「一首鑑賞」の注意書きです。
124.するキスとしてくれるキスどちらかは選んでほしい しないのは無し
(天国ななお)
砂子屋書房「一首鑑賞」で都築直子が取り上げていました。
まず驚いたのは、これは「短歌男子」という十人の男性歌人による作品集から引用された歌だということです。歌だけ読んで男性作者とは思いませんでした。他に紹介されている歌では、
呼び捨てにできない人を好きになる「さん」付けのままキスをしていて
も中性的です。
踏切を待ってるあいだコマ切れになっていたのは泣き顔らしい
は、相手が女性なのかな、という感じがあり、男性作者なのかな、と想定させられます。
鑑賞文には
<わたし>はどの位の年代なのだろう。6月11日の本欄で紹介した米口實のように九十代の男性なのか、あるいは十代の男性か。それによって、読みも変わってくる。「短歌男子」の誌面は、各人の作品冒頭に、スーツ姿の作者近影を数枚配したページがあり、それを見れば天国はロマンスグレーの紳士だ。おそらく、歌の<わたし>も限りなくロマンスグレーに近いだろう。
こうあります。確かに、若者だとかわいらしい感じですが、中年を過ぎると不倫の匂いが漂う気もしますね。老年になってくると逆に、恋愛に敢えて性的なモチーフを持ち込む、という策略を感じます。
ところでこの「短歌男子」、ググってみると同人誌なんですね。もう買えなそうで残念…。中島裕介とか入ってるし気になります。しかしながら、別にスーツ姿の男性歌人の姿にはそれほど興味がなく、逆に女性歌人の写真集に短歌がついていたら面白いのだろうか、とか考えてしまって微妙な気持ちになりました。「男子」を売りにするんだからそれもありなんだろうか。まあ別に性的モチーフを売っているわけじゃないわけですし。鑑賞文に
さて、「短歌男子」は瀟洒なつくりの一冊である。「短歌男子」というネーミングもさることながら、「週刊文春」巻頭カラーグラビア「美女図鑑」の向こうを張るがごとき、短歌美男子モノクログラビアがいい。
とあり、「美女」も「男子」も結局企画は男性なんじゃ?とか考えてしまった。
個人的には、作品と作者の外見を結び付けることにあまり興味がないのでグラビアである利点がよく分からないし、増して美男子かどうかは全然どうでもいいと思うのですが、こういう売り方をするのも自由だとも思うし、どう受け止めていいかよく分かりませんでした。実物を見たら「いい!」って思うんだろうか。
コーヒーの味の違いが分からない上手なだけのキスをするひと (yuifall)