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現代歌人ファイル その15-石川美南 感想

山田航 「現代歌人ファイル」 感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

石川美南 

bokutachi.hatenadiary.jp

半分は砂に埋もれてゐる部屋よ教授の指の化石を拾ふ

 

窓がみなこんなに暗くなつたのにエミールはまだ庭にゐるのよ

 

 異世界の面白さです。シュールレアリスム的というか…。なんだろう、こういうワールドを持っている人ってどんな人なんだろうなぁ。話すと意外に普通だったりするのかな。狂気は内に秘めているというか。それともだだ洩れなんでしょうか。解説も面白いです。

 

 穂村弘はかつて同世代の歌人をクラスに例えるなら学級委員は米川千嘉子だろうと書いたことがあるが、それに倣えば我々の世代の学級委員は石川美南だろうと思う。ただしやんちゃな生徒を叱りつけるタイプというよりは、いつの間にか輪の中心になってみんなを引き付けているタイプの学級委員である。

 

 とあるのですが、ええー??そうなの?学級委員の作る歌、こんな奇抜なのか(笑)。もっと優等生的なやつ想像してた。『桜前線開架宣言』で言うと、澤村斉美みたいな。

桜前線開架宣言-澤村斉美 感想 - いろいろ感想を書いてみるブログ

桜前線開架宣言-澤村斉美 感想2 - いろいろ感想を書いてみるブログ

これは、作者の人格的なことを言っているんですよね、きっと。ということは、輪の中心になってみんなを引き付けているタイプの方がこういう歌を詠むということで、とても興味深いです(笑)。

 

 この言語感覚、どこから来るんだろう?って思っていたのですが、東京外語大卒なのとも関連しているのかな。解説には「言葉に対するフェティシズム」とあり、

 

 前衛短歌的な幻視にみられる絢爛な美学はまるでない。(中略)いわば日常の裂け目に指を突っ込んで広げるような歌い方である。つまりは「世界の異化」である。水原紫苑は「文語でも口語でもない文体」と評したが、おそらく石川の中には「文語の世界」と「口語の世界」が並列で存在し「文語の世界」はいつでもどこかがねじれているのだ。そのねじれを形作ったのはおそらく深い文学的教養であり、言葉に対する偏愛的なフェティシズムだろう。

 

と、総説されています。確かに、なんというか、ビジュアル系幻視じゃないんですよね。「堕天使」とか「薔薇」とかじゃなくて「蛙」「茸」「マヨネーズ」だもん(笑)。

 その中に

 

桜桃の限りを尽くす恋人と連れ立ちて見に行く天の河

 

こんな相聞歌が入っていたりしてときめく。これって「放蕩の限りを尽くす」の言葉遊びですよね(笑)?桜桃の限り…。どんな恋人なんだろう…。太宰治の桜桃忌と何か関係が??「桜桃」という単語に意味があるの?それとも本当に純粋な言葉遊び?天の川、本当に見に行ったのかなぁ。

 

 

無人駅の切符入れ場に捥ぎ取った耳の軟骨ぎつしりとゐる (yuifall)

 

 

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