「一首鑑賞」の注意書きです。
16.本棚のむこうでアンネ・フランクが焦がれたような今日の青空
(岡野大嗣)
岡野大嗣というと、
骨なしのチキンに骨が残っててそれを混入事象と呼ぶ日
みたいなスタイリッシュブラック短歌のイメージが強かったのですが、これ読んで泣きたくなりました。もしかしたらアンネ・フランクは曇り空にだって雨の空にだって焦がれたかもしれないけど、青空、その、誰にとっても(多分作者にとっても)美しい青空の下で、アンネ・フランクのことをこの人が考えていたというその一点だけで胸が締め付けられた。
解説にも
歌を読み終えた瞬間、胸が詰まるような思いにさせられる。ああ、本当にどれほど彼女は広い青空の下で駆け廻りたかったことだろう。
美しい景色、満たされた気分、健康な自分……そんなときにアンネを思い出すことは、なかなか難しい。34歳という若い作者が、「青空」の向こうに、遠い昔に収容所で命を落とした少女を思う心の美しさに打たれる。
とあります。この人の、
母と目が初めて合ったそのときの心でみんな死ねますように
という歌、それから中島裕介の
モルヒネを打たずに心を縫うような痛みだ今日の空の高さは
を思い出しました。
殺し合う三千年を紐解けば立ち上がりくる骨の寝台 (yuifall)
短歌タイムカプセル-岡野大嗣 感想 - いろいろ感想を書いてみるブログ