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「一首鑑賞」-115

「一首鑑賞」の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

115.てふてふのてんぷらあげむとうきたてば蝶蝶はあぶらはじきてまばゆ

 (渡辺松男

 

 砂子屋書房「一首鑑賞」で石川美南が紹介していた歌です。

sunagoya.com

 歌の内容はわりと猟奇的?なのに、どういうわけかキラキラしています。「うきたてば」も「まばゆ」もいいなぁ。てんぷらの具材に逃げられているのに「あぶらはじきてまばゆ」の淡々と見送る感じも好きです。

 それにしても「てふてふのてんぷら」と「蝶蝶はあぶらはじきて」と、なぜ「蝶蝶」だけ漢字なのだろうか。後半だけ現実の蝶蝶、という感じもします。飛んでいる蝶を見て、「あぶらはじきてまばゆ」と。

 もしかしたら、食べたかったわけじゃなくて、揚がった蝶蝶を見てみたかったのかなーって思いました。だからあぶらをはじいて飛んでいく姿を見て、これでよかったと思っているのかも。

 

 「あげた蝶々」なので「アゲハ蝶」なのかな、と思って調べてみると、「揚羽蝶」の「揚羽」は「翅を立てた(揚げた)蝶の姿」という意味であるという説と、芸者を「揚げる」の「揚げる」という説を見ました。この歌では何の蝶とは言っていませんが、「翅を揚げた」あるいは「美しい」蝶を揚げようとしたってことでしょうか。

 

 渡辺松男の歌もワールド系だなといつも思います。心象風景というか、言葉が上滑りしていないというか。私とは違った現実に確かに生きていて、その光景を切り取ってきているんだな、って感じさせる言葉遣いです。こういう雰囲気の歌を私が作ろうとすると、明らかに頭で作ったな(ここで生きてないな)って感じになってしまうので、ワールド系作者はうらやましいです。これはもはやテクニックというよりも生き様なんでしょうかね。

 

 

硝子戸を大水青が叩く夜 Alcian Blue の月を見ている (yuifall)

 

 

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