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現代歌人ファイル その163-野口あや子 感想

山田航 「現代歌人ファイル」 感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

野口あや子 

bokutachi.hatenadiary.jp

アクリルの白いコートを汚す雨 好きってそういう意味じゃなかった

 

 これはお腹が痛くなるような感じがする歌ですね。榎本ナリコの『センチメントの季節』思い出しました。なんか、ずっと憧れてて好きだった先輩に、多分振り向いてもらえないだろうと思いながら「好きです」って告白したら、「好きだったらいいよね?」っていきなりホテルに連れ込まれたみたいな感じですよ。自分でした想像で自分で具合悪くなってしまった。。10代って辛いなぁ。

 

 この人は『短歌タイムカプセル』でも『桜前線開架宣言』でも登場しましたが、短歌研究新人賞を受賞した時は現役高校生だったそうです。

 

真夜中の鎖骨をつたうぬるい水あのひとを言う母なまぐさい

 

とかは母親の恋人なのかな。「好き」とか「母親」に対する潔癖さを持ち合わせている若い時代だからこそ、こういうひりつくような言葉が生まれるのかなって思いました。

 

窓ぎわにあかいタチアオイ見えていてそこしか触れないなんてよわむし

 

 これもいいですよね。『桜前線開架宣言』で山田航がこの人の歌から引いてきたキャッチフレーズが「そこしか触れないなんてよわむし」でしたけど、どきっとするような言葉遣いです。解説には

 

「しんじつから目をそむけませんか」「えいきゅうにしなないにんげんどうですか」「好きってそういう意味じゃなかった」など、それだけを単独で抜き出しても人目を引くような、どきっとするフレーズである。モラルとアンモラルの隙間を巧みに衝く言葉選びに優れている。

 

とあります。

 

 引用されている歌、視覚で捉えたものと心で思った情景が組み合わさっているものが多いなって思いました。そこにちょっと発想の飛躍があるとこが面白いんだろうな。この飛び方が上手で心に残るんだなって思います。

 

 何度か紹介した歌人ですが、いつも若いころの歌ばかり引用してきたので、最近はどんな歌を詠んでいるのだろうとふと気になりました。今は30代後半ですね。まーでも雑誌とかで色んな人の最新作追うのってほんと苦手なのでいつか心に余裕がある時にでも歌集読んでみようかしら…。多分すごいモテるんだろうなーとか思いながら歌読んでました(笑)。

 

 

消費されてくだけのキス喫いさしのショートホープが煙に変わる (yuifall)

 

 

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