山田航 「現代歌人ファイル」 感想の注意書きです。
高瀬一誌
スティックがきらいでチューブ入りの糊を好むわけを教えようか
よく手を使う天気予報の男から雪が降りはじめたり
1929年生まれの歌人だそうです。なんと…。戦前生まれでこんな歌を詠む人がいるなんて…。短歌って昔から意外に懐深かったのかもしれないと思いました。
『現代短歌最前線』で穂村弘が「こんなものは短歌ではない」と罵倒された経験を書いていましたが、こういう、先人たちがいろんなテイストの歌を詠んでいるのを知ると、それ以前にも色々あったやん?って気がしないでもないですね。
まあかつては九条武子も
みわたせば西も東も霞むなり君はかへらずまた春や来し
と詠んで与謝野晶子に「こんなものは歌ではない」と評されたらしいので、どんなものが歌でどんなものが歌ではないのか私にはさっぱり分かりません(笑)。
この人の解説には
高瀬は戦後短歌史のなかでも最も異彩を放つ歌人の一人である。まず五七五七七の定型に収まっている歌が少ない。いずれかの句が脱落している傾向が強い。しかし自由律という感じでもない。あくまで「欠落した定型」という印象だ。
とあります。最も異彩を放つ歌人の一人か…。しかし私のような素人レベルだとあまり知名度は高くなく(知りませんでした、すみません。。)、もったいないですね。
「顎をあげ大きく息を吸ってそのまま止めて」死に際に近づくらしい
どうもどうもしばらくしばらくとくり返すうち死んでしまいぬ
とか面白すぎますけどね。上のやつは多分レントゲン写真撮る時に言われるやつだよね。なんかオチが死亡みたいな歌が多くて、解説には
唐突で不条理に死ぬ展開がままみられるのも特徴である。しかしこれらの歌には「何もせずにただ時が経ち死んでいくことへの不安」が基礎にあるように感じられる。
とあるのですが、同じ展開を繰り返す不条理系ギャグ漫画とかショートショートみたいだなーと思って見てました。
他にも
眼鏡の男ばかりがあつまりてわれら何をなすべきか何をなしたる
じたばたする自転車をかつぎあげたりこれを行く末という
横断歩道(ゼブラゾーン)にチョークで人型を書きもう一人を追加したり
とかほんと好きだな (笑)。「眼鏡の男ばかりがあつまりて」って戦後~20世紀までの日本のイメージですね。横断歩道の歌は、事故現場ってことだろうか。横断歩道の歌は梅内美華子のやつも光森裕樹のやつも好きですがこれも好きです。
シャットダウンみたいに眠い本日の死体指数約76% (yuifall)