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現代歌人ファイル その11-本多稜 感想

山田航 「現代歌人ファイル」 感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

本多稜

bokutachi.hatenadiary.jp

くれなゐを闇にしづむる雪嶺よ眼を灼く山の一切放下(ほうげ)

 

 おお!かっこいい!今までにないタイプですね!アウトドア派です。アウトドア詩人!萌えるな!登山やスキューバダイビングを趣味にされているとか。いいなー、ダイビングのライセンス取りたいなー。

 解説を読むとこの人は海外勤務の長い証券マンとのことで、

 

握手(シェイクハンド)しながら殴り合ふ心この野郎目が笑つてゐない

 

こんな歌もあります。この「目が笑っていない」って表現、東洋が由来なのかな。それとも西洋?同じような言い回しは欧米圏にもあるのでしょうか。

 コロナ禍よりも前に、日本人(を含む東洋人)は冬とかに何気なくマスクするけど、欧米ではマスクしているとヤバい感染症の人と認識されるからむしろしない方がいい、という話を聞いたことがあって。白人は色素薄いからサングラス装着率高いし、目ではなくて口元で感情を表現することが多いから、マスクは気持ち悪いって聞いたんです。実際、コロナ禍の中でもマスクに対する抵抗が強いのって東洋よりも西洋の印象があります。だから、この「目が笑っていない」っていう言い方、日本人としてそう感じたのか、西洋?にもそういう文化があるのか、どっちなんだろうって気になりました。

 まあ、(しつこいけど)gleeが好きなんですが、クイン(ディアナ・アグロン)とかブレイン(ダレン・クリス)の目つき見てると、目の演技すごいなって思うし、目で語るっていうのも実際あるのかなって気もしてます。なんていうか、目の色が(例えではなくて物理的に)、すごい綺麗だしさ…。

 

東洋人ひとりだけなる会議にてしやべらねば塑造とまちがはれさう

 

 この歌面白いですね。マイケル・ルイスの『ライアーズ・ポーカー ウォール街は巨大な幼稚園』という本が面白くて、80年代あたりのウォール街の実録本なんですけど、日本人はいつ見てもとにかく寝てるって書かれてて笑った。当時は日本がバブルで円が強かったから、みんな「あいつらはなんもしないし全く役には立たんけど預かりものだからほっとけ」みたいなスタンスで、英語もあんま話さないし寝てばっかりだし表情も動かないしで遠巻きにされている様子が面白かったです(笑)。今の証券マンはそんな姿勢じゃやっていけないだろうから、「しやべらねば」になるんだろうなー。

 

神はひとつと言ふなれど名の異なれば国境(ボーダー)といふぐじゆぐじゆの皮膚

 

 こういうの見ると切ないですね。一神教の宗教同士が対立するときの、正義と正義の対立の悲しさ。多分そこにあるのは「国境」以上のものなんだろうなと思います。

 

 アウトドアライフといい、海外ライフといい、普段接していないものをリアルに体験している人の短歌って面白いなぁ。若手歌人のだるい系短歌とか幻想系短歌とかナンセンス系短歌もかっこいいなって思う反面、こういう地に足のついた歌にもすごい憧れる。モテるんだろうな(笑)。

 

 

無呼吸が銀色の波突き分けるバサロキックで行ける限りに (yuifall)

青×銀の爪したクロールでいつかあなたを掴んでみたい (yuifall)