「一首鑑賞」の注意書きです。
153.暗やみのかたちに合はせ何度でも鋳直すことのできるこの指
(石川美南)
砂子屋書房「一首鑑賞」で澤村斉美が紹介していた歌です。
「暗やみがかたちを変えるたびにそれに合わせて何度でも鋳直すことができる」という意味合いなんでしょうか。「後ろ暗いことであればなんでもすることができる」っていうふうに読めそうなんですが、そういう理解でいいのだろうか、と悩みました。
「何度でも鋳直すことができる」という表現からは「やり直しがきく」という状況がイメージされるし、だから「今は暗やみのかたちに合わせたけど、やってみてダメだったらやり直せばいいや」っていう捉え方もできるように思えるのですが、一方で例えば鉄は溶かして鋳直しても鉄、というか、黒いものは黒いよ、って考え方もあるよなーと。かたちを変えても闇は闇だと。
他にも読み方ありそうですし、何が正解とかは分かりません。でも面白い歌だなと思って心に残りました。いろんな人の読み方見てみたいです。
ちなみに鑑賞文には
掲出歌は、「鋳直す」が読みどころだ。「暗やみ」が鋳型で、指はその型で鋳られてぽこっと生まれたかのようだ。普通「型」は固いものなのだが、「暗やみ」という触れないものを「型」に見立てているところが面白い。「暗やみ」の黒と、指の白くなめらかな質感を捉えた油絵を見ているような気持ちにさせられた1首。
とありました。
頬に触れ操縦桿を握る指私がきみに夜を飛ばせる (yuifall)
(サン=テグジュペリ『夜間飛行』)
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