山田航 「現代歌人ファイル」 感想の注意書きです。
大田美和
木漏れ日に濡れたる君にくちづける今朝は世界ができて七日め
この歌かわいいですね。世界ができて七日目って安息日だっけか?6日目に人が生まれて、7日目にくちづけるのね。『現代短歌最前線』でも紹介しましたが、わりと主体的な恋愛の歌が多いです。解説には
統一して感じられるのが男性である「君」の無垢な少年性である。「びしょぬれ」「海の色のタオル」「木漏れ日に濡れたる」というイメージはいずれも若さ以前の幼さを感じさせる。「少年のように」というそのものずばりの直喩もある。
とあります。この「少年のような」君と向き合うとき、この人も「少女のような」わたしなんだろうか。それとも「愛してあげる」んだから、大人の女性なんだろうか?この人の歌のテーマは「フェミニズム」、「性愛」を詠んだものが多いので、やっぱり自分は大人の女性で、相手も大人の男性で、大人の男の人が「少年のように黙りこむ」からいとおしいのかなって思いました。
蹴られればなおさら弾む毬だから心はひとつあれば足りるわ
風花って知っていますか さよならも言わず別れた陸橋の上
これらの歌は、歌そのものも好きなのですが、解説に胸がときめきました。
「自立した女性」は必ずしも「強い女性」ではない。強がりをみせることもあるにしてもときには孤独や悲しみを表明するし、素直に愛を表現するさわやかな歌も多い。自分の足で立ち上がり必死に走り続ける姿は、読む側にも元気を与えてくれるのである。
と、山田航は書いています。フェミニズムを訴える「自立した女性」って、男性からはちょっと敬遠されるというか怖がられるイメージがあるのですが、これらのかわいらしい歌を「必ずしも「強い女性」ではない」とまっすぐ受け止める姿勢に、なんていうかときめきました(笑)。
一人の人間がいつも強かったりいつも弱かったりするはずがないですよね。社会の中で自立していても、恋愛では寄りかかりたいときもある。家族や友人に心をゆだねたいときもある。こんな、いつもかっこいい人(男性でも女性でも)がふっと見せるかわいらしさや弱さが愛おしかったりするのかなって思いました。
徒花のまま散らされて牡丹雪あれほどそっとくちづけたのに (yuifall)
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