「一首鑑賞」の注意書きです。
44.カメを飼うカメを歩かすカメを殺す早くひとつのこと終わらせよ
(高瀬一誌)
吉田隼人のセレクトする歌が好きで、多分もうしばらく続きます。
美術館とか水族館とか動物園とかに行くと、とにかく全部回って全部見ないことには落ち着かないし、回ってしまったら回ってしまったで「あー、全部見た」って感想しか残らなかったりします。まあ動物に関しては取り立てて好きってわけじゃないので仕方ないかなって自分では思っているのですが、美術館とかで、好きな絵の前にずーーっと立っているような鑑賞の仕方、すごく憧れます。
この歌は、「カメを殺す」という具体例については共感しづらいのですが、とにかく全てを早く知り尽くしたい、という強迫観念のようなものに共感をおぼえました。そして同時に悲しくもなった。この人も、好きな絵の前にずーーっといられないタイプなんじゃないか、って思ったので。
吉田隼人の解説には
確かに亀は見ているとじれったくなるのもわからなくはない。早くひとつのことを終わらせようという気持ちで生きていると、亀はモタモタして頼りないかも知れない。
とあります。「亀が好きなので亀を殺すと言われると悲しくなってしまう」ともあり、吉田隼人は、好きな絵の前にずーーっと立っていられるタイプなのかなって何となく思いました。
本当は好きなものだけをずっと見ている方がいいし、カメだってさっさと歩かせてさっさと殺して一生を見た気になるよりも、ずーーっと一緒に生きていた方がいいに決まってる。でも、もしかしたら次はもっと好きな絵があるかもしれない、全部見ないと分からない、って切羽詰まった気持ちになるタイプとしては、なんとも言えません。カメの一日を見て、あーもういいやって違う生き物を飼おうと思ったのかもしれない。
それにしても本だけは、好きな文章を行きつ戻りつしたり、何度も読み返したり、ぱらぱら読んだりじっくり読んだりして楽しんでます。これは単に字を読むのが好きなのもあるんですが、本は楽に読めるからっていうのも大きい気がする。。美術館とか水族館って、自分で動き回らないといけないし、自分以外の人もたくさんいるし、完全に自分のペースでいられる場所じゃないから。ずっと立ってると疲れるし(笑)。なので写真集とかで鑑賞する方が自分には合っているのかなって気がしないでもなく、この人もカメの動画でも見て満足したらいいのではないだろうか。まあそういう問題じゃないのは分かってますけど…。
それにしても、「早くひとつのこと終わらせよ」に対して「カメを飼うカメを歩かすカメを殺す」っていう具体例が上がってくるのが尋常じゃないなって思います。推理小説読んでて、ググってネタバレ調べてしまうときの気持ちを思い出しました。
ミュージアムショップばかりを覚えてるどこから来たのかどこへ行くのか (yuifall)