「一首鑑賞」の注意書きです。
42.エスカレーター、えすかと略しどこまでも えすか、あなたの夜をおもうよ
(初谷むい)
「えすか」、この呼び名だけでこの歌に引き込まれます。日本語ってやたらと3文字とか4文字とかに略したりするけど、「えすか」って聞いたことなかったなー。
解説には
こちらの「えすか」は頼りない少女のようで、えすかの行く末を思うと何か切ないものがある。えすかは夜、じっと動かずにいるのだろうか。ずっと動いているのにどこへも行けないエスカレーターのえすか。
とあり、少女であると読まれています。確かに、少女っぽいんですよねー。
なんでかなーって考えてて、最初は「あすか」?って思ったんですが、記憶の底を探ってみると、私にとっては「れすか」でした。あかほりさとるの『NG騎士ラムネ&40』(私が知ってるのはラノベ版のみですが…)に出てくるキャラです。多分ここを読んでいる人はほとんど誰も知らないのではと思うのですが、主人公ラムネ&ミルクのカップルよりもダ・サイダーとレスカのカップルが好きでした…。ちなみに「レスカ」はレモンスカッシュの略らしいですがさすがにその世代ではない。。
エスカレーターはエレベーターよりも夜がさみしい感じがするのはどうしてだろう。
初谷むいは色々なところで名前を見かけるし歌集タイトルもおしゃれで読んでみたいと思いながらも今までずるずると来てしまっていた歌人だったので、「えすか」がこの人の歌だと知ってなんだか嬉しくなりました。こういう感性ってどこから来るのかなあ。
夜のエスカレーターは止まっているので「えすか」はどこへも行けない子なのかもしれないのですが、私は吉田隼人の読み方とはちょっと違ってて、エスカレーターは昼間はエスカレーターとしてずっと同じところをぐるぐる回っているんだけど、夜になると「えすか」になってどこまでも行くことができるのかなって。そういう魔法をかけることができる歌だなと思いました。
ところで、解説には
平英之の評論に引かれていて心惹かれた一首だった。
上野駅から東北新幹線に乗るには長い長いエスカレーターに乗る必要がある。長いエスカレーターには強い風が吹いていて、帽子などを飛ばされないように注意との貼り紙が出ていたこともある。コロナ禍以来、故郷に帰ることがかなわなくなって、あるとき大江戸線の駅かどこかで長いエスカレーターに乗っただけで帰れていない故郷と家族を思って涙ぐんでしまったことがあった。
とあります。「上野駅から~」以降のエピソードは評論の引用ではなくて吉田隼人本人の気持ちなのかな?確か福島出身の歌人だったような気がします。
このエピソード読んですごく心が痛くなった。エスカレーターがふるさとに繋がっていることもあるんですね。確かに、主要駅ではいつもエスカレーターで移動しているような気がします。あなたは夜どうしているんだろうな、って、この歌のおかげではじめて考えました。
改札の短いエスカレーターを抜けて雪国、夜の底まで (yuifall)