左右社 出版 山田航編著 「桜前線開架宣言 Born after 1970 現代短歌日本代表」 感想の注意書きです。
雪舟えま②
家族を詠む歌っていつもそんなに心惹かれないのですが、この人のやつはめっちゃ好き。
夫のことわたしが消えてしまってもほめつづけてね赤いラジオ
も好きだし、
ばあちゃんは屑籠にごみ放るのがうまかった(ばあちゃん期Ⅱ期まで)
は最高ですね。ばあちゃん期Ⅱ期か…。「後期高齢者」よりいいな。
でも両方とも、なんだか切ない感じもしますよね。ばあちゃんは多分今はもうばあちゃん期Ⅱ期を過ぎて、屑籠にごみを放るのはうまくなくなっているんだろうな(ボケてるかもうそんな元気がないかすでにこの世の人ではないか…)とか、夫は私のほかに褒めてくれる人がいないんだろうな、とか…。夫に関しては
うちで一番いいお茶飲んでおしっこして暖かくして面接ゆきな
ホットケーキ持たせて夫送りだすホットケーキは涙が拭ける
って歌もあるので、就活中で失敗してんのかな、とか想像してしまいます。とはいえ、無職だろうがそうでなかろうが、もういい大人になっちゃうと褒めてくれる人なんてそうそういませんよね。赤いラジオが褒めてくれたら嬉しかろう。
全体に、(決して楽な生き方という感じはしないのに)、人生に対するポジティブな気持ちが溢れていて、読んでいると嬉しくなります。こういう人が地球上に存在しているってことがありがたいような気になります。歌の中には「おちんちん」「おっぱい」「セックス」などのモチーフも混ざるのですが、不思議と全く性的な感じはしません。なんか宇宙と交歓でもしてるような、「目」とか「手」とかと同様の扱いというか。これで繋がろうね、みたいな。すごい、大いなる愛を感じますね。解説では「地母神」って書いてあったな…。母なる大地か…。
スキップで行くね、小雨は気にしない たまご蒸しパンリュックにつめて (yuifall)
きみのことまだ知らないと思うたび制御できない胸のときめき(yuifall)
桜前線開架宣言-雪舟えま 感想 - いろいろ感想を書いてみるブログ