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現代歌人ファイル その20-浜田康敬 感想

山田航 「現代歌人ファイル」 感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

浜田康敬 

bokutachi.hatenadiary.jp

活字拾う仕事にもすでにわが慣れて「恋」という字の置場所も知る

 

 この歌は俵万智の『あなたと読む恋の歌百首』で紹介されていて知っていましたが、(活版印刷か何かの歌だったような…)「元日に母が犯されたる証し」の人

ぼくの短歌ノート-「日付の歌」 感想 - いろいろ感想を書いてみるブログ

と同一人物だったとは気づきませんでした。まとめて何首か読むと鬱屈した感じが浮き彫りになっていていいですね。リア充爆発しろ昭和バージョンみたいな。

 

日向にて語らう老婆二人にて手相見せ合うまだ生きむとす

 

 この歌笑った。まだ生きるのかよ!って。悪意を込めた歌なのかもだけど、逆になんか、お笑いっぽくなってます。突き抜けてるからかな。

 この人の歌、全体的に毒々しいんだけど結構笑えるんだよなー。「目の悪き客を待つ眼鏡店」とか「刑終え来て店をはじめし青年の花屋」とか、「元日に母」の歌もそうだけど、面白くないですか?そこかよ!みたいなさ。解説には

 

 浜田の鬱屈した思いは青春期を終えてもやむことはなかったようである。これらの歌は逆転の発想が効いている技巧的な歌だが、その発想の裏側には悪意がべったりと貼りついている。手相を見せ合う老婆や刑期を終えて花屋をはじめた青年といった美しいモチーフすらも容赦なくずたずたに切り刻んでゆく。こういった社会に対するとげとげしい態度が浜田の持ち味である。

 

とあり、確かにそうなんだろうとは思うんですけど、同時にちょっと戯画っぽいというか、風刺画みたいなブラックな笑いがあるんだよなー。悪意なんだけど笑えるの。この乾いた感じは、『桜前線開架宣言』で紹介されてた若手歌人の木下龍也や岡野大嗣のブラック感と似てる気がします。

桜前線開架宣言-木下龍也 感想 - いろいろ感想を書いてみるブログ

桜前線開架宣言-木下龍也 感想2 - いろいろ感想を書いてみるブログ

桜前線開架宣言-岡野大嗣 感想 - いろいろ感想を書いてみるブログ

桜前線開架宣言-岡野大嗣 感想2 - いろいろ感想を書いてみるブログ

 

しあわせは両手に受けるならいにて子が大の字になって寝る癖

 

 こんな人も子供が生まれるとこんな歌作っちゃいます。青春の輝きとか太陽の下を歩くことから逃げて逃げて逃げるんだけど、誰かを愛して家庭を持って、「しあわせ」を「両手に受ける」わけです。この人の人生が幸せになってよかったなと思う反面、ブラックユーモアはもう発揮されないのかなーとかって考えてしまう。絶対、悪意っていうかブラックな笑いが心にきざすことあると思うなー。子供が生まれたからって人が変わったようにハッピーライフなわけないもん。

 いにしえの2chで「吹いたスレタイ貼ろうぜ」みたいなスレッドがあったのですが、「赤ちゃんとかいうウンコもらすハゲ」っていうスレタイ笑ったわ。「美しいモチーフ」を「容赦なくずたずたに切り刻む」の究極はやっぱ、自分の子供ではないでしょうかね。

 

 

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