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03x09 - The Crossing 感想

 POI感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

 警察を敵に回しながらクインを連れてFBIのビルを目指す2人。

 この回、傑作なんですけど、一つだけ、リースのメロドラマ感がちょっと…。酔いすぎじゃない??吊り橋効果かよって思ってしまってちょっと…。カーターとテンションが違いすぎて、どう受け止めていいかよく分からん。

 

I'm sorry I got you into this.

巻き込んでごめん

You get us into Manhattan, I'll take Quinn to the fed building alone.

マンハッタンまで一緒に来てくれたら、あたしは一人でクインをFBIに連れて行く

What is it about you, Joss, makes you want to do everything on your own?

ジョス、君はどうして何でも一人きりでやろうとするんだ?

What is it about you, John, that makes you want to save everybody else's life but your own?

ジョン、あなたこそどうして自分以外の全員の命を守ろうとするの?

Mr. Reese?

リース君?

Excuse me.

失礼

I have some very bad news.

とても悪いニュースがある

Guessing this is about a number.

番号のことだろう

Several, actually.

番号は一つではなく複数だったが

It took me a while to realize that they were all prior aliases for one person.

それらが全て、ある一人の人物の過去の偽名を指し示していることに気付くのに時間がかかった

You, Mr. Reese.

君だよ、リース君

Something wrong?

どうかしたの?

No more than usual.

いつものことだ

 

 シモンズの「スーツの男は今夜死ぬ」発言によって、リースの番号が出てしまう…。HRだけでなくNY中の悪党がリースを狙ってきます。その結果地下鉄内でチンピラに絡まれるんですが、なぜか嬉しそうなリース。「何が面白いの」と尋ねるカーターに、「地下鉄のチンピラなんて、君と初めて出会った時みたいだ」と返します。でもその後地下鉄は止められ、クインに携帯を壊され、フィンチと連絡が取れなくなります。マンハッタンまでのルートは2つ、高速道路とロングアイランド鉄道。バックアップなしで移動するリースたちを、ショウとファスコは2手に分かれて追跡することに…。

 

 この回、何かと「フィンチが助けてくれる。すぐに援護が来るだろう」「フィンチ、誘導してくれ」とリースがフィンチに絶対の信頼を示してくれるとこすごくよかったし、仲間がそれぞれ自分の信念に従って動いて絆が強くなるところもすごく好きでした。人手が足りず、色々な制約もあって連携も十分に取れない中で全員がそれぞれ違った行動を取り、運命が交差していく。だからタイトルがCrossingなのかな。

 と思ったんですが、Wikiには

 

The Crossing is literally the crossing made by Carter and Reese to bring Quinn to the FBI.

 

とありますね。つまり、「交差」というよりも「渡航」のCrossingのようです。でもなー、日本語タイトル「渡航」だったらちょっと意味分からんですよね…。

 ちなみにこのストーリーは1977年の映画 The Gauntlet のミラーになっているのだとか。Wikipediaによると、この映画は

 

ガントレット』(The Gauntlet)は、1977年のアメリカ映画。証人護送を命じられた刑事と事件の揉消しを謀る追手の対決を描いたアクション作品。

 

だそうです。

 あとは途中でショウに尋問されたHRの警官が

 

You might kill me, but I cross Simmons, he'll hunt down my wife, my sister.

あんたは俺を殺すかもしれない。だが俺がシモンズを裏切れば、奴は俺の妻や妹を殺すんだ

 

と発言するシーンがあり、Crossは「裏切り」の意味でもあるのかもしれない。

 

 さて、リースの番号が出て動揺するフィンチですが、合間にルートのお世話をしに訪れます。

 

Why are you still awake? Not bad dreams, I hope.

どうしてまだ起きてるの?悪い夢を見たんじゃないといいけど

I heard it said once that a pregnant woman may see the face of her unborn child in her dreams.

身ごもった女性は、彼女のまだ生まれていない子供の顔を夢に見ると聞いたことがある

I saw every digit, every line of code as I created it.

私はそれを作った時、全ての数字、全てのコードを見ていた

But you've changed that, haven't you?

でも君が変えたんだろう、違うか?

You found a way to alter the DNA to rewrite the code.

君はコードを書き換えてDNAを書き換える方法を見つけた

Is that how you get it to speak to you?

そうやって君はそれに君に話しかけさせているんだろう

You have the relationship with her that you wanted.

あなたは彼女と、あなたの望む関係を作った

She respects that.

彼女はそれを尊重してる

My relationship is more... intimate.

私の関係はもっと…親密なの

Sorry I asked.

聞いて後悔した

Why are you asking? What's gotten you so upset?

なぜ聞くの?何があなたをそんなに動揺させているの?

Is the big lug in trouble? Has his number finally come up?

あの大きなまぬけが困ってるのね。彼の番号が上がった?

I don't really care for the man myself, but he means a great deal to you.

私自身はあの男がどうなろうが興味ないけど、彼はあなたにとってはとても意味がある人だものね

So if you can see it fit to set me free from this cage, I'll return him to you, unharmed.

だからもしあなたが私をこの檻から出してくれるなら、私は彼をあなたのところに返してあげる。無傷で

How could I ever let you go when I know with an almost absolute certainty that bad things will happen?

ほとんど確実に悪いことが起こると確信できるのになぜ君を外に出すことなどできるんだ?

Bad things will happen regardless.

どちらにせよ悪いことは起こるのよ

The question is, are you gonna let them happen to your friend?

問題は、あなたが友人にそれを起こさせるかということ

Come on, Harry.

ねえ、ハリー

Let's not pretend that John is your first helper monkey.

ジョンがあなたの最初のヘルパー・モンキーだなんてふりはやめて

Exactly how many guys did you go through before him?

彼の前に何人の男がいたの?

 

 なんてめためたした会話なんだ…。前半は姑と嫁みたいだし(「私がお腹を痛めて産んだ息子よ!」ってフィンチと、「でもあたしは彼と寝てんのよ」ってルート)、後半は女同士のフレネミーみたいな(「あんな男に熱上げてるけど本気なの?どうせ初めての彼氏じゃないんでしょ?」っていう…)。

 でも、フィンチが「マシンは自分が産んだ子供」みたいな発言したの、かなりどきどきした。ずっと望んで、夢見て愛し続けた子供だったんだと思った。考えて作ったんじゃなくて、自分の中で生まれ、とめどなくなったコードが外に出てきたんだろうな。幸せな時間だっただろう。大事に育てて、敵からの逃げ方も教え込んで。で悪い女に引っかかると(笑)。S4でフィンチはマシンにFatherって呼ばれてるけどママっぽいよね…、なんかさ…。パパはもちろんネイサンだよ。

 

 リースを助けるためにルートを檻から出してマシンの協力を仰ぐべきか、って決断を迫られるシーンがこの後何度か出てきます。フィンチはギリギリまで、というよりもカーターを失い、リースを失いかけるまで決断できない。

 私はフィンチ擁護派なんで、気持ち分かりますけどね…。ルートはフィンチの目の前で直接的間接的に何人も人殺してるし、フィンチ自身もひどい目に合ってるし、しかもマシンはルートに色々指示してくるけどルートが欲しい情報をくれるとは限らないし、だからルートを出したところで本当に役に立つかも未知数。単にゴッド・モードの人殺しを野に放つ結果になるだけかもしれないもん。そもそもフィンチはマシンを誰か一人の役に立つようには設計してないし、マシンがこの状況を望んだ形で助けてくれるとは限らない。そしてフィンチにはもはやマシンの意図も分からないから。

 てかここで「よし!マシン!カモン!」ってキャラだったらそもそもルートを閉じ込めてないしマシンをあんなふうに設計してないだろ。自分だけアクセスし放題にして自らゴッド・モードだろ。そうじゃないもん。めっちゃストイックなんです。そんなフィンチがリースを失いそうになって初めてルートに頼るとこがね…、滾るんですよ…。

 

 とにかくルートの力を借りずになんとか捜索しているところで、リースとカーターが自力でマンハッタンに突入したことをファスコが確認しますが、今度はファスコがHRに捕まります。フィンチは今度は、ファスコの救出かリースの援護かを選ぶことになる。番号が出ているリースよりも、孤立無援のファスコを優先してショウに向かわせます。何かが起こるたびに毎回ギリギリの決断を迫られる感じが…。フィンチの気持ちを考えるとつらくてつらくて…。

 でも今度はリースが携帯をゲットしてフィンチと連絡が取れるようになります。ファスコがHRに捕まってショウを向かわせているから援護は出せないと言うしかないのですが…。

 

 この後ショウとファスコのパートが、またかなりぐっとくる。ショウはファスコを助けようと、ファスコの監禁場所を知るためにHRの一員を尋問するのですが口を割りません。「あんたは俺を殺すだけだが、もしシモンズを裏切れば俺の妻、妹が殺される。俺の愛する人間が皆殺しにされるんだ」その言葉を聞いてショウはファスコの息子のところへ向かいます。

 ファスコはカーターとの約束を守るために、証拠の在処を絶対に教えません。そのために息子が殺されることになるんですが…。ファスコはシモンズに嘘ついたとき、息子はどうなると思ったんだろうか。まさか本当に殺されはしないだろうと思っていたのかもしれない。だって、警察で一緒にやっていた仲間ですよ?

 私本当に不思議なんですが、HRは後ろ暗いところで繋がっていた悪徳警官の集団だったのかもしれないけど、だからといって同僚やその家族まで殺すだろうか。シモンズみたいにやりかねない人はいただろうけど、全員が全員そうだろうか。そんな一枚岩じゃないのでは??実際ラスキーみたいについていけなくなった人もいるし、「子供も殺せ」って言われて「OK!」ってできるかなあ。まあ自分の家族も人質に取られているような状況だったんだとは思うんですが…。あとHRの件が佳境に差し掛かるたびに、S1で登場したシモンズの家族のことが何度も脳裏をよぎるんですが…。めっちゃ綺麗な奥さんとかわいい娘が2人いなかった??あの家族どうなったん??

 

 HRの一人がファスコの息子のところへ行って、銃を向けながら電話をかけてきます。ファスコを見張っている男が、「息子の死にざまを聞かせてやる」と携帯を耳に当てます。

 

Lee... it's gonna be okay.

リー、大丈夫だ

I'm right here with you, okay? I'm right here with you.

父さんはお前とここにいる。いいか?一緒にいるから

Just close your eyes, all right? I love you. It's gonna be okay.

ただ目を閉じろ。いいか?愛してる。大丈夫だ

 

 ここで銃声が響き、ファスコがすすり泣きます。このシーンほんと見ていて辛い。どうなるか知っていても涙出てきます。そして、電話口からショウの声が聞こえてくる。

 

Lionel. It is gonna be okay.

ライオネル。大丈夫だよ

Lee is fine, but the guy they sent to kill him isn't doing so good.

リーは大丈夫。でも彼を殺しに来た奴は、あんまり大丈夫じゃないね

Figured these scumbags would come after your kid.

こいつらがあんたの子どもを殺しに来るって分かったんだ

Thank you, thank you.

ありがとう、ありがとう

But, Lionel, you understand this means I can't be there for you.

でも、ライオネル、だからあたしはあんたを助けには行けない

I had to choose.

選ばなきゃいけなかった

Figured you'd want me to come here instead.

あんたは、あたしがこっちに来る方を望むと分かったから

Yeah, you did good. You did good.

ああ、そうだ、その通りだよ

 

 フィンチだけじゃなく、ショウもギリギリの選択をしてどう動くかを自分で決めてリーを助けてくれて。ファスコは生きる気力を取り戻したのか、折られた指で手錠を抜け、自分を撃とうとした男を逆に絞殺します。この時の鬼気迫る表情が…。ファスコの拷問のシーン、全体的に鳥肌が立つ迫力です。この2人のやり取りもほんと好き。

 

 一方カーターとリースの方はなんか様子がおかしいっていうか…。死を覚悟した時のことをお互いに打ち明け合います。軍にいた時の経験や、カーターがテイラーを帝王切開で産んだこと、辛かったけれど子供を持ってすごく幸せだったことを話します。

 

It was the worst moment of my life, followed by the best.

人生で一番悪い瞬間だったけど、その後最高の瞬間が訪れたの

What about you, John? What was your closest?

あなたは、ジョン?死を覚悟したのは?

That's got somebody's name on it?

これ、誰かの名前が刻んである?

Mine.

俺だ

There was a time I thought about saying good-bye.

人生に別れを告げようとしていた

Lost someone. Lost myself.

ある人を失い、自分自身を失って

What happened? What stopped you?

何が起きたの?どうしてやめられたの?

I got in a fight with some punks on a subway.

地下鉄でチンピラと喧嘩したんだ

Cop detained me. He brought me to you.

警察に捕まり、彼が俺を君のところへ連れて行った

You changed my mind, Joss. You changed me.

君が俺の気を変えたんだ、ジョス。君が俺を変えた

 

 リースがカーターにキスし、いい雰囲気になるのですがフィンチの通信で中断し、カーターはリースの後ろ姿を見て、戸惑ったような、初めて何かに気が付いたような顔をします。「…ええっ??」みたいな。

 いや、こっちがええっ??ってなったわ。「君が俺を変えた」ってなんやねん。リースを助けて生きる目的を与え、生きる気力を取り戻させて人生を変えたのはフィンチじゃん。納得いかん。

 

 これは別に私が腐女子だからそう思うのではなく、だってリースがカーターのみの影響で自殺を思いとどまり、生き方を変えたとは思えないんだもん。カーターに出会って釈放された後もホテルで飲んだくれてたし、カーターに「人は殺すな」って言われてもばんばん撃ちまくりだし、「殺さない」って約束したのに悪人を交通事故で殺しといて「死亡ゼロを目指したのに」発言、「俺はモラルのベンチマークじゃない」発言、目的のためなら手段を選ばず、さらに言うならこの後もシモンズやクインを殺すために追跡したりして、そんな変わったかなあ。変わったのはファスコでしょ。かつては「悪い奴は殺されても仕方ない」って言ってたのに、シモンズを逮捕しに行ったんだから。

 これ、私が納得していないだけで実際リースはカーターと出会って変わったんだ説は当然あります。S1E1のラストシーン、リースはカーターを見てたので、最初から彼女のような人のためにがんばろうと思っていた可能性はあると思うし、何度も彼女の正義感や真っ直ぐさに救われていると感じることはあった。でも、リースは別に変ってはいないけどカーターが好きだからそう思い込んでいる説も根強く私の中にあってまだ決着がついてない。こいつ、自分のことを自分で分かっていないんじゃないか?アイリスと別れる時も「君は今までの誰よりも俺を分かってくれていたよ」とか言っててはあ?何言ってんのこの人??って思ったもん。

 で色々考えた結果、リースはジェシカに囚われていた思いを今はカーターに向けている、という意味も込めて「君が俺を変えた」と発言したのかなーって思ったんですが、これもなー。。結局この後、カーターを助けるために死のうとするじゃん。一緒に生きて行こう、って方向にはならないじゃん。S3前半のリースの突然のメロドラマムーブがどうも腑に落ちない。繰り返しますが、カーターに死亡フラグを立てているようにしか見えないんですよ。このキスといいさ。カーターはそれまで息子の話してたじゃん??世界で一番大切な人はテイラーだし、失った恋人のために戦っているのにキスする??

 その後の驚いたような表情、カーターはここで初めて、「自分とリースの間にもそういうことがありうるんだ」ってことに気づいたという感じがする。これまで、「スーツの男」で「友人のジョン」だった彼が、ロマンチックな関係の対象としてようやく候補に挙がってきた感じ。「ああ、私にはこの人がいた、ずっと見守ってくれていた」、ってようやく気付いたみたいな。だから、HRの件が片付いていたら本当にそこから何かが始まったのかもしれない、とは思うんですが、一方でリースの言動が吊り橋効果にしか見えない苛立ちもありなんとも言えません。

 本当はさ、もっと普通の時に、S4E20で言ってたみたいに、ジェシカの話や別れた夫の話とかしながら心をさらけ出し合うべきだったんだよね。「異常な状況下で結ばれた男女は長続きしない」っていう映画『スピード』の名言が頭をよぎる私です…。

 

 ちなみにこのキスはリースの中の人のアドリブだったらしく…。いや、確かにキスも浮いてたけど、S3前半のリースのメロドラマムーブそのものが浮いてたから、ジムさんのアドリブだけが悪いとは思ってない。てかこの流れだったらキスしてもおかしくはないし、流れそのものが死亡フラグみたいで嫌だったって話です。

 Wikiには、「このキスは恋愛関係を意味しているのではなく、2人の深い絆を表している」とか書いてますけど、アメリカ人って恋愛関係じゃなくても唇にキスしちゃうわけ??なんか全然分からん。文化の違い??それがアリだったらS4E11 If-Then-Else でショウがルートに最後に一瞬だけキスしてくれた意味が全然分からなくなっちゃうよ。更に言えば、”深い絆”でキスするんだったらフィンチにもキスしろよ!!と、若干の怒りを覚える(笑)。あんなキスしといて恋愛とは無関係っていうのはあまりにも、言い訳がましいというか…。リース→カーターの恋愛感情は絶対あったと思うし、敢えて目を逸らすことじゃないのでは。

 まあともかくリースはカーターを助けるために囮になります。自分の名前を刻んだ弾丸をカーターに残して。「俺の命を君に捧げる」ですね。

 

I'm sorry, Joss, but I can't lose you.

すまない、ジョス。でも俺は君を失うことはできない

They'll kill you.

彼らはあなたを殺すわ

They'll try, I'm counting on it.

殺そうとするだろうな。どうにかするさ

Listen, I'm gonna draw them out. You make a run for it with Quinn.

聞け、俺は奴らをおびき出す。君はクインを連れて逃げるんだ

Anything happens to you, I swear, I'll hate you forever.

あなたに何か起こったら、誓うわよ、あたしはあなたを永遠に恨むわ

You're stuck with me, remember?

じゃあ君は俺から離れられない、そうだろ?

You make sure Quinn gets what he deserves.

クインに報いを受けさせるんだ

See you on the other side.                           

あの世で会おう

 

 このくだりはぐっと来ました。正直「君が俺を変えた」だのキスだのはいまいち納得いってないですが、この会話は、心からのやり取りだと思ったから。S1でカーターの番号が出た時からずっと「失うことのできない人だ」って言っていたし、カーターを助けるために命を張るだろう。まあ、でもだからこそ「変わってない」って思うんだけどね!ここで、背中を預け合って一緒に生きて行こうってなってほしかったのに。君のために生きたいって。

 

 さて、リース君のやり取りをおそらく全て聞いていただろうフィンチはとうとう現場に出向きます。ルートに「もう戻ることはないかもしれない」と告げて。ルートは「あなたの作品を失うことになるわ」と言って、フィンチは「マシンは無事だ」と返す。「マシンじゃない。お悔やみを言うわ」とルート。でもフィンチはルートを出すことなく、リースとカーターのいる死体安置所へ向かいます。

(ちなみに亡くなったのはカーターだったので明らかに「フィンチの作品」ではないよなー。やっぱり、マシン的にもカーターはこの日死ぬ予定ではなかったのだろうと思う)

 フィンチがスタンガンで見張りを襲い、電源盤を直してモニターを回復させたところでリースから「弾切れだ。時間もない。カーターを頼む」と連絡が入ります。フィンチは「もちろんだよ、リース君」と答え、この後の展開はちょっと面白い。モニターで死体安置所に行動可能な戦闘員がすでにいないことを確認したフィンチはカーターに全館放送で「カーター刑事、そこは安全だ。建物を出ろ」と指示し(カーターがそれ聞いてニヤって笑うの好き)、同時にHRではない普通の警察官に「銃を振り回している男がいる」と通報してリースを逮捕させます(笑)。「リース君、死ぬよりは投獄の方がいいだろう」これにはリースも苦笑。「そうだな、ありがとう」このシーン好き。マシンの力を借りなくてもやり切りましたよね。

 

 この回ほんと、最後の土壇場まではハッピーエンド風なんですよね。ファスコとその息子も助かり、カーターはクインをFBIに引き渡し、リースは殺されずに逮捕され、リースとカーターの2人はまた警察署で出会います。

「私はカーター。あなたは名乗らなかったわね」

「名前がいるのはヤバい時と決まってる。つまり、俺は今ヤバいのか?」

 最初のやり取りを繰り返す2人。ここから新しく2人の関係が始まっていく…ように見えるシーンでもありますが、(この後サマリタン編へ突入することも相まって、)ああ、今までのPOIはここで一度終わったんだ、と感じた。

 ちなみにカーターが撃たれる場所は、S1E1でフィンチのお付きの者がリースを連れていくあの場所らしいです。

 

 夜になってリースが釈放され、「シモンズだけが逃げている」「時間の問題だ」と話す2人。リースをフィンチが迎えに来ます。

 この後のシーンすごい悲しいのですがまず最初にどうしても突っ込みたいんだけど、ここでまたリースがカーターを口説きだすんだけどさ、なんでフィンチの目の前でやんの??地下鉄でも死体安置所でもちょっとラブなやり取りになるとフィンチの緊急通信が入って中断されたじゃん…。安全な場所で2人きりのときにやってくれよ。フィンチがいるときにやると絶対何か緊急事態が起こって中断されることになんの!!3回目だからね!!フラグ立てんな!!

 案の定、

 

If my number was up, I'm just glad I was with you.

もし俺の番号が出たら、その時は君がいてくれると嬉しい

 

このタイミングで公衆電話が鳴り始めます。足を止めるフィンチ。

 

No one I'd rather be with at the end.

最後の瞬間、君よりも一緒にいてほしいと思う人はいない

 

ここでシモンズに2人とも撃たれます。

 

 日本語だと、「番号が出た時君が一緒でよかった。他の誰より心強い」になっていて、2人でピンチを切り抜けた状況について振り返っているように思えたのですが、原文を見るともっと強いニュアンスというか、「これからもピンチの時は一緒にいてほしい、死ぬときは君にそばにいてほしい」という言い方なのではないか?過去のことではなく、未来の話をしていると感じました。この If my number was up, I'm just glad I was with you. って、過去形じゃなくて仮定法過去だよね。もしかしたらここでようやく、「背中を預け合って一緒に生きていきたい」ってリースが生き方を変えた瞬間だったのかもしれないと、原文を読んで初めて思いました。「君が俺を変えた」んだと。

(ひとつ気になるのは「my number was up」の意味をカーターにちゃんと説明したのかどうかってことだけど、カーターはマシンの存在に気づいて黄枠になってたし、釈放までの間に事情は説明したのだと解釈する)

 でもまさにその時カーターが命を奪われてしまい…。カーターは、最後の瞬間一緒にいたいのはリースじゃなかった。そう思うよ。何度もテイラーのことを呼んでいた。

 

Joss, Joss, I'm here.

ジョス、ジョス、俺はここにいる

It's okay.

大丈夫だ

I need--

会わなきゃ…

I need to see my boy.

あの子に会わないと

I need to tell him--

彼に伝えなきゃ

And you will, and you will.

伝えるんだ、自分で

Just stay with me.

俺と一緒に

Promise me you'll look in on him.

彼を見守ってくれるって約束して

I won't have to 'cause you're gonna make it, okay?

君が自分でするんだから、俺がそんなことする必要はない。分かるだろ

Promise me you'll tell him.

彼に伝えて

He knows, Joss.

彼は分かるよ、ジョス

He knows.

分かる

John... don't let this--

ジョン…これをダメにしないで…

Joss--

ジョス…

 

 この間ずっと公衆電話が鳴り続け、フィンチは立ち尽くしたまま一歩も動けない。

 

 カーターの最後の言葉、邦訳では「こんなことで…」になってました。原文ではDon’t let this…だから、「この…を??させないで」ってことになります。おそらくだけど、「私が死んだからってあなたのすべきことをやめてはいけない」って言いたかったんじゃないかな。今まで誰かの命を救うためにやってきた全部、フィンチと2人でやってきた「仕事」を、こんなことでやめてしまわないで、って。

 Wikiによると、Don’t let this change youと言いたかった説があるそうです。「こんなことで自分を変えてしまわないで」か。

 

 この展開、誰が悪かったのだろうか。リースは後でマシンを責めるけど、マシンにとっては「リースの番号をあげた」状態からまだ取り下げてなかっただけかもしれないし…。シモンズは

 

Your time's up. Told you I'd end you.

そこまでだ。お前を終わらせると言っただろう

 

と言って発砲します。ここでカーターは

 

No, not today!

だめ、今日じゃない!

 

と言って撃たれます。

(字幕では「シモンズ!」吹替では「そうはさせない!」となっていましたが)

 

リースの番号が上がっている

→つまり、24~48時間以内に何かが起こる

→シモンズが生きていて、まだ脅威が排除されていない(番号は取り下げられていない)

→シモンズはリースを狙いに来ている(「スーツの男は今夜死ぬ」発言からまだ48時間は経過していない)

→「お前を終わらせると言っただろう」

→(その直前に、「自分の番号が上がったら君にいてほしい」と発言していたリース)

→「今日をその日にはさせない!」

→カーターはリースと一緒に(リースをかばって?)撃たれる

 

 ということなのでは?つまり、対象者はリースのままだったからマシンの知らせが遅れたのでは、って思ったんです。だからカーターが撃たれることが直前まで予測できなかったのではないかと。カーターがリースと一緒に出てくるのをカメラで確認してようやく警告を出したのでは、と思った。カーターが倒れた時、一瞬映像が監視カメラ視点(マシン視点)になるのですが、この時リースもカーターも顔認証枠が一切出ていませんでした。マシンすらこの展開に呆然としていたように感じられます。

 その一方で、マシンは突発的犯罪は予知できない、のですが、シモンズが銃を持って街中うろついている以上、それは予知しうる出来事だったのかもしれないし…。でもそれは逆に言うとマシンじゃなくても予測できたのでは?シモンズがまだ捕まってないのは全員が知っていることだったはず。浮かれて丸腰だったのも全員の責任では?番号が出なければ何も起きないと、逆にマシンの予知に胡坐をかいていたのでは?

 

 次回「悪魔の取り分」でフィンチのカウンセリングのエピソードが出てきて、多分、フィンチはカーターの死についても自分をめちゃくちゃ責めたんだろうと思った。マシンを作ったことも、マシンがカーターの死を予知できなかったことも、自分が対策を取らなかったことも。それにもしかしたら、ルートを閉じ込めたままにしなければ何かできたのかもしれない、ということも。ルートはフィンチに対して、「悪いことは起こるの。問題は、“あなたが”あなたの友人にそれを起こさせるかどうか」と発言してる(日本語では「あなたの友人にそれが起こるかどうかよ」になってましたが、原文ではもっと「フィンチに責任がある」ってニュアンスだった)。

 でも本当にそうかな。マシンやフィンチが悪いのかな。それは違うよ、やっぱり。明らかにシモンズが悪いし、それに、マシンでなくても彼が復讐に来る可能性は想定できた。リースはその現実から目を背けてる。そう思った。

 

 ところで先日久しぶりにS1E3見返してたんですが、ラストシーン近くでカーターがリースに “Can you hear me?” って尋ねるシーンあってとてもどきっとしました。この言葉、作中何度も繰り返されますが、最初に出てきたのはカーターからリースだったんだと。やっぱこの2人の絆は特別だったんだなって改めて感じました。

 

POI:ジョン・リース(被害者?)

本編:2013年11月13日

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