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「一首鑑賞」-17

「一首鑑賞」の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

17.小鳥図鑑なにゆゑ買ひしわれかともひと月経ちて思ひあたらず

 (田中穂波)

 

 砂子屋書房の「一首鑑賞」で松村由利子が紹介していた歌です。

sunagoya.com

 松村由利子の「一首鑑賞」コーナー、面白くてたくさん引用してしまいます。この歌も好き。後から、なんでこんなことやったんだろう?って自分のことなのに全く分からないこと、時々ありますよね。(そしてそれを仕事でやらかすとマジで苦悩する。。)

 解説に

 

この歌の作者は、ひと月前に買った「小鳥図鑑」を眺めながら、不思議でならない。「いったい、どうしてこんなものを買ってしまったのだろう。小鳥を飼うつもりもないのに……」。分子レベルで考えなくとも、人は刻々と変わってゆくのだ。ふいに光が射すように、何かに命じられたかのように思いがけないことをするのが人間であり、だから面白い。私もある時、ヒールの高い真っ赤なサンダルを買った翌日に、「なにゆゑ買ひしわれか」と困惑した覚えがある。不思議な買い物ばかりではない。少し前に作った歌を読み、こんなヘンな「われ」が自分の中に存在するのかと驚くことは、歌をつくる人には多かれ少なかれ、あるのではないだろうか。

 

とあります。自分の中にこんなヘンな「われ」が存在することに驚くどころか、自分が作った歌読んで、何言ってんのか分からないこともあります(笑)。これだから思想も信念もないやつは…。なので、作者であっても歌の意味を100%理解しているわけではないのではないだろうか、と私は勝手に思っていますが、プロの歌人にそういう人はいないのかもしれませんね。。自分で理解できないことは書くな!と、論文のような指導されるのかも。

 枡野浩一の本には「後から覚えていないような歌は駄作」みたいに書いてあったような気がするし、きっと後から読んで意味が分からない歌とかないんだろうなーって思いました。マスノ式「かんたん短歌」って全然意味分からない歌ってないですしね…。

 しかしながら、書いたときは分かっていても後から読むと意味が分からんということは、論理に裏付けされていない文章だとままありますので、悩ましいところです。

 

 それにしても「小鳥図鑑」は、小鳥を飼うつもりが全くなかったとしても楽しそうだなー。感想それだけなんですけど、不意に見つけて読んでみて、何で買ったかはよく分からないけど買った自分ありがとう!ってなりそうだなと思いました。

 

 

矢のように額をつき破っていく名前を知らない衝動がある (yuifall)