときついんじゃって思うんだけど。昔の少年漫画に登場する雑ヒロインじゃあるまいし。リースのちょっと色っぽいシーンが見たかったら相手はゾーイで十分だったし、あとはS2E3のソフィアみたいにリースに惚れたっぽい対象者が時々現れれば十分満たされたわ、こっちは。

 

 ただ今回一つ面白かったというか興味深かったのは、「私がやらなかったらみんなが死ぬの」「俺がやらなければ善良な人間が死ぬ」と、ルートとリースが同じことを話していた点かな。「私の過去を思えば、グッドエンドは高望みだわ」。多分、これはリースも思っている。この2人はフィンチを挟んで対極の位置にある存在で、だからこそ2人ともフィンチのために死んだのだろうと思いました。

 

 

POI:サイモン・リー(被害者)

本編:2014年10月21日あたり

フラッシュバック:

2001年10月13日、フィンチ(IFT、嘘をついたマシンのプロトタイプを消去)

2001年11月29日、フィンチ(IFT、ネイサンを騙したマシンのプロトタイプを消去)

2001年12月31日、フィンチ(IFT、フィンチを殺そうとしたマシンを破壊)