北溟社 「現代短歌最前線 上・下」 感想の注意書きです。
大田美和
びしょぬれの君がくるまる海の色のタオルの上から愛してあげる
チェロを抱くように抱かせてなるものかこの風琴はおのずから鳴る
この人の歌からは、全体的に、主体的というか、男性と対等でいたい、という意識を強く感じます。男女平等というのがどこへ向かうのか私にはまだ分かりませんが、多分フェミニズムの過渡期の一時期を戦ってきた人なのかなと。このくらいの年代の「働く女性」「働く母」って本当に強くて、というか多分強くないと働いてこられなかったんだと思います。今の時代のロールモデルとしてはちょっと強烈すぎるのですが(だって、こうなれって言われても無理だもん…。こういう女しか働いちゃいけませんって言われたら、すんませんって仕事辞めるしかなかろう)、こういう人たちが時代を切り開いてきたんだなというエネルギッシュさがあります。
セックスの歌にしても、「あなたに抱かれて私は今を咲き誇ってるわ」系統でも「私は男に鳴らされる楽器です」系統でも「私はからっぽで無力です」系統でもなく、「おのずから鳴る風琴」なんだよね。「愛してあげる」だし。
今日生まれたばかりのように代わる代わるシャワーの水をかけて向き合う
これはかわいくて好き♡フェミニズム色が強くなってくると今度はどうしても「強い女」の方向に行きがちなのですが、この歌の雰囲気はやさしくて好きです。これはセックスした後の2人がシャワーをかけあいながらはしゃいでる様子を思い浮かべたのですけど、全然視点を変えると、不慣れな両親がベビーバスを挟んで向き合いながら赤ちゃんに代わる代わるシャワーをかけているのかもしれない。それも面白いなーって思いました。
リグータのように鳴らしてあげるから蕩けるAで応えてほしい (yuifall)
現代短歌最前線-大田美和 感想2 - いろいろ感想を書いてみるブログ
現代短歌最前線-大田美和 感想3 - いろいろ感想を書いてみるブログ