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短歌タイムカプセル-石川美南 感想

書肆侃侃房 出版 東直子佐藤弓生・千葉聡編著 「短歌タイムカプセル」 感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

石川美南

 

丁寧に折り畳まれてゐる海を記憶に頼りながら広げよ

 

 これを読んだとき自分の記憶の中にある海を広げました。子供の頃、海沿いを歩くのが大好きで、今思えば信じられないけど夜中にこっそり抜け出して夜通しうろついたりしていた。子供の頃放浪癖があってよく親に探されてましたね…。今思えばなんて迷惑な子供なんだ。今でも旅行は大好きだし放浪したいのでこのコロナウイルス騒ぎのストレスすごいよ…。

 この人は神奈川県出身なので、私がイメージする海と彼女の記憶の中の海は全然違っているんだろう。だけど日本は島国で、人口のうちかなりの人に海の記憶が普通にあるというのが何だかしみじみと不思議に思います。アメリカとか中国とかロシアとか、世界中では大半の人が海を見ることなく一生を終えるんだろうに。寺山修司

 

海を知らぬ少女の前に麦藁帽のわれは両手を広げていたり

 

を思い出しました。

 

私だけ覚えておけば良い名なり 枕木に降る柔らかな雨

 

 これは誰の名前なんだろうか。普通に考えると「私だけが特別な呼び方をしていた恋人(と別れた後)」という感じがするのですが、ここで死んだ(鉄道自殺とか事故とか)誰かの名前という気もするし、歴史の中に埋もれてしまった誰か(先祖とか)という気もするし、人ではない何かという気もする。ペットとか。雨の名前かもな。そういえば「雨はコーラがのめない」っていう江國香織の小説あったな。雨って犬の名前なんだよね。伊坂幸太郎の「重力ピエロ」も冒頭から「春が二階から落ちてきた」だしね。春は弟なんだよね。何にせよ想像は広がるばかりです。

 この人の歌、何だか別の世界に連れて行ってくれるような不思議な感じがします。

 

 

藤壷を硝子玉ごと踏みしめて貝墟はいつも曇天なりき (yuifall)

曾祖母の名前初めて知った春ひとはいつまで生きるのだろう (yuifall)

 

 

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