山田航 「現代歌人ファイル」 感想の注意書きです。
都築直子
ベランダに立つてゐる羊歯 夜ならば新月ならばわれならば飛ぶ
この歌ぱっと目に留まりました。「われならば飛ぶ」かぁ。めっちゃかっこいいな。夜ならば新月ならばわれならば、って畳みかけてくる感じ。
この人はスカイダイビングのインストラクターなんだそうです。それでも、新月の夜に飛ぶっていう経験はあまりしないんじゃないかな。私がお前だったら飛ぶのにお前はここにいるんだ、っていう目で羊歯を見ているのが面白いなと思いました。
ひきしぼりたわめたるもの一瞬にときはなちたり光のなかに
この歌も、落ちる前のその一瞬の緊張と解き放たれる開放が鮮やかに描かれていてとても好きです。「光のなかに」落ちていくんだね。
私自身はスカイダイビングの経験はないんですよね…。やってみたいなぁ。せいぜいパラグライダー乗ったくらいだな。やってみたいとか言いつつ、いざとなったらマジでビビりそうです。
日照雨(そばへ)ふる芋の葉群にやはらかに虹のくるぶし降りたてりけり
みづからのG(ジー)にあるいは耐へかねて大いなる日はビルにめりこむ
球体となりて pop の po の音はわがくちびるのへりを飛び立つ
全体的に、この人にしか詠めない歌!って感じですごく憧れました。解説には
春日井建門下の歌人であるが、師の持つ耽美性や西洋的美学はそれほど受け継いでいない。(中略)師の美学に過度に染まることなく、方法論をしっかりと受け継いだタイプなのだろう。
と書いてあります。確かに私がイメージする春日井建の耽美的な何かとは違うけど、自分ワールドがしっかりしていて、そういうところが
まるっきり師匠のコピーとなってしまうより、都築のように自らの方法論をしっかりと持てる方が、ある意味ではより師の意志を継承しているといえそうだ。
っていう意味なのかなーと思いました。
都築直子という歌人はこのコーナーで初めて知ったのですが、歌もいいなって思ったし、後日「砂子屋書房」の「一首鑑賞」のコーナーでコラムを書いているのを見て、短歌の解釈や文章そのものが全体的に好みだったのでますます好きになりました。特にめっちゃ面白かったのが前田夕暮の
十四インチ望遠鏡のレンズいつぱいに這入つて来た巨大な月! (前田夕暮)
を紹介している記事なのですが、面白すぎたので後日感想を書こうと思います(というか、もう書いているのですが後日頃合いを見て載せます)。
追記:アップしたのでリンク貼ります。
根無し草として高層階に住み地上の音と香に雨を知る (yuifall)