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桜前線開架宣言-澤村斉美 感想

左右社 出版 山田航編著 「桜前線開架宣言 Born after 1970 現代短歌日本代表」 感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

澤村斉美

 

 全体のトーンが淡々としているのですが、一つ一つの歌がどれもしみじみ「いいなぁ」って思わせる感じです。伝わらねーな、この感想じゃ(笑)。『舟を編む』(三浦しをん)みたいな感じですよ。

 ストーリー的には、人文系の大学院生が研究を諦めて就職し、校閲、訃報記事を担当するという流れのようです。実際、京都大学大学院文学研究科美学美術史学専攻博士過程中退、とあるので(経歴長いな…)、文学科で博士課程まで行ったのかぁ。文系で博士号目指すって相当大変だろうな。

 ってことは、

 

「一日中放課後みたいなものですね」梅雨の雨のなか軽くうなづく

 

っていうのは、もしかしたら誰かに「へえ、人文系の大学院生なんて遊んでるみたいなものですねー」って言われた感じの文脈なんだろうか。。軽くうなづく、がなんか切ないなぁ。こういう、「それって何の役に立つの?」的な言い方ってほんと嫌いだな…。

 でも、「十六の弟の悩みの遠因としてわれはあり」とか「減りやすき体力とお金」「フリーターでもなく学生でもなく」という自己認識もあり、生活ってきれいごとじゃ立ち行かないもんな…というやりきれなさもあり。。文系のたいていの研究ってあんまりお金にならないからなぁ…。お金も時間もかかるし。

 

からだの中の柊を見てゐるやうな君のまなざし 逢ひたいと言ふ

 

 は不思議な歌ですね。君に見つめられているのに、君は「逢いたい」と言うのか。なぜなんだろう。からだの中の柊に逢いたいのかな。今調べたら「柊」って触るとヒリヒリ痛い「疼ぐ(ひいらぐ)」が語源なんですね。。この歌もどこかしら痛いような気がするのはそのせいかなぁ。

 

ばか欲望が降つてくるわけないだろう麦茶のパック湯に沈まずに

 

 も好きだな。というより全体的に好きなのですが。こういう落ち着いた女性好みです。こんな人に「ばか欲望が降ってくるわけないだろう」とか言われたらときめくわ(笑)。

 

 

烏瓜咲くたび「明かぬ夜はない」と言はれ七つの夏を見送る (yuifall)

 

 

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