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現代短歌最前線-前田康子 感想3

北溟社 「現代短歌最前線 上・下」 感想の注意書きです。

 

yuifall.hatenablog.com

前田康子③

 

見つめ合い同じ布団に子といれば二人のような二匹のような

 

子と我は「妻子」とひとつに括られて君の背中を見送るばかり

 

泣く声と混じりて電話が鳴るような感じが常にする日の暮れは

 

 この辺は子育ての歌です。この「泣く声と混じりて電話が鳴るような感じが常にする」って感覚、分かるな。気にしてると、いつも聞こえてる感じがするんだよね…。実際には鳴っていない音でもさ…。

 

 この人は歌人なので「専業主婦」って言い方は正しくないですけど、「妻子」として「君の背中を見送る」っていうのは家にいる人って感じもします。動物の親子みたいに「二匹」になって眠ってさ。

 こういう歌を読んで、どう受け止めたらいいんだろう、って考えます。このアンソロジーの一連の流れからは、それを「いい」とか「嫌だ」とか思っている感じはあまりしなくて、淡々と家族でいるっていう感じを受けるんですよね。末尾のエッセイでは、旦那さんは一人暮らしの間全然自炊をしていなかったようなこと、一人暮らしが長かったために結婚後の「手作りの食事」に対する期待が高まっていたようなこと、一方で自分自身は結婚で実家から出て家事を担うことになって最初は途方に暮れたこと、などが書かれていて、だけど、付き合っている間、別れようって思ったこともあったけどどうしてか彼の部屋で目刺を焼いて食べさせてあげたくなった、というようなことも書かれています。

 多分結婚したのは30年近く前のことだと思うので、今の感覚でどうこう言うのはおかしいんだけど、外に出る男と家を守る女、っていう役割が垣間見える感じで、だけどそれに対するこの人の気持ちがあんまり分からない。単純にそういうものだったのかな、って思う一方で、同じアンソロジーに大田美和が載っていること考えると、時代で片付けちゃうのもなーって気もして…。

 だけど、じゃあ今2021年、自分の立場でこの歌を読んでも、やっぱり「いい」とも「嫌だ」とも感じないんですよね。うーん、難しいな。「感じない」って言うと言葉が悪いし、ちょっと感じ悪いように聞こえちゃうけど、そうじゃなくて、専業主婦だろうがキャリアウーマンだろうが自営で休みが取れなかろうがどういう立場だろうが、子供を産んだ直後ってやっぱり自分を動物として強く意識せざるを得ないというか、「二匹」だったり、「妻子」になる瞬間ってあるだろうな、って事実として淡々と感じるんですよね(もちろん、シングルマザーの場合は「妻子」ではないでしょうが…。「母子」かな)。好き嫌いとか、主義主張を超えたところで。これらの歌の、そういう普遍的な詠みかたが好きなのかもしれません。

 

 

相対的に位置と速度が変わるからいつも歪んだサイレンの音 (yuifall)