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現代歌人ファイル その10-大塚陽子 感想

山田航 「現代歌人ファイル」 感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

大塚陽子 

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人の夫奪ひし重さはげしさにあはれ漂泊の思ひはやまず

 

 先日、関川夏央の『現代短歌 そのこころみ』で、中城ふみ子が第1回短歌研究新人賞五十首詠を受賞した際の中城ふみ子中井英夫のエピソードを読んだばかりだったので、解説に

 

その名が歌壇に現れたのは1954年の第1回短歌研究新人賞五十首詠のときであり、中城ふみ子と激しく受賞を競ったという。(中略)中城ふみ子といえば情熱的な「恋多き歌人」として知られており、激烈な人生の果てに夭折した歌人である。大塚はふみ子と同じ北海道に暮らし、同じ歌誌に所属し、同時にデビューした。華々しく燃え尽きるような人生を送ったふみ子を太陽とするならば、その陰に隠れていた大塚はまるで月であった。

 

とあるのを読んでちょっと驚きました。あの『乳房喪失』の裏にライバルの存在があったのですね。「月」に例えられてはいるものの、冒頭に挙げた歌のように、師匠との略奪婚というまるで与謝野晶子みたいなエピソードもあるようです。キャラ的には与謝野晶子よりも山川登美子な感じを受けますが…。

 

つば広き帽子に初夏の旅に出む寡婦控除にて税金もどる

 

終生を産まず育てずただ恋ひてただの女でありて悔なし

 

 「人の夫奪ひし」もそうですけど、「産まず育てず」って、すごいナマな歌だな…。「一生を恋ひて焦がれて生きましたから」って歌もありますが、こういうの見ると穂村弘『ぼくの短歌ノート』の「ハイテンションな歌」思い出しちゃうな…。そのテンション、ナマで出してくるんだ…、みたいな…。

 略奪愛だからといって一生恋愛のことばっかり考えていたとも思えないのですが、子供も産まず育てずで夫は歌の師匠で、生活も短歌も全て夫と繋がっていたら、そうなるのでしょうか。まあ与謝野晶子も12人子供産んでも海を越えて夫を追いかけたし、確かにずっと夫に恋焦がれる人生っていうのもあるのかなーとか思う反面、個人的には、「寡婦控除」くらいの、自分の人生を客観視した歌の方が理解しやすいなぁ。

 しかしこのブラック感すごいですね。「人の夫奪った」結果として「寡婦控除」受け取っているわけですからね…。その自覚があってこの歌っていうところが好きなんですよね。「ただ恋ひて」「一生を恋ひて」の陶酔感よりも、ちょっと冷めた感じの方が個人的には好みです。

 

 というか、多分、時代的なものもあるんだと思うけど、女は恋に生きて死んでもいい、っていう陶酔感が苦手なのですが、要は結局男の下にいないと生活ができなかったからそうならざるを得なかったんじゃないの、っていう感もあり。。純粋に「恋に生きて死ぬ」ことなんてできるの?アイドル後追い自殺みたいな?夜桜お七的な?だったら男は恋で死なないのだろうか?

 そういえば阪田寛夫の詩集『わたしの動物園』の「葉月」という詩に

 

そやけど

むかしから

女に二時間待たされたからて

死んだ男がおるやろか

それを思うとはずかしい

 

って一節があって、かわいくて印象に残ってました。携帯とかなかった時代はその「二時間」で一生が変わっちゃった人もいるかもしれないよな。

 こういうのって、フェミニズム!とか目くじら立てるより、男と女のどっちがロマンチストか?男女の友情は成り立つか?寂しさと切なさの違いは何か?みたいな青臭いテーマとしてもてあそんでおいた方がいいのかもしれないなって思いました(笑)。

 

 

きざむたび夏匂ひ立つ汝すでに在らざるをふと忘れて茗荷 (yuifall)